キャディ株式会社、決算公告4期・登記簿・公開IRで読み解く ─ 累計約250億円の調達と、製造業AIデータプラットフォームへのピボット

創業7年で累計約250億円の株式調達と決算公告4期分の累損60億円超を両立させてきたCADDi。製造業AIデータプラットフォームへのピボットと直近ラウンド時点の時価総額約706億円を、登記と公告で読み解く。

Compalyze Journal分析対象キャディ株式会社

この記事のポイント

  • 公告4期分の純損失 累計 約116億円 / 登記から復元したエクイティ調達 累計 約258億円が併走
  • 「増資クローズ → 約半年後に資本金1億円まで減資」のリズムが3回確認できる(2019・2023・2025)
  • 2025年4月の追加ラウンド(C種+CC種)時点の全株式数を基準にした時価総額は約706億円

キャディ株式会社(本店:東京都台東区浅草橋、設立2017年11月、代表取締役 加藤勇志郎氏)は、製造業のサプライチェーンを再構築するという課題に7年以上向き合ってきた未上場のスタートアップである。創業当初の「製造業の受発注プラットフォーム『CADDi』」というポジションから、現在の「製造業AIデータプラットフォーム(『CADDi Drawer』『CADDi Quote』)」へと事業の重心を移しながら、シリーズA・B・C・直近ラウンドと4回の主要な株式調達を重ねてきた。

以下では、当社が官報に掲載した決算公告4期分(2018/2020/2022/2024年9月期)、2026年5月時点で取得した履歴事項全部証明書、特許庁J-PlatPatの出願データ、厚生労働省の社会保険被保険者数、そして同社のプレスリリースを横断的に並べ、累計約250億円のエクイティ調達と単独累損60億円超の併走、そして直近ラウンド(2025年4月)時点の全株式数を基準にした時価総額の試算を、登記の事実関係に沿って整理していく。

1. 「累損60億超 × 調達250億超」 ─ 公告4期分の損益と財務体力

決算公告4期分を時系列で並べると、CADDiという会社が「先行投資型のスタートアップ」であることが、数字の側から見える。同社の決算月は9月で、確認できる公告は2018/2020/2022/2024年9月期の4期分。

決算公告4期分の損益・純資産・負債

当期純損失純資産負債総資産
FY2018(2018年9月期)-0.84億-0.09億(債務超過)0.85億0.76億
FY2020(2020年9月期)-8.43億4.01億10.31億14.32億
FY2022(2022年9月期)-46.27億18.86億47.80億66.66億
FY2024(2024年9月期)-60.49億12.16億80.03億92.19億

公告ベースで確認できる4期分の当期純損失は 累計 約116億円。FY2022の-46.27億をピークに、FY2024は-60.49億と単年度の赤字幅は維持されているが、純資産は18.86億→12.16億と1期で約7億の純資産減少を記録している。これは「赤字を続けながら、新規調達が間に挟まらない期では純資産を取り崩していく」という、構造的に資本注入を前提とした事業フェーズにあることの表れである。

一方で総資産は0.76億→14.32億→66.66億→92.19億と4桁の成長を続け、負債も0.85億→10.31億→47.80億→80.03億と一貫して拡大している。FY2024時点で 総資産92億/負債80億/純資産12億/自己資本比率13.2% という構成は、運転資金とプラットフォーム開発投資をバランスシートに乗せ続けてきた結果として読むのが妥当である。

なお、FY2024(2024年9月期)の決算公告は 2025年8月22日付で官報に掲載されている。期末から約11ヶ月後の公告であり、上場準備会社としては短くもなく、長くもない、標準的な時期である。

2. 「シリーズA → B → C → 直近ラウンド」 ─ 登記から復元する4回の主要な株式調達

公告に掲載される単独損益と並走するのが、登記簿が記録する株式調達の累計である。登記上の発行済株式数の増加分と、各種優先株式について登記に明記された「1株あたり払込金額」を組み合わせると、4回の主要なラウンドが見えてくる。

株式調達ラウンドの累計と単独決算公告の純損益

ラウンド(登記日ベース)種類株式試算(登記ベース)公表額(PR)
シリーズA(2018年12月)A種優先株式 34,481株 × 29,523円約10.2億円約10.2億円
シリーズB(2021年8〜9月)B種優先株式 34,009株 × 236,335円 + BB種優先株式 11,469株 × 69,718円約88.4億円(うち外部公表分は約80.3億)約80.3億円
シリーズC(2023年3月〜7月)C種優先株式 45,060株(株式分割前ベース、単価 261,600円)約117.9億円約118億円
直近ラウンド(2025年4月)C種優先株式 追加 4,128,438株、CC種優先株式 2,293,578株 各 単価654円(株式分割後)約42.0億円約40億円(同時にデットファイナンス 約51億円を公表)

