Nexus Bank(旧 SAMURAI&J PARTNERS)の Jトラスト統合 ─ 金融再編6年と、 商号「SAMURAI」が分かれた瞬間
Nexus Bank(旧 SAMURAI&J PARTNERS)の Jトラスト統合と、 商号「SAMURAI」が分かれた瞬間。 法人番号6120001031233の沿革・大型減資・経営者交代・現在のNexus Card事業までを一次資料で再構成する。

この記事のポイント
- 旧商号「デジタルデザイン株式会社」(1996年設立、 2000年6月にナスダックジャパン市場の第1号銘柄として上場)→ 2017年5月に「SAMURAI&J PARTNERS」へ商号変更 → 2020年11月に「Nexus Bank」へ商号変更 → 2022年3月に Jトラスト株式会社 による株式交換で完全子会社化・上場廃止、 という同一法人の連続した3度の商号変更
- 2020-09-23 に東証は同社(コード4764)を上場廃止猶予期間入り銘柄に指定。 同年11月1日に株式交換で 非上場の Jトラストカード株式会社(およびその子会社 韓国JT親愛貯蓄銀行)を 216億円相当のA種優先株式発行で完全子会社化 したことが「不適当合併等」(非上場会社を子会社化する大型株式交換)の上場廃止審査の対象に該当したため
- 2022年3月、 Jトラスト株式会社による株式交換で同社の完全子会社となり、 同月に上場廃止。 2023年4月11日に Jトラスト本体との吸収合併で Nexus Bank は法人として消滅。 事業はJトラスト本体に承継され、 現在は「日本金融」セグメント内の Nexus Card 事業(在留外国人向けクレジットカード)として運営
- 2021年6月、 山口慶一氏(当時 Nexus Bank・SAMURAI証券 兼任代表)が MBO で SAMURAI証券・SAMURAI ASSET FINANCE の全株式を約12.77億円で取得、 SAMURAI FINANCIAL HOLDINGS として独立。 Nexus Bank 側はこの譲渡で特別利益約7.54億円を計上
本記事の前提
Nexus Bank株式会社(旧 SAMURAI&JPARTNERS株式会社)の履歴事項全部証明書・閉鎖事項証明書、 Jトラスト株式会社 の有価証券報告書(EDINET docIDS100XSDT)、 TDnet 決算補足説明資料、 国税庁法人番号公表データ、 官報組織再編公告を相互参照して構成した分析記事です。 決算公告は 単体・無連結ベース(単位 億円)、 Jトラストの数字は 連結ベース(IFRS)。
0. このシリーズが扱うもの(30秒)
現在「SAMURAI」を冠する金融グループは SAMURAI FINANCIAL HOLDINGS のみです。 ただし2017〜2020年の3年間は、 別資本の上場フィンテックも「SAMURAI&J PARTNERS」を名乗っており、 「SAMURAI」ブランドを2社が共有していた時期がありました。
- 本記事のテーマ:旧 SAMURAI&J PARTNERS(〜2020年10月)→ Nexus Bank(2020年11月以降、「SAMURAI」を外す)→ 2022年3月に Jトラスト株式会社 の完全子会社化で上場廃止 → 2023年4月に合併で法人消滅
- 別資本の現存系列:SAMURAI FINANCIAL HOLDINGS(2021年新設、 SAMURAI証券・SAMURAI ASSET FINANCE合同会社・SAMURAI ALTERNATIVE MANAGEMENT株式会社・SAMURAI CAPITAL MANAGEMENT 1号合同会社・同2号合同会社 を傘下に持つ独立系金融グループ)
両者は 資本関係はなく、 商号「SAMURAI」を時期をずらして名乗ったもの。 ところが登記をたどると、 旧 SAMURAI&J PARTNERS の社長(山口慶一氏)が、 同社代表を退任するタイミングで MBO により SAMURAI証券・SAMURAI ASSET FINANCE を取得して SAMURAI FH を独立させた、 という構図が浮かび上がります。
