bitFlyer、 創業者 加納裕三氏の4年ぶり CEO 復帰から3年 ─ 株式併合と AI 戦略室、 IPO 準備の足音

国内最大手の暗号資産取引所 bitFlyer。 創業者 加納裕三氏の4年ぶり CEO 復帰から3年、 2025年3月の株式併合と AI 戦略室新設で動き出した IPO 準備の現在地を、 決算公告8期と登記4通から整理する。

Compalyze編集部分析対象株式会社bitFlyer

この記事のポイント

  • 国内ビットコイン取引量10年連続 No.1 を掲げる暗号資産取引所大手 bitFlyer は、 bitFlyer Holdings を頂点とする国内4社+海外子会社グループ。 創業者 加納裕三氏(元ゴールドマン・サックス)が Holdings・事業会社Blockchain子会社 の代表を兼任し、 Custodiem では取締役を務める
  • 2018年6月の金融庁業務改善命令を受けて持株会社化(bitFlyer Holdings 分社)し、 2019年1月に加納氏は代表を退任、 同年5月に新設の bitFlyer Blockchain 代表に就任。 2022年には投資ファンド ACA グループによる買収観測(評価額最大450億円)に対して創業者として公に反対表明、 騒動を経て2023年3月30日に Holdings/事業会社 CEO に復帰
  • 2024年7月、 旧 FTX Japan の株式100%を取得し2024年8月に 株式会社Custodiem へ商号変更。 暗号資産交換業(関東財務局長 第00002号)+第一種金融商品取引業(関東財務局長(金商)第3297号)のライセンスを束ね、 クリプトカストディ/将来の暗号資産現物 ETF 関連サービスを視野
  • 2025年3月28日、 事業会社の株式会社bitFlyer は 発行済株式 9,407.5万株を1万株へ集約する株式併合(約9,408倍の集約)を実施。 直近 FY2025/12 は 営業収益135.7億・純利益+24.6億・総資産1兆800億円(顧客預かり資産が大半)。 株式併合・IPO 準備室稼働・EY新日本監査法人体制・AI戦略室新設(2026年4月)と上場準備の外形要件が整いつつある

本記事の前提
株式会社bitFlyer の履歴事項全部証明書3通(active + 閉鎖事項証明書2通)、 bitFlyer HoldingsbitFlyer BlockchainCustodiem(旧 FTX Japan)の登記、 決算公告8期、 PR TIMES 約180件、 J-PlatPat、 公式リリース・公開報道(M&A情報含む)を相互参照して構成した分析記事です。 財務数値は決算公告(単体・無連結)ベース。


0. bitFlyer はどんな会社か(30秒)

bitFlyer は2014年1月、 ゴールドマン・サックス出身の加納裕三氏と小宮山峰史氏が共同創業した、 国内ビットコイン取引量10年連続 No.1(同社発表)の暗号資産取引所大手です。

現在のグループは国内4社+海外子会社で構成されます:

  • 株式会社bitFlyer Holdings:持株会社(2018年10月、 ガバナンス強化のため事業会社から分社)
  • 株式会社bitFlyer:暗号資産取引所事業の本体(暗号資産交換業+金融商品取引業)
  • 株式会社bitFlyer Blockchain:ブロックチェーン技術子会社(金融機関・自治体向け)
  • 株式会社Custodiem:2024年に bitFlyer Holdings が買収した旧 FTX Japan を商号変更した完全子会社(暗号資産交換業+第一種金融商品取引業、 カストディ/ETF 関連視野)

4社とも本店は東京都港区赤坂9-7-1。 創業者 加納氏は Holdings/事業会社/Blockchain の3社の代表取締役を兼任し、 Custodiem では取締役を務めています。 海外には bitFlyer USA・bitFlyer Europe S.A. を持ち、 米国・EU でも取引所を運営しています(日本登記対象外のため本記事では事業上の存在の言及のみ)。

