GO株式会社、5期で売上20倍・最終赤字87億から黒字転換 ─ JapanTaxiからIPO申請までの10年
GO株式会社(旧JapanTaxi→Mobility Technologies)の決算公告5期を分析。売上は14.5億→290.4億と5期で約20倍、FY2022の最終赤字87億円からFY2024に+15.4億円の黒字へ転換した。ゴールドマン・サックスが単独で100億円を引き受けたD種優先株式、100倍株式分割、GOドライブ/GOジョブの新設分割を経て、2026年5月にIPOへ向けた有価証券届出書を提出。

この記事のポイント
- 売上は5期で 14.5億→290.4億 と約20倍、FY2024 で +15.36億円の黒字に転換
- D種優先株式 累計 106.63億円調達(2023年5月のファーストクローズはゴールドマン・サックス単独で100億円)
- 2025年に GOドライブ/GOジョブ を新設分割し3層構造へ。2026年5月に有価証券届出書を提出
本記事の前提 GO株式会社(旧 株式会社Mobility Technologies、旧 JapanTaxi株式会社、法人番号 2011501015896)について、 (1) 決算公告 5期分(FY2016〜FY2024、官報および日刊工業新聞) 、 (2) 履歴事項全部証明書(2026年5月18日取得) 、 (3) PR TIMES の公開プレスリリースおよび EDINET 公開資料 計361件(2017年3月〜2026年5月) 、 (4) 厚生労働省 健康保険・厚生年金保険 適用事業所検索の被保険者数 23点 、 (5) 特許庁 J-PlatPat の知財データ 237件 を相互参照し、第三者視点で構成した分析記事です。数字は決算公告の「単独・無連結」ベース。
1. まず、決算公告5期の見出し数字 ─ 売上20倍、FY2024でようやく+15.4億の黒字へ
GO株式会社が官報・日刊工業新聞に掲載した決算公告5期分を時系列で並べると、典型的な「投資先行型→売上立ち上げ→黒字化」のフェーズ転換が読み取れる。

各期の単独・無連結ベースの数字は以下のとおり。
| 期 | 商号 | 売上 | 純利益 | 純資産 | 総資産 | 負債 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| FY2016(2017年5月期) | JapanTaxi | 非開示 | -1.16億 | -0.87億(債務超過) | 14.35億 | 14.44億 |
| FY2017(2018年5月期) | JapanTaxi | 15.44億 | -8.18億 | 83.30億 | 107.12億 | 23.81億 |
| FY2022(2023年5月期) | Mobility Technologies → GO | 144.60億 | -86.98億 | 156.33億 | 373.23億 | 216.90億 |
| FY2023(2024年5月期) | GO | 216.80億 | -29.74億 | 133.22億 | 428.58億 | 295.36億 |
| FY2024(2025年5月期) | GO | 290.44億 | +15.36億 | 150.69億 | 519.77億 | 369.08億 |
5期で 売上は 14.5億円 → 290.4億円へ約20倍 に拡大した。一方、純利益は FY2016 の債務超過からの再起を経て、FY2017 〜 FY2023 にかけて 赤字幅が最大-87億円 にまで膨らんだのち、 FY2024 で +15.36億円の黒字に転じた 。FY2017 と FY2022 の間に公告データを欠くため、本記事は 5期の不連続系列 として扱う。


自己資本比率は FY2016 の -0.6%(債務超過) から、FY2017 の 77.8% への急回復、その後 FY2022〜FY2024 にかけて 42% → 31% → 29% と低下している。総資産が 14.4億 → 520億へと36倍に膨らむ過程で、株主資本に対して負債側(タクシー事業の運転資本・調達と推定)が大きく積み上がった構造として観察できる。
2. 「JapanTaxi」「Mobility Technologies」「GO」 ─ 登記簿が記録する商号3変遷の血統
GO株式会社の法人格そのものは、登記簿の初期コンテキストによれば 1977年8月17日 設立 の古い法人格である。一方、対象とする「タクシー配車アプリ事業」の実体は2015年以降の動きで、登記には商号と本店の変遷が連続して記録されている。