本記事は 本記事のテーマ=旧 SAMURAI&J PARTNERS / Nexus Bank の完全沿革 を、 別記事 SAMURAI FINANCIAL HOLDINGS は MBOで生まれた で別資本の現存系列を扱います(後続)。
1. Nexus Bank という会社の現在地 ─ 法人としては消滅済み
この記事の主役「Nexus Bank株式会社」は、 2023年4月11日に Jトラスト株式会社 との合併で消滅 した会社です。 法人としては存続しておらず、 取得できる登記は閉鎖事項証明書のみ(2通とも closed)。
- 設立:1996-02-06、 旧商号「株式会社デジタルデザイン」(大阪市北区西天満発)
- 本店:東京都渋谷区恵比寿4-20-3(消滅時点)
- 消滅日:2023年4月11日、 Jトラストへの吸収合併
- 旧商号:デジタルデザイン → SAMURAI&J PARTNERS(2017年5月)→ Nexus Bank(2020年11月)
合併後、 同社の事業は Jトラスト株式会社(東証スタンダード 8508、 渋谷区恵比寿4-20-3 = 旧 Nexus Bank と同じ本店)に承継されました。 在留外国人向けクレジットカード「Nexus Card」事業は、 現在は Jトラストの「日本金融事業」セグメントの一部として運営されています(Jトラスト 2025年12月期 決算補足説明資料での開示)。
ところがこの会社は、 たった数年前まで 東証JASDAQ スタンダード上場のフィンテック「SAMURAI&J PARTNERS」(証券コード 4764) として知られていました。 同社の沿革をたどると、 デジタルデザイン → SAMURAI&J PARTNERS → Nexus Bank と3度の商号変更を経て、 上場廃止と Jトラスト統合(最終的に法人消滅)に至った10年あまりの再編史が見えてきます。
2. 沿革タイムライン

主なイベントを年表で並べると次のとおり。
| 日付 | できごと |
|---|---|
| 1996-02 | 株式会社デジタルデザインとして大阪市北区西天満で設立 |
| 2017-05 | 商号変更 → SAMURAI&J PARTNERS株式会社(東証JASDAQ スタンダード・コード4764 は継続) |
| 2018-05-01 | 東京都港区虎ノ門1-7-12 に本店移記 |
| 2018-06〜2020-11 | 月次増資ラッシュ(資本金 13.3億 → 21.1億、 約2年半で約8億増資) |
| 2020-09-23 | 東証が同社(コード4764)を上場廃止猶予期間入り銘柄に指定(猶予期限 2023-12-31) |
| 2020-11-01 | NexusBank株式会社 へ商号変更 + 株式交換で Jトラストカード株式会社(韓国JT親愛貯蓄銀行を含む)を完全子会社化 + 対価として A種優先株式 170万788株 を発行(総額 約216億円相当) |
| 2020-12-01 | 資本金 21.1億 → 5,013万円(約99%の大型減資) |
| 2020-12-14 | 港区赤坂1-7-1 へ本店移転 |
| 2021-02〜03 | 資本金を 6,141万 → 4億1,491万円に再増資(種類株式の追加割当) |
| 2022-03 | Jトラスト株式会社による株式交換で完全子会社化、 同月 東証JASDAQ 上場廃止 |
| 2022-12-12 | 渋谷区恵比寿4-20-3 へ本店移転(移記) |
| 2023-04-11 | Jトラスト株式会社との吸収合併で Nexus Bank 法人消滅、 事業は Jトラスト本体に承継(同日付で Jトラスト本店も渋谷区恵比寿4-20-3 へ移転) |
特に2020年9月〜12月の数か月で起きた「上場廃止猶予期間入り → Jトラストカードの完全子会社化 → 商号変更 + 種類株式発行 + 大型減資」 は、 同社の事業構造と上場会社としての枠組みが同時に崩れていく節目でした。