直近の大きな動きは4つ。 (1) 2025年3月の株式併合(約9,408倍の集約)、 (2) 2026年4月の bitFlyer Holdings AI 戦略室新設、 (3) IPO 準備室稼働+EY新日本監査法人体制、 (4) 2024年の FTX Japan 買収と Custodiem 化。 いずれも、 創業者復帰後3年の節目でグループの枠組みが大きく動いていることを示しています。


1. 2025年3月の株式併合 ─ IPO 準備の足音

発行済株式の構成変化

事業会社 株式会社bitFlyer の発行済株式の推移は、 創業以降3回の節目を経ています。

日付発行済株式数できごと
2014-01-091万株設立時
2018-10-019,407.5万株株式分割で約100倍(持株会社化と同時期)
2025-03-281万株株式併合で約9,408倍に集約

2025年3月の株式併合は、 9,407.5万株を1万株へ一気に集約する大型のもの。 株式併合は会社法上の手続きとして、 (1) 発行株式数を整えて1株あたりの価値を高める、 (2) 単元株式数を調整する、 (3) 資本政策のクリーンアップとして実施される動きです。 上場が近づく未公開会社が IPO 前に行う単元株調整としても珍しくありません。

実際、 bitFlyer Holdings 公式の採用ページには「IPO 準備室」 の求人が掲載されており、 「上場準備プロジェクトを推進する人材」 を求めています。 株式併合・IPO 準備室稼働・後述する EY 新日本監査法人体制 を組み合わせると、 同社が IPO へ向けて外形を整えていることが読み取れます。 ただし上場時期や市場区分は公表されていないため、 「いつ」「どこに」上場するかは現時点では公開情報からは確定できません。


2. 2022年の経営権争い ─ ACA グループによる買収観測

加納氏の復帰を理解するうえで欠かせないのが、 2022年に表面化した投資ファンド ACA グループによる買収観測です。

2022年4月、 bitFlyer Holdings について、 シンガポール/日本拠点の投資ファンド ACA グループが既存株主連合から発行済株式の過半を取得する方向で調整していると、 日本経済新聞・東洋経済・CoinDesk Japan 等が一斉に報じました。 当初の評価額は最大450億円程度と報じられています。 報道によれば、 共同創業者の小宮山峰史氏や積水ハウスを含む既存株主連合が ACA への売却で大筋合意していたとされ、 一方で当時およそ4割を保有していた創業者の加納氏はこの動きに反対する姿勢を示しました。

加納氏は同月、 SNS 上で「ホワイトナイトを募集する」 「このディールはまだクローズしていない」 と公に対抗姿勢を表明し、 評価額450億円とされた水準を「安すぎる」 と一蹴。 自身の同意なしには新規株式公開(IPO)や重要資産の売却ができない旨が投資契約書に明記されていると主張したことも、 報道で取り上げられました。 上場会社の TOB のような典型的な敵対的買収とは構造が異なりますが、 報道上は「筆頭株主である創業者の同意を得ないまま過半取得を目指した買収計画」 として、 敵対的買収に近い構図で扱われた事件です。

最終的に、 ACA グループによる買収は2022年秋までに実現しませんでした。 報道では、 加納氏の反対と一部株主の売却撤回により過半取得の目途が立たなくなったこと、 入札の過程で取得想定額が900億円弱まで膨らんだことなどが背景として挙げられています。

この一連の出来事は、 単なる M&A 未遂ではなく、 創業者・既存株主・外部資本のあいだで bitFlyer の将来を誰が主導するのかが問われた経営権争いでした。 翌2023年3月の加納氏の代表復帰は、 この騒動の延長線上にある「創業者主導への回帰」 として整理できる出来事です。