商号と本店の履歴
| 日付 | 商号 | 本店 | 主要イベント |
|---|---|---|---|
| 2015-10-05 | JapanTaxi株式会社 | 東京都北区浮間 | 登記簿の起点 |
| 2016-03-10 | JapanTaxi株式会社 | 東京都千代田区紀尾井町 | 本店移転 |
| 2020-04-08 | 株式会社Mobility Technologies | 千代田区紀尾井町 | 商号変更 |
| 2021-02-02 | 株式会社Mobility Technologies | 東京都港区六本木(住友不動産六本木グランドタワー) | 本店移転 |
| 2023-04-03 | GO株式会社 | 港区六本木 | 商号変更 |
| 2023-12-22 | GO株式会社 | 東京都港区麻布台一丁目3番1号 麻布台ヒルズ森JPタワー | 本店移転(現在地) |
10年で商号は JapanTaxi → Mobility Technologies → GO の3段階を経ている。
商号変更のトリガーとなった事業統合
2020年4月の Mobility Technologies への商号変更は、2020年2月のプレスリリースに紐づく。 「日本交通ホールディングス、DeNA タクシー配車アプリ等に関する事業を統合」 (2020-02-04)として公表された事業統合が、その時点での法人格(旧JapanTaxi)の中に「DeNA タクシー配車事業」を受け入れて、新たな商号で再スタートする経緯である。日本交通グループ(川鍋一朗氏代表取締役会長を擁する)と DeNA の配車事業(旧 MOV)の合流が、商号変更の実体である。
2023年4月の「GO株式会社」への変更は、2023年3月1日に公表された「 株式会社Mobility Technologies、2023年4月1日より『GO株式会社』へ社名変更 」のリリースで予告されたもの。商号と、提供アプリのブランド名(『GO』)を統一する動きとなった。
事業目的の構成
事業目的(定款)は、登記の最新変更時点で次のような多角的な構成になっている:旅客自動車運送事業の経営・管理・運営、配車プラットフォームの開発・運営、自動車・ドライブレコーダー関連の機器販売、ソフトウェアの開発、広告業、有価証券の取得・保有(投資業)、不動産事業、決済代行業など。「タクシー配車アプリ」を起点に、決済(GO Pay)、車載機器(DRIVE CHART)、人材(GOジョブ)、広告(タクシー車内サイネージ)へと広がる多角化の素地が、登記から読み取れる。
3. 資本政策 ─ 4種優先株式と直近ラウンド(D種優先株式)106.63億円
履歴事項全部証明書には、 普通株式・A種・B種・C種・D種 の4種優先株式が登記されている。発行済株式の履歴を主要時点で並べると、次のとおり。
| 年月日 | 普通株式 | A種 | B種 | C種 | D種 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021-06-30 | 400,000 | 12,000 | 109,000 | 191,318 | ─ | 712,318 |
| 2023-05-19 | 400,000 | 12,000 | 109,000 | 191,318 | 60,468 | 772,786 |
| 2023-11-15 | 400,000 | 12,000 | 109,000 | 191,318 | 61,468 | 773,786 |
| 2023-11-30 | 400,000 | 12,000 | 109,000 | 191,318 | 64,168 | 776,486 |
| 2023-12-28 | 400,000 | 12,000 | 109,000 | 191,318 | 64,478 | 776,796 |
| 2026-01-22 | 776,796 | ─ | ─ | ─ | ─ | 776,796 |
| 2026-02-20 | 77,679,600 | ─ | ─ | ─ | ─ | 77,679,600 |
最後の2行が特に重要な動きだ。
- 2026年1月22日 :A種・B種・C種・D種の 4種優先株式が、すべて普通株式に一斉転換 された。776,796株すべてが普通株式に集約された