3. 商号変更と「SAMURAI&J PARTNERS」末期の資本政策

閉鎖事項証明書をたどると、 「SAMURAI&JPARTNERS」を名乗っていた2018-05〜2020-10 の期間、 ほぼ 毎月のように増資が繰り返されている ことが分かります。
| 日付 | 資本金 | 株式数(普通株式) |
|---|---|---|
| 2018-05-01(移記) | 13.3億円 | 2,985万株 |
| 2018-06-01 | 15.9億円 | 3,163万株 |
| 2018-06-25 | 20.9億円 | 3,488万株 |
| 2018-07-31 | 21.0億円 | 3,494万株 |
| 2018-12-31 | 21.0億円 | 3,496万株 |
| 2019-01-31 | 21.1億円 | 3,496万株 |
| 2020-11-25 | 21.1億円 | 3,496万株(普通)+170万株(A種優先) |
これは典型的な 「ストック・オプション行使 + 第三者割当」 を断続的に積み重ねた上場フィンテックの資本政策 のパターン。 半年で約8億円の増資(13.3億→21億)を、 細かい刻みで進めています。
2020年9月:上場廃止猶予期間入り銘柄に指定
商号変更の少し前、 2020年9月23日に東証は SAMURAI&J PARTNERS(コード4764)を 上場廃止猶予期間入り銘柄 に指定しました。 これは同年11月1日に予定されていた 「非上場会社(Jトラストカード株式会社)を完全子会社とする株式交換」 が、 東証の「不適当合併等に係る上場廃止審査」の対象に該当するための指定で、 上場会社が 非上場会社を子会社化する規模の株式交換 を行う場合に課される枠組みです。 猶予期間は2023年12月31日までで、 期間内に新規上場審査に相当する基準を満たさなければ上場廃止となる仕立て。
2020年11月:商号変更・Jトラストカード子会社化・A種優先株式 216億円

そして2020年11月1日、 同日付で3つのイベントが重なります。
- 商号変更:SAMURAI&J PARTNERS → NexusBank株式会社
- 株式交換:Jトラストカード株式会社(およびその子会社の韓国JT親愛貯蓄銀行)を完全子会社化(=これが上場廃止猶予期間入りの直接原因)
- 株式交換の対価として A種優先株式 170万788株 を新規発行 ─ 総額 約216億円規模
つまり Jトラスト側にとっては、 自身が保有していた Jトラストカード(とその傘下の韓国JT親愛貯蓄銀行)を、 SAMURAI&J PARTNERS / Nexus Bank に株式交換で渡す代わりに、 Nexus Bank の A種優先株式を取得して同社の大株主に立つ、 という資本構造の組み替えでした。 これにより Jトラストカード・JT親愛貯蓄銀行の事業が Nexus Bank(旧 SAMURAI&J PARTNERS)の連結に取り込まれ、 Jトラスト本体は Nexus Bank の優先株主として実質支配を持つ構造になりました(2022年3月にこの優先株主関係は株式交換でJトラストの完全子会社化に発展し、 2023年4月に Nexus Bank 法人ごと吸収合併され消滅)。 これが次の §4 で見る「単体総資産の急増」 の主因にもなりました。
2020年12月:資本金 21.1億 → 5,013万円の大型減資
その翌月、 資本金が21.1億から5,013万円に減資 されます。 約99%の減資で、 これは「無償減資(資本準備金への振替 or 累積損失の補填)」の典型パターン。 直後の2021年2月には資本金が6,141万円、 3月末には4億1,491万円に 再増資 されており、 一度ゼロに近づけてから新たな資本構成で再出発する「資本のリセット」とみるのが整合的です。
通常、 これだけ大型の減資と再増資を短期間で行うのは、 大規模な業績悪化の整理 + 大株主の入れ替え が起きている時期です。 同時並行で起きていたのが、 次の B/S の劇的な変化です。