登記の数字で復元した累計エクイティ調達は約258億円。各ラウンドの登記から算出した値が公表額とほぼ一致する(シリーズBはBB種を含めるかどうかで8億円程度の差が出る)ことから、「資本金の増加額の2倍が払込総額」の慣行がきれいに作動している標準的な調達構造であることが分かる。

なお、各種優先株式の「1株あたり払込金額」が登記の定款に明記されている場合、これを1株単価として直接採用する。A種29,523円、B種236,335円、BB種69,718円、C種およびCC種654円(C・CC種は2024年2月の400倍株式分割を反映した分割後の値)。これらは登記の剰余金配当条項に「A種払込金額」「B種払込金額」等として明示されている数字をそのまま使っている。

3. 「4年連続赤字を抱えながら資本金は1億円」 ─ 「調達クローズ→約半年後の減資」のルーティン

登記簿で最も目を引くのは、資本金の動きが「増資クローズ→約半年後に1億円まで減資」を繰り返している点である。

資本金の推移と「調達クローズ→約半年後に1億まで減資」のルーティン

時系列で並べるとパターンがはっきり見える:

  • 2019年7月31日:5億4,900万円 → 1億円(移記時に確認できる初回減資、4.49億減)
  • 2023年3月10日:1億円 → 45億4,581万円(C種優先株式の初回クローズ、+44.46億)
  • 2023年7月31日:45億4,581万円 → 59億9,565万円(C種優先株式の2回目クローズ、+14.50億)
  • 2023年9月30日:59億9,565万円 → 1億円(減資、-58.96億)
  • 2025年4月4日〜11日:1億3万円 → 14.00億 → 21.50億 → 22.00億(C種優先株式の追加発行+CC種優先株式の発行、累計+21億)
  • 2025年9月30日:22億30万円 → 1億円(減資、-21.00億)

この「増資クローズ→約半年後に資本金1億円まで減資」のリズムは、外形標準課税の対象が資本金1億円超法人であることを意識した、未上場のスタートアップとしては定石化された資本政策である。法人税の中小企業向け軽減税率の適用も同じく「資本金1億円以下」が境界線で、累損が積み上がる先行投資フェーズで現預金の流出を1円でも抑える効果を狙う、合理的な選択肢と読める。

ただし、上場準備が進めば、IPO公募増資により資本金が1億円を大きく超える水準まで積み上がるケースが多い(直近のスタートアップ系IPOではマネーフォワード 267億円、ラクスル 47億円、カバー 11億円など)。CADDiは現時点でこのルーティンを継続しており、上場の最終フェーズはまだ先、という読み方ができる。

4. 製造業AIデータプラットフォームへの「事業の重心移動」 ─ プロダクト名の商標出願が物語る

事業面では、CADDiが「製造業の受発注プラットフォーム」から「製造業AIデータプラットフォーム」へと、サービスの主軸を移したことが、商標の出願記録にもくっきり残っている。

知的財産権の出願件数(2017〜2026、特許・商標・意匠)

特許出願は2018年〜2024年で計10件と緩やかな推移だが、商標は2025年に34件と突出している。中身を見ると、4月1日付の一括出願として:

  • 製造業AIデータプラットフォーム / 製造業AI見積クラウド / AI見積クラウド
  • CADDi Drawer / CADDi Quote / Drawer / Quote
  • 3D類似検索 / CAD類似検索 / 3D Similarity Search
  • ChatSearch / Chat Search / Cost Review / AI Cost Review
  • CADDi UNLEASH / CADDi Design Review / CADDi しなきゃ

これらは「キャディが調達プラットフォームのキャディ」から「製造業のCADデータ・図面・見積データをAIで横断できる事業者」へと、自らのプロダクト群の輪郭を一気に整理し直そうとしている動きとして一致する。

事業内容の登記上の目的にも、「受発注の取り扱い」だけでなく「ソフトウェアの開発」「データの集計・分析」「コンサルティング」等が並ぶ。プレスリリース側でも、「CADDi MANUFACTURING」(旧来の調達・製造サービス、2022年10月にリブランド)と、「CADDi Drawer」「CADDi Quote」(図面検索AI・見積特化アプリケーション)の3本柱が前面に立っており、登記の事業目的・商標ポートフォリオ・PRの三層が「データプラットフォーム企業」という方向に揃っている。