- 2026年2月20日 : 全株式について100倍の株式分割 が実施され、発行済株式総数は 7,767万9,600株 へと一気に拡大した
「優先株式の普通株への一斉転換」「100倍株式分割」はいずれも、上場準備の決定的なステップとして実務上知られた手順である。発行可能株式総数も同時期に 310万7,000株 → 3億1,070万株 へと100倍に変更されており、登記の数字の動きが整合している。
資本金推移 ─ 直近ラウンド直後に1億円まで減資する税務戦略

| 日付 | 資本金 | 出来事 |
|---|---|---|
| 2022-05-31 | 1.00億円 | (減資後の状態) |
| 2023-05-19 | 50.99億円 | D種優先株式 ファーストクローズ |
| 2023-05-30 | 1.00億円 | 減資(51 → 1億) |
| 2023-11-15 | 1.83億円 | D種追加(フィデリティ・両備グループ) |
| 2023-11-30 | 4.06億円 | D種追加 |
| 2023-12-28 | 4.32億円 | D種追加(フリークアウト) |
| 2024-05-30 | 1.00億円 | 減資(4.3 → 1億) |
増資の直後に資本金を1億円まで減資するパターンは、資本金が1億円を超えると発生する(外形標準課税、法人住民税の均等割の拡大、一部の中小企業税制の喪失)コストを抑えるための税務戦略として、スタートアップで広く使われる手順だ。事業の縮小ではなく、エクイティで集めた資金を資本準備金・その他資本剰余金に振り替えることで、純資産(株主資本)の総額は維持されている。
D種優先株式の発行(直近ラウンド) ─ ゴールドマン・サックス 100億円と、追加クローズ
GO株式会社の登記簿には A種・B種・C種・D種の4種優先株式が記録されており、本記事が扱える範囲では D種優先株式の発行(2023年5月〜2023年12月)が直近の株式発行ラウンド にあたる。A種・B種・C種優先株式は2023年5月以前にすでに発行済みで、JapanTaxi 時代を含む過去の累計調達(プレスリリースベースで2020年時点で「累計266.25億円」と公表)を裏付ける株主構成となる。本記事は登記情報から計算可能な D種優先株式の発行(直近ラウンド) の単価と時価総額を取り扱う。
D種優先株式の発行履歴と、資本金の増えた額を突き合わせると、各回の1株払込単価が出る。
| 回 | 日付 | 新規D種株 | 資本金増 | 払込額(=資本金増×2) | 1株単価 |
|---|---|---|---|---|---|
| ファースト | 2023-05-19 | 60,468 | 50.00億 | 100.00億円 | 165,375円 |
| 追加1(フィデリティ・両備) | 2023-11-15 | 1,000 | 0.83億 | 1.65億円 | 165,375円 |
| 追加2 | 2023-11-30 | 2,700 | 2.23億 | 4.47億円 | 165,375円 |
| 追加3(フリークアウト) | 2023-12-28 | 310 | 0.26億 | 0.51億円 | 165,375円 |
| 累計 | 64,478 | 53.32億 | 106.63億円 | 165,375円 |
2023年5月のファーストクローズの試算 100.00億円は、2023年5月24日のプレスリリース「 GO株式会社、ゴールドマン・サックスより100億円の資金調達を完了 」と完全に一致する。追加クローズ(フィデリティ・インターナショナル+両備グループ、フリークアウト・ホールディングス)を含めた D種優先株式の発行 累計払込は 106.63億円 で、いずれも同一単価で発行されたとみられる(資本金登記の端数による微差は 1株165,185〜167,742円のレンジに収まる)。
100倍株式分割(2026-02-20)を反映すると、D種単価は 1,654円/株 に換算される。
会社全体の時価総額 ─ 直近ラウンド時点(2023年12月)で約1,428億円

D種優先株式の発行 最終クローズ時点(2023年12月)の 全株式数(発行済 + 存続している新株予約権) に、D種払込単価を掛けると、次のスナップショットになる。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 直近ラウンド時点(2023年12月、D種優先株式 最終クローズ後) | |
| 発行済株式(普通株 + A〜D種優先株式) | 776,796 株 |