3. 加納裕三氏の4年ぶり CEO 復帰

経営者交代タイムライン

bitFlyer の経営史で2023年の山場は、 創業者 加納裕三氏の約4年ぶりの代表復帰(2023年3月30日)です。 役員履歴を時系列で並べると次のとおり。

期間代表出来事
2014-01-09 〜 2019-01加納裕三氏共同創業者として事業会社の代表取締役 CEO
2018-06金融庁から業務改善命令(コインチェック大規模流出事件後の一斉立入検査の一環)
2018-10bitFlyer Holdings を分社設立(持株会社化、 業務執行と監督機能の分離)
2019-01加納氏退任業務改善命令の経営責任として代表取締役を退任(CoinPost 等の報道による)
2019-05加納氏が Blockchain 代表に新設子会社 bitFlyer Blockchain の代表として技術ドメインを担当
2019〜2022年平子惠生氏 → 三根公博氏 → 林邦良氏取引所事業の代表が交代(再構築期)
2022-04ACA グループによる買収観測(§2 で詳述)
2022-03-30 〜 2023-03-30関正明氏取引所事業の代表として中継ぎ
2023-03-30 〜 現在加納裕三氏(復帰)Holdings/事業会社の代表 CEO に復帰、 3社代表を兼任、 Custodiem では取締役

2018年の業務改善命令は、 経営管理態勢、 マネー・ローンダリング/テロ資金供与対策、 利用者財産の分別管理、 システムリスク管理など、 取引所運営の根幹に関わる項目が改善対象となりました。 加納氏はこの対応として2019年1月に代表を退き、 同年5月に新設の bitFlyer Blockchain 代表として技術ドメインに軸足を移しています。 「グループから完全に離れた」 のではなく、 「取引所事業の代表からは退き、 技術子会社の代表として残った」 という形です。

その後の再構築期に取引所事業の代表が複数回交代し、 2022年の ACA 買収騒動を経て、 2023年3月に Holdings/事業会社の代表 CEO へ復帰しました。 復帰後3年で 株式併合・AI 戦略室・IPO 準備室・FTX Japan 買収 という大きな動きが続いており、 単なる象徴的な復帰ではなく、 経営の節目を引き直す実務的な復帰だったとみるのが整理しやすい構図です。

共同創業者の小宮山峰史氏は 2014年1月の設立時から bitFlyer の取締役として登記されており、 創業期の経営チームの一員として同社の立ち上げに関与した記録が登記に残っています。 2022年の ACA 騒動では、 報道上は売却側株主連合の一人として名前が挙がりました。 創業者2人のうち、 加納氏が反対側、 小宮山氏が売却側に分かれた構図は、 bitFlyer のガバナンス史の象徴的な分岐点として記録に値します。


4. 4社グループ構造と海外展開

bitFlyer グループ構造

bitFlyer のグループは、 2018年10月の持株会社化を起点に、 2024年の Custodiem 加入を経て、 現在は国内4社+海外子会社の構成になっています。 当時のリリースによれば、 bitFlyer Holdings は「業務執行機能(事業会社)と監督機能(持株会社)を分離してコンプライアンス体制を強化」する目的で設立されています。 金融庁の業務改善命令への対応として、 取引所事業を担う 株式会社bitFlyer と、 グループ全体の監督・統括を担う Holdings に役割を分けたのが起点です。

ブロックチェーン技術を扱う 株式会社bitFlyer Blockchain は、 取引所事業とは別軸で、 金融機関や自治体向けに blockchain 基盤を提供しています。

2024年7月、 bitFlyer Holdings は旧 FTX Japan 株式会社の発行済株式100%を取得し完全子会社化、 同年8月に 株式会社Custodiem へ商号変更しました。 Custodiem は暗号資産交換業(関東財務局長 第00002号)と第一種金融商品取引業(関東財務局長(金商)第3297号)のライセンスを保有しており、 クリプトカストディと将来の暗号資産現物 ETF 関連サービスを視野に入れています(詳細は §8 で後述)。