4. 総資産70倍ジャンプの正体 ─ 株式交換による Jトラストカード・JT親愛貯蓄銀行の連結化

決算公告(単体)から読み取れる総資産の推移は驚異的です。
| 期 | 総資産 |
|---|---|
| 2016/1 | 10.2億円 |
| 2017/1 | 8.4億円 |
| 2018/1 | 17.8億円 |
| 2019/1 | 25.2億円 |
| 2019/12 | 27.3億円 |
| 2020/12 | 2,123.7億円 ← 約70倍ジャンプ |
| 2021/12 | 2,612.8億円 |
2019年12月から2020年12月のわずか1年で 総資産が30億→2,124億へ約70倍 に膨らんでいます。 ただし、 これは「自社の事業で預かり資産が増えた」のではなく、 2020年11月の株式交換による M&A 連結化 が主因です。
§3 で見たとおり、 同年11月に Nexus Bank は Jトラストカード株式会社(および韓国JT親愛貯蓄銀行)を 216億円相当の株式交換で完全子会社化 しています。 韓国JT親愛貯蓄銀行は 日本円換算で1,000億円超の総資産 を持つ貯蓄銀行で、 これが連結子会社として取り込まれたことで、 Nexus Bank の連結総資産が一気に膨らみました。 加えて単体ベースでも、 株式交換で取得した子会社株式(投資勘定)と、 対価として発行した A種優先株式の資本剰余金が両建てで増えたため、 単体総資産も大きく増えています。
つまり「Bank」という商号は 取得した韓国貯蓄銀行(JT親愛貯蓄銀行)を念頭に置いた表現 で、 Nexus Bank 自身が銀行業免許を取って預かり資産業に転換したわけではありませんでした。 後述のとおり、 Nexus Bank 法人は2023年4月に Jトラストと合併して消滅し、 在留外国人向けクレジットカード「Nexus Card」事業はJトラスト本体に承継されて現在も運営されています。 銀行業に至らずに Jトラストの日本金融セグメントに収まる形で、 同社の物語は閉じました。
5. 単体決算 ─ 2021年12月期に黒字転換

| 期 | 売上高 | 当期純損益 | 純資産 |
|---|---|---|---|
| 2016/1 | 1.5億 | ▲0.1億 | 9.7億 |
| 2017/1 | 1.4億 | ▲1.6億 | 8.2億 |
| 2018/1 | 3.8億 | ▲0.5億 | 14.6億 |
| 2019/1 | 2.7億 | ▲6.0億 | 22.3億 |
| 2019/12 | 5.2億 | ▲0.0億 | 24.5億 |
| 2020/12 | 1.1億 | ▲5.6億 | 234.9億 |
| 2021/12 | 10.0億 | +8.9億 | 251.0億 |
2020年12月期は、 売上は1.1億円に落ち込んだ一方で 純資産が234.9億円に膨らんでいます。 これは大型減資と同時に 大規模な第三者割当 or 既存株主の追加出資 が行われたことを示唆しています(純資産=資本金+資本剰余金+利益剰余金で、 資本金が0.5億まで減ったのに純資産が約235億あるのは、 資本準備金・その他資本剰余金に約230億が積まれているということ)。
2021年12月期は売上10億円・純利益+8.9億円で 黒字転換。 ただし、 翌年以降は Jトラストの連結に取り込まれていくため、 単体決算公告のみではビジネス実態を追いきれなくなります(決算公告は単体のみ開示で、 海外子会社などの連結数値は公開されていない)。
6. 2022年3月の上場廃止 → 2023年4月の合併消滅 — 2段階のJトラスト統合
上場廃止と法人としての消滅は、 1年の間隔をあけて段階的に進みました。
- 2022年3月:Jトラスト株式会社が株式交換で Nexus Bank を 完全子会社化 + 東証JASDAQ 4764 上場廃止
- 2023年4月11日:Jトラスト株式会社と Nexus Bank の 合併(吸収合併)で Nexus Bank は法人として消滅。 事業はJトラスト本体に承継、 同日付で Jトラスト本体も恵比寿4-20-3 へ本店移転