| 存続している新株予約権(現存ベース、概算) | 約 86,500 株 |
| 全株式数 | 約 863,300 株 |
| 1株単価(D種払込単価) | 165,375 円 |
| 会社全体の時価総額 | 約 1,428億円 |
新株予約権は、現行の履歴事項全部証明書(2026年5月取得)に 第3回から第15回までと第7回の2 の合計14シリーズが登記されている。最新個数の現存ベース合計が 8,647,867株(100倍株式分割の付与株式数調整反映後)。直近ラウンド時点での残数は、各シリーズの発行日が登記上明示されていないシリーズが含まれるため、最新値を100倍分割前のベースに揃えた 約86,500株 として概算した。
この値は 登記上の払込単価に基づく参考値 で、IPO 申請後に算定される公開価格・市場評価額とは別の数値である。また、2026年2月20日の100倍株式分割により、現在の発行済株式は 7,767万9,600株 (=776,796×100)となっている。
新株予約権(ストックオプション)14シリーズ
履歴事項全部証明書の新株予約権欄には、 第3回から第15回までと第7回の2 (合計14シリーズ)が登記されている。主要シリーズの最新個数(履歴上の最終変更後の値)は次のとおり。
| 回 | 最新個数 | 1個あたり付与株式数 | 換算株式数 |
|---|---|---|---|
| 第3回 | 22,000 | 100 | 2,200,000 |
| 第4回 | 19,348 | 100 | 1,934,800 |
| 第5回 | 75 | 100 | 7,500 |
| 第6回 | 3,815 | 100 | 381,500 |
| 第7回 | 7,763 | 100 | 776,300 |
| 第8回 | 32,391 | 1 | 32,391 |
| 第9回 | 6,446 | 100 | 644,600 |
| 第10回 | 8,676 | 1 | 8,676 |
| 第11回 | 2,827 | 100 | 282,700 |
| 第12回 | 335 | 100 | 33,500 |
| 第13回 | 12,956 | 100 | 1,295,600 |
| 第14回 | 7,953 | 100 | 795,300 |
| 第15回 | 1,000 | 100 | 100,000 |
| 第7回の2 | 1,550 | 100 | 155,000 |
| 合計 | 8,647,867 |
各シリーズの「最新個数」は、登記簿に記載された変更履歴の最終値を採用している。退職・個別放棄・行使済で減った分を反映した 現存ベース である。第8回と第10回は、付与株式数が「1株」のまま登記されているため、そのまま集計した。
4. 経営体制 ─ IPO準備の外形シグナルが2023年に集中した
履歴事項全部証明書の現在の役員欄から、現任の取締役会・監査等委員・会計監査人の構成が把握できる。 個人名を実名で記載するのは、現任の代表取締役のみ として、以下にまとめる。
- 代表取締役:中島宏氏 (Mobility Technologies 時代からの代表)
- 代表取締役:川鍋一朗氏 (日本交通グループ系、JapanTaxi 時代からの実質的な創業者)
- 取締役(監査等委員) :3名(2023年8月・2023年11月就任)
- 会計監査人 :EY新日本有限責任監査法人(2023年8月25日設定)
監査等委員会+会計監査人の設置 ─ 上場準備の中核
履歴事項全部証明書には、 2023年8月25日付で 3つの重要なガバナンス強化が同時に登記されている。
- 監査等委員会設置会社 への移行
- 会計監査人設置会社 への移行(EY新日本有限責任監査法人)
- 取締役(監査等委員)3名 の新任
監査等委員会設置会社への移行と、EY新日本(上場準備中企業の主任会計監査人として国内有数の実績を持つ大手監査法人)の設置は、グロース市場・スタンダード市場上場予定企業に共通する典型的なガバナンス整備パターンである。これらが D種優先株式の発行 ファーストクローズ(同年5月)の3ヶ月後 に一斉に登記されている点が、直近ラウンドから上場準備への移行の意思を裏付ける根拠となる。
公告方法の変更 ─ 日刊工業新聞 → 電子公告
決算公告の媒体も、IPO 直前期に変更されている。
- 設立来 :日刊工業新聞に掲載
- 2026年2月20日 : 電子公告(
https://goinc.jp/)に変更 。事故等で電子公告ができない場合は日本経済新聞に掲載する旨を併記