加納氏は Holdings・事業会社・Blockchain の3社で代表取締役を兼任し、 Custodiem では取締役を務めています。 Custodiem の代表取締役は名古路博史氏で、 グループ内で「取引所」「ブロックチェーン技術」「カストディ/機関投資家向けインフラ」 の役割分担が代表体制にも現れています。

加えて、 海外には bitFlyer USA(米国・サンフランシスコ拠点で米国の暗号資産取引所を運営)と bitFlyer Europe S.A.(ルクセンブルク籍、 EU 全域で取引所を運営)の子会社があります。 これらは日本の登記対象外のため本記事では事業上の存在の言及に留めますが、 同社が早い段階から海外展開していた事実は、 日本の暗号資産取引所としては特異な強みです。


5. 決算(単体)─ 暗号資産市場に連動するボラタイル収益

営業収益と当期純損益(単体)

事業会社 株式会社bitFlyer の決算公告(単体)を8期分並べると、 営業収益・純利益の振れ幅の大きさが見えます。 同社の事業報告では収益を「営業収益」 と表現しており、 本記事もそれに合わせます(一般的な「売上高」 に相当)。

営業収益当期純損益純資産総資産
2018/12140.8億円+21.5億円159.0億円1,012.4億円
2019/1253.4億円▲7.5億円151.5億円1,215.2億円
2020/1275.5億円+4.3億円149.7億円3,100.4億円
2021/12275.0億円+125.0億円272.2億円6,391.1億円
2022/1273.8億円▲21.9億円250.3億円2,965.4億円
2023/1264.1億円+4.4億円198.2億円5,898.1億円
2024/12149.0億円+74.7億円272.9億円12,138.3億円
2025/12135.7億円+24.6億円297.5億円10,799.8億円

ハイライトは2点:

  • 2021年12月期の +125億円:ビットコイン・イーサリアム等が史上最高値圏に達した暗号資産バブルの恩恵で、 営業収益275億・純利益125億の過去最高水準
  • 2022年12月期の ▲21.9億円:金融引き締めによるリスク資産の調整、 Terra/Luna ショック、 11月の米 FTX 破綻が重なり、 暗号資産市場全体が急速に冷え込んだ年。 営業収益は73.8億まで落ち込み、 単年で赤字に転落

その後、 2023〜2025年は営業収益64億→149億→135億、 純利益+4.4億→+74.7億→+24.6億 と、 復活・拡大局面に入っています。 直近4期(2022〜2025)の純利益累計は約 +82億円で、 ボラティリティはあるものの累積では稼げる構造を維持していると整理できます。

総資産1兆円超 ─ 顧客から預かった暗号資産

総資産の推移

総資産は 2018年の 1,012億円から 2024年に 1兆2,138億円 へと10倍超に拡大し、 2025年は1兆800億円。 暗号資産取引所の決算公告で総資産が大きく見えるのは、 顧客から預かった暗号資産と円資金がそのまま資産側に乗り、 同額が「預かり負債」として負債側に計上される 構造のため。 同社の純資産は297億円なので、 純資産÷総資産(自己資本比率)は2.75%とごく薄く、 これは取引所として顧客資産が会社 B/S の大半を占めることの帰結です。 暗号資産交換業者では、 顧客から預かった暗号資産・円資金に関連する資産と負債が B/S に大きく反映されるため、 総資産だけで事業会社としての実力を測ると誤解しやすく、 収益力は営業収益・営業利益・純利益、 顧客預かり資産、 取引量といった指標を合わせて見る必要があります。


6. 経営体制と上場準備の外形シグナル

bitFlyer の経営体制を機関設計の観点で整理すると、 上場準備の外形要件がほぼ揃っていることが見て取れます。

  • 会計監査人:EY新日本有限責任監査法人(IPO銘柄向けに多く採用される大手監査法人)
  • 監査等委員会設置会社:取締役(監査等委員)3名(齋藤氏・板倉氏・落合氏)
  • IPO 準備室:bitFlyer Holdings 公式の採用ページで「上場準備プロジェクトを推進する人材」を募集
  • 2026年4月:bitFlyer Holdings AI 戦略室を新設(AI × Blockchain で AI エージェント時代の金融インフラ構築へ、 とリリース)
  • 2025年3月の株式併合(§1 で詳述)