つまり、 2022年3月時点で既に上場会社ではなく Jトラスト 100% 子会社 となっており、 2023年4月の合併は「100%子会社の法人格を解消して Jトラスト本体に統合」する最終ステップでした。
経営者の橋渡し

経営者の入れ替わりは、 統合の経緯を読む上でとても重要です。 登記の役員履歴をたどると、 3名のキーパーソンが浮かび上がります(以下、 各氏とも代表就任前後の経歴を、 公開された登記の役員欄を時系列で整理したもの)。
山口慶一氏 ─ 2017年から CFO として SAMURAI証券(旧 AIP証券)の買収を主導、 2021年6月に MBO で独立
- 2017-03:SAMURAI&J PARTNERS の取締役CFO として加入、 同年中に AIP証券を買収・「SAMURAI証券」へ商号変更
- 2017-11 ~ 2019-04:SAMURAI証券 取締役 → COO → 代表取締役CEO
- 2019-04-24 ~ 2021-06-24:Nexus Bank(旧 SAMURAI&JPARTNERS)代表取締役社長(SAMURAI証券代表と兼任)
- 2021-06-10:MBO の受け皿として SAMURAI FINANCIAL HOLDINGS を新設、 代表取締役に就任
- 2021-06-24:Nexus Bank → SAMURAI FH へ SAMURAI証券・SAMURAI ASSET FINANCE の 全株式を約12億7,700万円で譲渡(MBO実行)。 同日 Nexus Bank 代表を退任
「2週間前にこっそり新会社を立ち上げた」のではなく、 MBO ストラクチャー上、 譲渡実行日の2週間前に受け皿持株会社を新設する標準的な段取り。 山口氏は2017年から SAMURAI証券(旧 AIP)の買収・育成を主導してきた当事者で、 MBO は「自分が作った事業を Jトラスト傘下の Nexus Bank から買い戻して、 独立グループとして経営継続する」 構図でした。 この経緯と、 系統Bへの分かれ方は、 別記事 SAMURAI FINANCIAL HOLDINGS は MBO で生まれた で詳述します。
江口譲二氏 ─ Jトラスト元社長による「中継ぎ」
- 過去:Jトラスト株式会社 代表取締役社長を歴任
- 2020-10-30 ~ 2022-03-30:NexusBank 代表取締役(代表取締役会長 を含む)
江口氏は山口氏とほぼ入れ替わる形で2020年10月に Nexus Bank の代表に就任しています。 もともと Jトラスト本体の社長を務めていた人物が、 商号変更(2020-11-01)の2日前から Nexus Bank 代表に座っているということは、 2020年の段階で既に Jトラスト側が Nexus Bank の経営権を実質的に握っていた とみる方が整合的です。
つまり、 2023年4月11日の合併は 「Jトラスト側が3年前から既にコントロールしていた会社を、 正式に法人として合併・統合した」 プロセスの最終段階だった、 と読めます。
熱田龍一氏 ─ 合併直前まで Nexus Bank 代表、 現在 Jトラスト取締役常務
- 2022-04-01 ~ 2023-04-11:Nexus Bank 代表取締役(合併で消滅するまで)
- 現在は Jトラスト株式会社 取締役常務、 株式会社日本保証(信用保証残高3,000億)の代表、 Jグランド株式会社(不動産特定共同事業法のクラウドファンディング会社)の代表を 兼任
熱田氏は Jトラストの「日本金融事業」セグメントの 複数法人を束ねる位置 にいる人物で、 Nexus Bank の代表就任もこの文脈で読むと自然。 合併で Nexus Bank が消滅した後、 同氏は Jトラスト側の役職に集中し、 Nexus Card 事業もJトラスト傘下で継続運営されています。
7. 合併承継後の Nexus Card 事業 ─ Jトラスト本体に統合