電子公告への移行は、上場会社・上場準備会社に多い変更で、決算公告コストの圧縮と、公告内容の閲覧性向上の両立を狙う動きとして整理される。同日に 100倍株式分割と発行可能株式総数の100倍変更 も登記されており、2026年2月20日が「上場準備の最終調整日」として複数イベントが集中している。
そして、有価証券届出書(新規公開時)
直近では、 2026年5月14日 に EDINET に対して「 有価証券届出書(新規公開時) 」および「臨時報告書」が提出されている。これは新規公開(IPO)に向けて、金融商品取引法に基づく開示書類が正式に提出された段階を意味する。
このタイミングまでに、登記の側で:
- 2023年5月:D種優先株式 ファーストクローズ 100億円
- 2023年8月:監査等委員会・会計監査人 EY 設置
- 2023年12月:本店を麻布台ヒルズへ移転
- 2026年1月:優先株式の普通株式への一斉転換
- 2026年2月:100倍株式分割/公告方法を電子公告へ/発行可能株式総数の100倍変更
という一連のステップが、計画的に積み上がってきている。
5. 採用と発信 ─ 被保険者650人前後、2分社後の組織

厚生労働省の被保険者数で確認できる従業員数は、月次データ23点(2024年6月〜2026年5月)で 約575〜680人 のレンジで推移している。2024年6月の575人から2025年中盤の680人へと約100人増加した後、2025年10月にかけて 680人台から 620人台へ約50人の減少が記録されており、後者は同年8月1日・9月1日に実行された GOドライブ株式会社・GOジョブ株式会社への新設分割 (被分割事業の担当者がそれぞれの新法人に転籍)と無理なく一致なタイミングである。
プレスリリース+EDINET 計361件
公開された発信は、PR TIMES と EDINET を合わせて 2017年3月〜2026年5月の 9年間で計361件 。月平均 約3件、ピーク月では月8件のリリースを出している。

発信のトピックは時系列で大きく次のフェーズを描いている:
- 2017〜2019年 :JapanTaxi 時代。タクシーアプリ『JapanTaxi』のアプリ機能拡張・大手チェーンとの提携・調達のリリースが中心
- 2020年〜2022年 :Mobility Technologies 時代。事業統合直後の体制整備、AI ドラレコ『DRIVE CHART』の累計2.5万〜4万台導入のリリース
- 2023年〜2024年 :GO時代。商号変更・直近ラウンド100億調達・TVCMシリーズ(竹野内豊さん、吉田羊さん、イモトアヤコさんなど起用)・法人向け『GO BUSINESS』累計5,000〜10,000社突破
- 2025年〜2026年 :2子会社の新設分割(GOドライブ/GOジョブ)、『GO BUSINESS』累計15,000社突破、有価証券届出書の提出
主要な資金調達のリリースを抜き出すと:
- 2018-02:JapanTaxi、未来創生ファンドから10.5億円、 累計91.5億円
- 2018-09:JapanTaxi、 カカオモビリティから15億円
- 2020-07:Mobility Technologies、NTTドコモを含む3社との資本業務提携で 2020年の累計調達額が最大266.25億円
- 2023-05 :GO、 ゴールドマン・サックスから100億円 (D種優先株式 ファーストクローズ)
- 2023-10:GO、フィデリティ・インターナショナル および 両備グループから調達
- 2023-12:GO、フリークアウト・ホールディングスから調達
- 2024-03:GO、 総額80億円のシンジケート・コミットメントライン契約
- 2025-06:GOジョブ、シリーズAラウンドで4社から 総額10.5億円を資金調達予定
6. 知財 ─ タクシー配車・運転管理・自動運転で特許152件
知財の累計は 237件(特許152件・商標73件・意匠12件) 。配車・運転管理・自動運転データといった中核技術を網羅的に押さえた、モビリティ系プラットフォームとしては相当な規模の知財ポートフォリオである。

特許の出願は 2018〜2020年と2024年に厚いピーク を描いている。前者は JapanTaxi 〜 Mobility Technologies の体制移行期に「配車ロジック」「乗車予測」「経路最適化」「ドラレコ画像認識」といったタクシーアプリの中核機能の特許化が進められた時期、後者は GO 時代に「配車支援」「自動運転データ」「決済」など隣接領域への拡張が進んだ時期と一致する。