これらを組み合わせると、 同社が IPO に向けた外形要件を着実に整えている局面にあることが読み取れます。 ただし、 株式併合だけで IPO を断定することはできず、 上場時期・市場区分・上場形態(Holdings として上場か事業会社単体か)も公表されていません。 IPO 関連人材の募集、 監査法人・機関設計、 IR 担当募集と組み合わせると、 上場準備を進めている可能性は相応に高いものの、 公開情報からは「いつ」「どこに」上場するかは確定できません。 2018年の業務改善命令と持株会社化のあとに、 加納氏が復帰して資本政策と AI 戦略を一段ずつ進めている、 という流れの帰結としての IPO 観測、 と整理するのが現時点で最も自然な読みです。


7. プロダクトと知財 ─ 取引所+ブロックチェーン技術

PR月次推移

PR TIMES から取れる約180件のリリースを月次で並べると、 同社の発信頻度は 暗号資産市場の局面と相関 していることが分かります。 ピークは:

  • 2014〜2017年:取引所立ち上げ期で月3-5件
  • 2018年以降:業務改善命令の影響で減少
  • 2024年2月:相場上昇局面で 単月13件 という突出した発信
  • 2025年下期:「ETH/XRP レバレッジ取引」「ペペ(PEPE)取扱開始」「スカイ(SKY)取扱開始」 など新通貨追加と新サービスの発信

直近2025-2026年の主なプロダクト動向は:

  • bitFlyer クレカ:使うとビットコインが貯まるクレジットカード(2025-10 にタッチ決済機能追加・料金体系改定)
  • アセットロックサービス(2025-11):暗号資産の期末時価評価課税を回避できる長期保有サービス
  • 定期貸しコインサービス:ビットコインを貸して年利率最大2.20%(2026-05 第4回受付)
  • 新規取扱通貨:ペペ(PEPE)、 スカイ(SKY)、 ETH/XRP レバレッジ取引
  • CM起用:後藤真希氏出演の新 TV CM「暗号資産知らなかった」 篇(2025-10 全国放映開始)

知財ポートフォリオ

知財は 商標15件・特許11件・意匠9件 と、 取引所サービスとブロックチェーン技術の両面を押さえる構成。 特許10件(登録)がブロックチェーン技術関連で、 bitFlyer Blockchain の技術蓄積とも連動する形になっています。


8. FTX Japan 買収と Custodiem ─ カストディ/ETF 関連事業への布石

bitFlyer グループの直近の大きなグループ再編は、 2024年の 旧 FTX Japan 買収と 商号変更による Custodiem 化です。 IPO 準備や AI 戦略室と並ぶ、 グループ再編の核となる出来事で、 上場時のストーリーを「国内取引所の上場」 から「取引所+カストディ+将来の ETF インフラを束ねるグループ」 へと広げる材料になっています。

時系列は次のとおり:

日付出来事
2024-06-19bitFlyer Holdings が FTX Japan Holdings 等と株式譲渡契約を締結(株式取得合意)
2024-07-16米国デラウェア州破産裁判所による承認・株式取得完了。 旧 FTX Japan が bitFlyer Holdings の完全子会社に
2024-08-28旧 FTX Japan 株式会社が 株式会社Custodiem へ商号変更(公式リリース)

株式会社Custodiem は 2014年11月25日設立、 本店は東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー。 関東財務局長から 暗号資産交換業(第00002号)第一種金融商品取引業(関東財務局長(金商)第3297号) の登録を保有しています。 国内で第一種金商業と暗号資産交換業の双方を持つ事業者は限られており、 この2つのライセンスを束ねていることが Custodiem の戦略的価値です。