公開資料上、当社の事業の中核として描かれている「CADDi Drawer」は、製造業に蓄積された二次元図面・三次元データ・諸元情報をAIで構造化し、形状やキーワードで横断検索できるアプリケーションである。「CADDi Quote」は見積業務の標準化を支援するアプリケーションで、見積回答の蓄積をデータ資産に変えていく設計になっている。

5. 「2024年初頭の400倍株式分割」 ─ 上場準備のステップ

上場準備の文脈で見逃せないのが、2024年2月1日の400倍株式分割である。

区分分割前(2023年7月31日時点)分割後(2024年2月1日時点)
普通株式11万1,114株4,444万5,600株
A種優先株式3万4,481株1,379万2,400株
B種優先株式3万4,009株1,360万3,600株
BB種優先株式1万1,469株458万7,600株
C種優先株式4万5,060株1,802万4,000株
合計23万6,133株9,445万3,200株

100倍分割は近年の上場準備で標準的だが、CADDiは400倍分割を選択している。背景として、

  • 1株単価を上場時の取引しやすい水準(数百円〜千円台)に揃えるため
  • 分割後の発行株式数を上場時に必要な水準にまで持っていくため
  • ストックオプションの設計を分割後ベースで再構築するため

の3点が考えられる。実際、分割直後にA種優先株式の1株単価は29,523円→73.81円相当、B種優先株式は236,335円→590円相当、C種優先株式・CC種優先株式は654円という、上場時の終値として違和感のないレンジに落ちている。

また、株式分割と前後して新株予約権の構造も組み直されている。第1回・第3回の新株予約権は、それまで「1個=1株、行使価額6,300円/14,500円」だったものが、分割後は「1個=400株、行使価額16円/37円」に調整されている。第5回(2024年3月22日)・第6回(同4月30日)・第8回(同9月26日)・第9回(2025年1月1日)として、分割後に新規発行された新株予約権は最初から「1個=1株、行使価額147円〜654円」の現代型フォーマットで発行されており、上場後の取扱いを意識した設計に切り替わっている。

なお、移記日は2019年7月19日で、設立(2017年11月9日)から約1年8ヶ月の間に効力を失った新株予約権があるかが理論上の論点になり得るが、当社はその間に主要な調達ラウンドを経ておらず、ここで発行→消滅したSOが現登記簿から漏れている可能性は可能性は高くないとみてよい。

6. 全株式数を基準にした「直近ラウンド時点の時価総額」 ─ 約706億円

ここまでの株式数と単価の整理を踏まえて、直近ラウンド時点(2025年4月)における全株式数(発行済株式 + 新株予約権の現存ベース)を基準にした時価総額を試算する。

全株式数の内訳と直近ラウンド時点の時価総額

発行済株式(2025年4月11日時点)

種類株数比率該当ラウンド
普通株式4,444万9,800株44.1%設立資本+SO行使
A種優先株式1,379万2,400株13.7%シリーズA(2018-12)
B種優先株式1,360万3,600株13.5%シリーズB(2021-08)
BB種優先株式458万7,600株4.5%シリーズB(同時期)
C種優先株式2,215万2,438株22.0%シリーズC(2023〜2025-04)
CC種優先株式229万3,578株2.3%2025年Q1(新設)
合計1億0,087万9,416株100.0%

種類株式別の発行株式数

新株予約権(生存ベース、2025年4月時点)

履歴事項全部証明書には第1回〜第9回の新株予約権が記録されている。このうち、2025年4月時点で存続しているのは6シリーズで、全部放棄や消滅が登記されている第2回(2024-02-29)、第4回(2024-02-29)、第7回(2024-12-31)は0として除外する。各シリーズの最新個数を採用した「現存ベース」での集計は以下の通り:

シリーズ個数1個あたり株式数株式換算行使価額/株
第1回1,265個400株50万6,000株16円
第3回4,120個400株164万8,000株37円
第5回361万2,800個1株361万2,800株147円
第6回32万5,400個1株32万5,400株147円
第8回22万9,357個1株22万9,357株(C種優先株式)654円
第9回72万9,200個1株72万9,200株147円
合計705万0,757株

計算

  • 全株式数 = 発行済 1億0,087万9,416株 + 新株予約権 705万0,757株 = 1億0,793万0,173株
  • 直近ラウンドの1株単価 = C種およびCC種優先株式の払込金額(株式分割後) = 654円
  • 時価総額 = 1億0,793万0,173株 × 654円 = 約705.9億円