直近の出願タイトルからは、商号変更後のブランドポートフォリオが見える:
- 商標: 「GOエコノミー」「GO Logi」「GOジョブ」「GOドライブ」「GO運転管理」「スキマドライバー」 「MO\MO\A/モモエース」など
- 特許: 配車管理装置/タクシー情報処理/情報処理装置/精算システム など、配車・決済・車両管理の基礎技術
特許の総数152件のうち登録済みが85件で、登録率は約56%。出願→登録の確実性が一定水準で確保されている。
7. 「コンパウンド・モビリティ」 ─ 2025年に2社を新設分割
GO株式会社が2025年に行った 2件の新設分割 は、登記簿の「会社分割」欄に明示で記録されている。
(1) GOドライブ株式会社 ─ DRIVE CHART事業の分社(2025-08-01)
令和7年8月1日 東京都港区麻布台一丁目3番1号 麻布台ヒルズ森JPタワー GOドライブ株式会社に分割
新設分割の対象は、 「スマートドライビング事業」および同事業で収集したデータを活用した「道路情報の自動差分抽出事業」 と公告に記載されている(2025年6月6日の新設分割公告より)。事業の中核は、AIドラレコ『DRIVE CHART』 ─ プレスリリース上で累計2.5万→3万→4万台と段階的に拡大していたサービス。
PR では2025年5月26日付で「 GOドライブ株式会社を設立。事故削減支援『DRIVE CHART』などを承継。ゼンリン、東京センチュリーが参画し事業連携 」と公表されており、地図情報(ゼンリン)・リース/ファイナンス(東京センチュリー)という相補的なパートナーを巻き込んだ独立会社の体制が組まれた。
(2) GOジョブ株式会社 ─ ドライバー人材プラットフォームの分社(2025-09-01)
令和7年9月1日 東京都港区虎ノ門4-1-1 神谷町トラストタワー23F GOジョブ株式会社に分割
GOジョブ株式会社(法人番号は別途)は、 ドライバー人材採用プラットフォーム を担う子会社。PR では2025年6月27日付で「 シリーズAラウンドで4社から総額10.5億円を資金調達予定 」と公表されており、設立と同時に第三者資本を入れる体制となっている。
コンパウンド型の事業ポートフォリオ
これら2件の新設分割により、GO株式会社のグループ構成は (a) GO本体:タクシー配車アプリ『GO』+法人向け『GO BUSINESS』+GO Pay (b) GOドライブ株式会社:DRIVE CHART+自動運転データ (c) GOジョブ株式会社:ドライバー人材プラットフォーム という3層構造に再整理された。3事業ともモビリティ領域でつながりつつ、損益・資本政策・パートナー陣を分けて運営できる体制を、IPO 申請の前段で構築している。
8. 資本・組織・ガバナンスの主要イベント年表
ここまでの登記簿・公告・プレスリリース・EDINET 開示から抽出した主要イベントを、2015年から2026年5月までの年表に並べると、以下のようになる。

- 2015年10月:JapanTaxi株式会社(北区・登記簿の起点)
- 2016年3月:本店を千代田区紀尾井町へ移転
- 2018年2月: トヨタ自動車と基本合意 (タクシー向けサービス共同開発)
- 2020年2月: 日本交通HD と DeNA、タクシー配車アプリ事業を統合
- 2020年4月: 株式会社Mobility Technologies 商号変更
- 2021年2月:本店を港区六本木へ移転
- 2023年4月: GO株式会社 商号変更
- 2023年5月: D種優先株式 ファーストクローズ 100億円(ゴールドマン・サックス)
- 2023年8月: 監査等委員会設置会社・会計監査人(EY新日本)設置
- 2023年12月:本店を麻布台ヒルズ森JPタワーへ移転
- 2025年8月: GOドライブ株式会社 新設分割 (DRIVE CHART事業)
- 2025年9月: GOジョブ株式会社 新設分割 (ドライバー人材、シリーズA 10.5億)
- 2026年1月: 優先株式の普通株式への一斉転換
- 2026年2月: 100倍株式分割+公告方法を電子公告へ変更
- 2026年5月: 有価証券届出書(新規公開時)提出