代表取締役は名古路博史氏。 加納氏は Custodiem では取締役として登記されており、 グループ全体の意思決定との連携を維持しつつ、 取引所事業(株式会社bitFlyer)とは別の代表体制で運営されています。

公式リリースが掲げる Custodiem の方針は3点:

  • クリプトカストディ(暗号資産預託) をコア事業として展開
  • 国内の法制度が整備された場合、 暗号資産現物 ETF 関連サービス を視野
  • 暗号資産交換業・第一種金商業のライセンスを維持

この再編で、 bitFlyer グループは「取引所+ブロックチェーン技術+カストディ/機関投資家向けインフラ」 という3層構造に進化しました。 同社の IPO 準備の動きと組み合わせると、 上場時のストーリーは単なる「国内最大手の取引所」 ではなく、 「取引所・カストディ・将来の ETF インフラを束ねるグループ」 として語られる可能性が出てきます。


9. 読みどころ ─ IPO 時期はどう読むか

bitFlyer の現在地を一言で整理すると、 「創業者復帰後3年、 グループ再編と IPO へ向けた外形要件が一段ずつ揃ってきた局面」 です。

決定的な「上場」のリリースはまだですが、 公開情報から読み取れる要素を並べると:

  • 株式併合(2025-03、 約9,408倍の集約)
  • EY新日本監査法人+監査等委員会設置会社
  • IPO 準備室稼働、 上場準備人材・IR 担当の募集
  • AI 戦略室新設(2026-04)
  • FTX Japan 買収・Custodiem 化によるカストディ/ETF 関連事業の取り込み(2024)
  • 直近4期で累計純利益約 +82億円、 純資産297億円まで回復
  • 国内ビットコイン取引量10年連続 No.1 という競争上の地位
  • 暗号資産取引業界全体で IPO 観測が増加(コインチェックが米 Nasdaq 上場、 ビットバンクも IPO 計画)

これらが揃っている以上、 IPO は同社の出口戦略として有力な選択肢の一つとみるのが妥当です。 ただし、 (a) 上場市場(東証グロース/プライム/米国/その他)、 (b) 上場法人(Holdings か 事業会社か)、 (c) 時期 は公開情報からは確定できません。 主要株主の現時点の正確な持分比率も公開情報からは確認できず、 過去には 2022年の ACA グループによる買収観測(§2)にあったように、 既存株主間の売却観測や、 創業者・既存株主・外部資本のあいだでの主導権争いが起こり得る状態です。 IPO 時の資本政策はそれ自体が大きな論点になります。

経営史としては 「創業者復帰3年でようやくグループ再編と IPO の構造が見えてきた」 という時間軸そのものが特徴的です。 加納氏は2018年の業務改善命令への対応として2019年1月に CEO を退任し、 4年の再構築期と2022年の経営権争いを経て復帰、 さらに3年かけて Custodiem 取り込みと AI 戦略・IPO 準備を進めています。 上場がいつ、 どの形で実現するかにかかわらず、 同社が示している 「時間をかけてグループの枠組みを引き直す」 という運営の重さは、 暗号資産取引所として今後の説明責任を果たすうえでも記録すべき軌跡です。


10. 計算方法・データの限界(Methodology)