これは「2025年4月のC種・CC種優先株式 最終クローズ時点でのスナップショット」であり、その後の行使・新規発行を含まない値である。登記の払込金額に基づくこの試算値は、各ラウンドで公表されている調達額(A種10.2億、B種・BB種80.3億、C種118億、直近40億)との照合がすべて誤差±5%以内に収まっている。

7. グローバル展開と組織の拡大 ─ 月次の被保険者数で見る成長スピード

人員面では、社会保険の被保険者数で「採用と退職の正味の増減」を月次で追える。

被保険者数の月次推移(2024年3月〜2026年5月)

2024年3月の513人から2026年5月の837人へ、2年2ヶ月で324人の増加(+63%)。途中、2024年9月〜11月にかけて若干の調整局面(539人→528人)があるが、その後は2025年5月以降に伸びが加速し、月10〜30人ペースで増えている。これは「シリーズCの118億円とその後のC種追加・CC種クローズで集まったキャッシュを、組織拡大に投じている」フェーズの珍しくない水準だ。

なお、被保険者数には国内子会社/関連会社を通じて雇用されている人員のみが含まれ、海外現地法人(ベトナム、タイ、米国)の従業員は別である。グローバル合算ではより大きい組織になっているはずだが、ここでは確認可能な国内ベースの数字に絞って扱っている。

海外展開のタイミングは登記には現れないが、プレスリリースで公表されている:

  • 2022年4月:ベトナム(CADDi VIETNAM CO., LTD.)
  • 2022年11月:タイ(CADDi (Thailand) Co., Ltd.)
  • 2023年1月:米国(CADDi Co., Ltd.)

「製造業のサプライチェーン」を扱う以上、グローバルな供給網との接続点は事業の本筋に近い。日本の製造業の発注先がアジアに広がり続ける構造変化と、CADDiの海外拠点展開のタイミングは符号している。

8. PR月次と時系列で見る「3つのフェーズ」

最後に、プレスリリースの月次件数を、登記上の主要イベントと並べて眺める。

PR月次件数(2018-12〜2026-05)と主要な資本・上場準備イベント

時系列でPRの発信ペースを見ると、CADDiの事業は明確に3つのフェーズに分かれている:

  • 2018年12月〜2021年7月:受発注プラットフォーム期。月1〜3件のリリースが中心で、テーマは「製造業の受発注プラットフォームとしてのCADDi」の認知拡大と、シリーズAの案件報告。
  • 2021年8月〜2024年1月:Drawer/Quoteへの事業拡張期。シリーズBの発表後、AIドラレコ風ではなく「製造業データに対するAI適用」へとPRのトピックがシフトする。月3〜5件の発信。
  • 2024年2月〜現在:製造業AIデータプラットフォーム期。400倍株式分割を皮切りに、PRが月5〜20件と急増。2026年3月の20件は突出しており、「CADDi UNLEASH 2026」など自社主催イベント・サービス拡張・調達調査レポートのリリースが集中している。

特に2026年1月以降の月8〜20件ペースは、上場準備の最終局面に近づきつつあるか、あるいはAIデータプラットフォーム企業としての存在感を獲得することに大きく投資している段階か、いずれかの解釈が成り立つ。公告方法は2026年5月時点で「官報により行う」のままで、上場会社・上場準備会社に多い電子公告への切替はまだ確認できない。

9. ガバナンスの輪郭 ─ 取締役会設置会社、監査役3名

登記上の機関設計は 取締役会設置会社、監査役会非設置(監査役3名) という構成。現任の役員構成は以下の通り:

  • 代表取締役 加藤勇志郎氏(マッキンゼー出身の創業者、現任)
  • 取締役(業務執行・社外含む):3名(うち1名は共同創業者)
  • 監査役:3名(常勤監査役、社外監査役、会計関連バックグラウンドの監査役)

監査役のうち2名は2024年7月および8月に就任しており、シリーズC追加クローズ(2025年4月)の前段で監査体制を厚くしている動きが見える。これは、シリーズCの規模感(累計100億円超)の調達を受け入れる際の投資家側の要請、あるいは上場準備に向けた社内ガバナンスの整備として標準的な動きである。

なお、社外取締役の1名は2023年6月に就任した「グローバルブランド系」の経歴を持つ取締役で、もう1名はVC関連のキャピタリストである。投資家から社外取締役を受け入れている点は、シリーズB〜C投資家との関係性を含めた標準的な構成である。