商号変更3回、本店移転4回、優先株式の発行と一斉転換、株式分割、子会社2社の新設分割、有価証券届出書の提出という主要ステップが、登記と公告のいずれにも無理なく記録されている、というのが本記事を通じて確認できた事実関係である。
9. それでも残る論点(FY2025以降に向けて)
FY2024(2025年5月期)時点で読み取れる 論点 を、3つ整理する。
(a) 黒字幅の継続性
FY2024 の黒字 +15.36億円は、売上 290.44億円に対して当期純利益率 約5.3%。 「次の決算公告(FY2025)で売上の伸びと黒字幅を維持できるか」 が、登記ベースの数字と並んで読者・市場が注視する論点になる。広告事業(タクシー車内サイネージ)・法人向け『GO BUSINESS』(累計15,000社突破)・自動運転データ事業(GOドライブ側)といった付加価値の高い分野の比率が、利益率に直結する。
(b) 2子会社(GOドライブ/GOジョブ)の独立損益
決算公告は単独・無連結のため、2025年8月・9月に新設分割した2子会社の損益はGO本体の数字には反映されない。 3社の連結ベースの数字を有価証券報告書で開示する段階 で、グループ全体の利益構造が明らかになる。特に DRIVE CHART 事業(GOドライブ)の固定費負担と、ドライバー人材事業(GOジョブ)の成長フェーズを、3社それぞれの位置づけで読み解く必要がある。
(c) 負債側の構造と運転資本
総資産 519.77億円に対して負債 369.08億円(自己資本比率 29%)という構造は、タクシー配車プラットフォーム事業に伴う運転資本(決済代行に係る預り金・未払金)の構造を反映しているとみられる。 有価証券報告書(上場後)の注記での内訳開示 が、この読み方の正誤を確定させる。
3点いずれも、現時点で経営に重大な問題があるという指摘ではなく、FY2025 以降の決算公告および有価証券報告書で観察される論点として位置づく。
10. 計算方法(Methodology)
時価総額の基本的な算定ルール(資本金増×2、新株予約権を含む全株式数の現存ベース集計)は本記事末尾の共通注記にまとめている。ここではGO株式会社固有のメモを残す。
- 検証 :D種ファーストクローズの試算 100.00億円が、2023年5月24日のプレスリリース「ゴールドマン・サックスより100億円の資金調達を完了」と完全に一致した。D種累計払込 106.63億円は、その後のフィデリティ・両備グループ・フリークアウトHD からの調達と一致する
- 新株予約権の現存ベース集計 :履歴事項全部証明書から第3〜第15回および第7回の2 の14シリーズの最新個数を1個ずつ抽出。第8回・第10回は1個あたり付与株式数が登記上「1株」のまま記録されており、そのまま集計した。100倍株式分割(2026-02-20)の対応として、各シリーズの付与株式数が「1株→100株」に調整されているシリーズについては、調整後の値で換算している
- 直近ラウンド時点の SO 概算 :D種優先株式 最終クローズ(2023年12月)時点での新株予約権残数は、各シリーズの発行日が登記上明示されていないシリーズが含まれるため、最新値(8,647,867株)を100倍分割前のベースに揃えた約86,500株として概算した
- A種〜C種は本記事のスコープ外 :A種・B種・C種優先株式の発行ラウンドはこの記事の対象外。これらは2023年5月以前の登記時点で既発行であり、JapanTaxi 時代を含む過去の累計調達(プレスリリースベースで2020年時点で「累計266.25億円」と公表)の一部を構成する
- 本記事はIPO申請中の同社に関する公開情報を整理したもので、有価証券の取得勧誘や公開価格の予想を意図するものではない
ファクトシート
- 法人名 :GO株式会社(旧 株式会社Mobility Technologies、旧 JapanTaxi株式会社)
- 法人番号 :2011501015896
- 設立 :1977年8月17日(登記上の法人格設立日)
- 本店所在地 :東京都港区麻布台一丁目3番1号 麻布台ヒルズ森JPタワー(2023年12月22日 移転登記)
- 代表取締役 :中島宏/川鍋一朗
- 決算月 :5月
- 資本金(直近 2024年5月30日 登記) :1億円
- 発行済株式(2026年2月20日時点) :普通株式 77,679,600株(100倍株式分割後)
- 会計監査人 :EY新日本有限責任監査法人
- 公告方法 :電子公告(公告先URLは登記簿記載)、事故等の場合は日本経済新聞
- EDINETコード :E41784
本文で言及した企業