  • 財務数値はすべて 株式会社bitFlyer(事業会社)の決算公告ベース(単体・無連結)。 海外子会社(bitFlyer USA・bitFlyer Europe S.A.)や Custodiem の数値、 bitFlyer Holdings の連結数値は公開されていないため、 本記事の数字はあくまで国内取引所事業単体の値である点に注意。 同社の事業報告では収益を「営業収益」 と表現しており、 本記事もそれに合わせて「営業収益」 を用いる(一般的な「売上高」 に相当)
  • 加納氏の代表退任時期(2019年1月)は CoinPost 等の公開報道により特定。 「2019-05 に bitFlyer Blockchain 代表に就任」 は登記(設立日 2019-05-31)と報道の組み合わせから整理した。 取引所事業の代表が「平子氏 → 三根氏 → 林氏 → 関氏」 と複数回交代した在任期間は、 履歴事項全部証明書の役員欄の整合的な読みとして整理した
  • 2022年の ACA グループによる買収観測は、 日本経済新聞・東洋経済・CoinDesk Japan・あたらしい経済・月刊暗号資産 online などの公開報道に依拠する。 評価額450億円・株主連合の構成・加納氏の保有比率(約4割)・最終的な買収断念に関する記述は、 これらの報道で繰り返し言及されている事項を採用した。 非上場会社のため正式な意向表明・撤回のリリースは存在せず、 本記事は報道ベースの整理にとどまる
  • 2024年の FTX Japan 買収・Custodiem 化は、 bitFlyer Holdings の公式リリース(2024-06-20 株式譲渡契約締結/2024-07-26 株式取得完了/2024-08-28 商号変更)と Custodiem 公式サイトに依拠。 Custodiem の代表取締役・所在地・設立日・保有ライセンスは Custodiem 公式サイトから取得した
  • 2025年3月の株式併合は履歴事項全部証明書の「発行済株式の総数」欄に「2025-03-28:1万株」 として明示されている事実で、 直前は「2018-10-01:9,407万5,000株」 から集約されたもの。 株式併合決議の議事録や臨時報告書(同社は未上場のため提出義務なし)は本記事の調査範囲外
  • 「IPO 準備の足音」 という解釈は、 株式併合・監査法人・監査等委員会・IPO 準備室・IR 担当募集・Custodiem 取り込みの組み合わせから導かれる読みで、 同社の公式発表ではない
  • 2020-08-31 に ウェブニウム株式会社(資本金100万円・株式100株の小規模会社)が bitFlyer に吸収合併された事実は登記に残るが、 ウェブニウムの事業実態は不明(資本金規模からは SPV や休眠会社の可能性)。 本記事の主筋とは直接関係しないため詳述しない
  • 出典:履歴事項全部証明書(bitFlyer 現行・閉鎖×2、 bitFlyer HoldingsbitFlyer BlockchainCustodiemウェブニウム合併相手)/決算公告(単体、 2018-2025)/PR TIMES(株式会社bitFlyer、 約180件)/J-PlatPat/bitFlyer Holdings 公式サイトCustodiem 公式サイト/公開報道(M&A 観測・業務改善命令・持株会社化・ACA 騒動・FTX Japan 買収の経緯)

11. ファクトシート

項目内容
商号(事業会社)株式会社bitFlyer
商号(持株会社)株式会社bitFlyer Holdings
設立2014年1月9日(事業会社)
本店東京都港区赤坂9-7-1(持株会社・事業会社・Blockchain・Custodiem の国内4社とも同住所)
代表者代表取締役:加納裕三(Holdings/事業会社/Blockchain の3社兼任)、 Custodiem では取締役
決算期12月期
会計監査人EY 新日本有限責任監査法人
機関設計監査等委員会設置会社
資本金(事業会社)20.61億円(2017-02-13 以降変動なし)
直近期営業収益(事業会社、 FY2025/12)135.7億円
直近期当期純利益(事業会社、 FY2025/12)+24.6億円
直近期総資産(事業会社、 FY2025/12)1兆800億円(顧客預かり資産が大半)
国内子会社bitFlyer Blockchain(ブロックチェーン技術)、 Custodiem(クリプトカストディ/第一種金商業・暗号資産交換業)
海外子会社bitFlyer USA、 bitFlyer Europe S.A.
主要株主創業者および既存株主で構成されるが、 現時点の正確な持分比率は公開情報から確認できない(過去には 2022年の ACA グループによる買収観測あり)
主要事業暗号資産取引所、 ブロックチェーン技術開発、 クリプトカストディ、 関連サービス(クレカ・貸しコイン・レバレッジ取引等)

本文で言及した企業