Jトラスト株式会社 の最新有価証券報告書(EDINET S100XSDT、 2026-03-24 提出)と TDnet 決算補足説明資料(2026-02-12)によると、 同社の連結セグメントは次のとおり。
| セグメント | 構成比 | 主要事業 |
|---|---|---|
| 東南アジア金融 | 37% | インドネシア銀行・カンボジア銀行 |
| 韓国金融 | 35% | JT親愛貯蓄銀行・NPL債権買取(FY2025 営業利益 +135.5%増) |
| 日本金融 | 15% | 日本保証(信用保証残高3,000億)、 債権回収、 SAMURAI証券(旧 Jトラスト系)、 Nexus Card |
| 不動産 | 9% | Jグランドのマンション分譲・不動産クラウドファンディング |
| 投資・その他 | 4% | Group Lease 損害賠償回収など |
2023年4月11日の合併で Nexus Bank 法人は消滅しましたが、 同社の事業は Jトラスト本体に承継され、 現在も「日本金融」セグメント内の Nexus Card 事業 として運営されています。 2025年12月期の決算補足説明資料には次のとおり明記されています。
Nexus Cardは東京スター銀行とカード会員紹介業務委託契約を締結。 東京スター銀行から紹介された顧客に対して、 Nexus Cardが有する在留外国人向けクレジットカード発行のノウハウを活かし、 顧客の生活利便性向上に貢献する。 (Jトラスト 2025年12月期 決算補足説明資料、 2026-02-12)
つまり、 旧「Nexus Bank」が当初目指していたであろう「銀行型プラットフォーム」は形を変え、 在留外国人向けクレジットカード会社 として東京スター銀行との提携を通じて事業を展開しています。 上場フィンテック「SAMURAI&J PARTNERS」が2018年に標榜していた「オルタナティブ投資プラットフォーム」とは、 まったく異なる事業の現在地です。
8. 読みどころ ─ 6年で起きた3つの転換
(1) 上場フィンテックから預かり資産型B/Sへ(2020年)
2020年の商号変更・大型減資・総資産70倍ジャンプは、 同社が オルタナティブ投資プラットフォーム事業から、 預かり資産型のB/Sビジネスへ転換 した節目。 ただし銀行業免許は取得できず、 結果としてクレジットカード会社の形に収まりました。 「Bank」を名乗ったが Bank には到達しなかった、 という歴史。
(2) 経営者の橋渡しが先行(2020年〜2022年)
法的な合併(2023年4月)の3年前から、 Jトラスト元社長の江口譲二氏が Nexus Bank 代表に就任 しています。 つまり「2023年に突然 Jトラスト傘下に入った」のではなく、 2020年から段階的に経営権が移管されていた。 法的な合併はその仕上げ。
(3) 商号「SAMURAI」は別会社で生き残った(2021年〜)
旧社長の山口慶一氏は、 Nexus Bank の代表退任の14日前に SAMURAI FINANCIAL HOLDINGS を新設 し、 「SAMURAI」ブランドを別法人として復活させました。 同社は現在、 SAMURAI証券(旧 AIP証券、 2002年設立)・SAMURAI ASSET FINANCE合同会社・SAMURAI ALTERNATIVE MANAGEMENT株式会社・SAMURAI CAPITAL MANAGEMENT 1号・2号合同会社 を傘下に持つ独立系金融グループとして展開しています。
両社(Nexus Bank と SAMURAI FINANCIAL HOLDINGS)は 資本関係はなく、 商号「SAMURAI」を共有しているだけ。 ただし 創業時の人脈は山口慶一氏一人で繋がっている、 という構造です。 この系譜の詳細は別記事 SAMURAI FINANCIAL HOLDINGS は誰がなぜ作ったか で扱います。
9. 残る論点
Nexus Card 事業の規模感:Jトラスト連結セグメント開示では「日本金融」が15%(営業収益約190億円)ですが、 この中で Nexus Card 単独の収益規模・口座数・取扱高は開示されていません。 セグメント細分化を含む関連注記の追加開示があれば、 在留外国人向けカード市場における Jトラストグループのポジションがより明確になります。