10. 結論 ─ 「累損60億超」と「調達250億超」の併走から見えること

ここまで確認してきたCADDiの事実関係を、論点に絞って整理する。

第一に、決算公告4期分で確認できる当期純損失の累計は約116億円、その間に登記から復元した株式調達の累計は約258億円調達の半分が運転資金・人件費・投資として消費されていることが、公告と登記の対応関係から見える。先行投資型のSaaS/プラットフォーム事業として、これ自体は何も異常ではない。

第二に、「増資→減資1億円」のルーティンは、未上場期間に資本金1億円以下を維持するための定石。これは上場時には解除される性質の構造であり、現時点でこのルーティンが継続していること自体が、「最終局面に入っているが、まだ上場一歩前ではない」という時間軸を示している。

第三に、2025年4月の直近ラウンド(C種優先株式追加 + CC種優先株式新設、計42億円エクイティ + 51億円デット)は、累計調達250億円の上に乗ってきた最新の資本注入であり、これを基準に全株式数を基準にした時価総額を試算すると約706億円に達する。これは登記の払込金額に基づく自前の試算値で、公表されている調達額との検算も整合している。

第四に、事業の重心は明確に「受発注プラットフォーム」から「製造業AIデータプラットフォーム」へと移っている。2025年4月の商標一括出願(34件)と、「CADDi Drawer」「CADDi Quote」のプロダクト名を中心とした商標ポートフォリオは、その方向性をはっきり示している。

論点として残るのは、FY2025(2025年9月期)の決算公告で「単独損益」がどう動くかである。FY2024の-60.49億の純損失を起点に、その後の2025年Q1ラウンド(エクイティ42億 + デット51億)が反映されるはずだが、調達はキャッシュフローの話であり、損益は別。AIデータプラットフォームのSaaS収益で、固定費を上回るペースで売上が伸びているかが問われる局面である。

製造業のサプライチェーンに、図面・見積・データの「横串」を通すという挑戦は、参入から7年が経過した今も、決算と登記の数字の上では「先行投資の終わり」がまだ確定的に見えていない。次の決算公告(FY2025、2025年9月期)と、その後の数年で組織と収益のいずれかが踊り場を抜けるかが、登記情報・公告情報・公開IRから読み取れる「次に見るべき節目」になる。


計算方法に関するメモ(本記事独自の事項)

  • B種優先株式とBB種優先株式の関係:B種払込金額(236,335円)に対しBB種払込金額(69,718円)は約3割の水準。シリーズBの公表額80.3億円と、B種+BB種の登記ベース試算値88.4億円との約8億円の乖離は、BB種を「外部新規投資家からの調達」に含めずに集計したか、あるいは公表ベースが端数調整された結果と無理なく一致。
  • 第8回新株予約権はC種優先株式を目的とする:通常の新株予約権が普通株式を目的にするのに対し、第8回(22万9,357個、行使価額654円)はC種優先株式を目的にしている。これはおそらく直近ラウンドの一部投資家へのプリエンプティブライト相当の権利として設計されたものだが、時価総額計算では普通株式と同じく1株として加算している。
  • 第3回新株予約権の個数履歴:5,120個 → 4,120個へと11回にわたり段階的に減少しており、退職に伴う失効が反映されている。「現存ベース」で4,120個を採用した。
  • 「シリーズC」の呼称:登記上のC種優先株式は2023年3月(初回クローズ)、2023年7月(2回目クローズ)、そして2025年4月(追加発行とCC種新設)と、複数回に分けて発行されている。2025年4月の追加クローズを「シリーズCのファイナルクローズ」と呼ぶか「シリーズD相当」と呼ぶかは観点による。登記の事実関係に即して「C種優先株式の追加発行 + CC種優先株式の新設(2025年4月、直近ラウンド)」と表記した。
  • 株式分割の400倍換算:A種・B種・BB種優先株式の払込金額(29,523円、236,335円、69,718円)は移記前の数字で、2024年2月1日の400倍株式分割を反映すると、それぞれ73.81円、590円、174.30円相当となる(登記の剰余金配当条項にも分割後の値として590円等が併記されている)。

ファクトシート

  • 法人番号:6010001187623
  • 本店所在地:東京都台東区浅草橋4丁目2番2号
  • 設立:2017年11月9日
  • 決算月:9月
  • 代表取締役:加藤勇志郎
  • 公告方法:官報により行う
  • 発行可能株式総数:2億2,197万8,311株(2025年3月24日変更)
  • 発行済株式の総数:1億0,087万9,416株(2025年4月11日時点)
  • 資本金:1億円(2025年9月30日変更)
  • 海外拠点:ベトナム、タイ、米国