10. 計算方法・データの限界(Methodology)
- 法人格:「SAMURAI&JPARTNERS株式会社」「NexusBank株式会社」は商号変更前後で同じ法人で、 2023-04-11 の Jトラストへの吸収合併で消滅しています(現存する登記は閉鎖事項証明書のみ)。 当方DB の corporate_master では国税庁データ更新ラグにより close_date が未反映のケースがあるため、 履歴事項全部証明書の取得結果から消滅を確認しました
- 決算公告は単体・無連結:Nexus Bank の決算公告(〜2021/12)は単体ベース。 2023年4月の Jトラスト統合後は、 同社の数値は Jトラスト連結に取り込まれ、 個別開示は事実上停止
- Jトラスト の連結数値は IFRS ベース。 セグメント別営業収益は2025年12月期の決算補足説明資料に依拠
- 役員の同一人物判定:persons テーブルでは同名でも別 person_id として登録されているケースがあり、 役員の連続性は名寄せ後の sanity check が必要 [[project_officer_observation_model]]。 本記事の3名(山口慶一氏・江口譲二氏・熱田龍一氏)については時系列・役職・関係企業から 同一人物として整合的 と判断しています
- 「事業の中身が変わった」「経営権が移管された」などの解釈は、 公開された登記・決算公告・有報の事実を組み合わせた 本稿の解釈 で、 同社の公式見解ではありません
出典
履歴事項全部証明書・閉鎖事項証明書(Nexus Bank株式会社、 Jトラスト株式会社)/決算公告(単体)/Jトラスト株式会社 有価証券報告書(EDINET docID S100XSDT、 2026-03-24 提出)/Jトラスト 2025年12月期 決算補足説明資料(TDnet、 2026-02-12)/国税庁 法人番号公表データ/官報組織再編公告/東証 上場廃止猶予期間入り銘柄指定(2020-09-23)・上場廃止(2022-03)の公開記録/Nexus Bank 2021年6月24日リリース(連結子会社株式譲渡)
11. ファクトシート
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 現商号 | Nexus Bank株式会社(2020-11-01 商号変更) |
| 旧商号 | SAMURAI&JPARTNERS株式会社(〜2020-10-31) |
| 本店 | 東京都渋谷区恵比寿4-20-3(2022-12-12 移記) |
| 設立 | 1996-02-06(国税庁登録) |
| 親会社(実質) | Jトラスト株式会社(東証スタンダード 8508、 2023-04-11 合併) |
| 直近資本金 | 4億1,491万円(2021-03-31 以降) |
| 直近期売上(単体、 2021/12) | 10.0億円 |
| 直近期当期純利益(単体、 2021/12) | +8.9億円 |
| 主要事業 | 在留外国人向けクレジットカード「Nexus Card」(Jトラスト 日本金融セグメント内) |
| 合併直前の代表 | 熱田龍一氏(合併後はJトラスト取締役常務に集中) |
| 法人格 | 2023-04-11 にJトラストへの吸収合併で消滅 |
| 上場履歴 | 東証JASDAQ スタンダード 4764(2000年6月ナスダックジャパン市場 第1号銘柄として上場、 〜2022年3月) |
| 上場廃止 | 2022年3月、 Jトラスト株式会社による株式交換で完全子会社化 |
| 商号変遷 | 株式会社デジタルデザイン(1996-2017)→ SAMURAI&J PARTNERS株式会社(2017-2020)→ NexusBank株式会社(2020-2023、 合併消滅まで) |
本文で言及した企業