助太刀、4期連続の債務超過 — それでも赤字は1/10へ。登記簿と決算公告で追う、建設DXの再起動
本日(2026年5月29日)開示の助太刀 2026年2月期決算公告を含む全8期分の数字と登記簿(旧称「東京ロケット」・2021年金融子会社合併・減資サイクル)、パナソニックHD提携など、建設DXの「再起動」を読み解く。

この記事のポイント
- 元の社名は「株式会社東京ロケット」、2021年末に金融子会社(助太刀ファイナンシャルサービス)を本体に吸収合併
- 種類株式 A・B・C・D の4シリーズ、1株単価は2019年からほぼ横ばい(評価額は実質フラット)
- 社員数は2年で 133人 → 112人へ減少、一方で PR は2024年以降に明確に加速。パナソニックHD との提携が転機
本記事の前提 株式会社助太刀(旧・株式会社東京ロケット、法人番号 3013301040322)について、 本日2026年5月29日に開示された2026年2月期 決算公告 を含む全8期分の公告、 登記簿(履歴事項全部証明書) 、 公開IR・公開PR 、 知財DB を相互参照し、第三者視点で構成した分析記事です。数字は決算公告の「単独」ベース。売上高はB/S+P/L方式の公告のため非開示です。
1. 本日掲載された決算の見出し数字 — 厳しい、けれど
本日(2026年5月29日)開示された 2026年2月期 を含めると、決算公告から取れる助太刀の数字は次のとおりだ。
| 期 | 当期純損益 | 純資産 | 総資産 | 負債 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2019/2 | ▲4.5億 | 0.9億 | 1.3億 | 0.4億 | 71.1% |
| 2020/2 | ▲5.3億 | 2.6億 | 3.3億 | 0.7億 | 78.5% |
| 2021/2 | ▲4.2億 | 3.4億 | 8.0億 | 4.6億 | 42.2% |
| 2022/2 | ▲9.8億 | 4.1億 | 10.9億 | 6.8億 | 37.7% |
| 2023/2 | ▲17.7億 | ▲7.6億 | 8.7億 | 16.3億 | ▲86.9% |
| 2024/2 | ▲8.7億 | ▲11.3億 | 6.0億 | 17.3億 | ▲187.9% |
| 2025/2 | ▲2.7億 | ▲2.0億 | 15.8億 | 17.8億 | ▲12.6% |
| 2026/2 | ▲1.7億 | ▲3.7億 | 13.9億 | 17.6億 | ▲26.8% |

正直に書く。助太刀は4期連続で債務超過である。 純資産は2023年2月期に ▲7.6億円へ転落し、それから2026年2月期まで一度もプラスに戻っていない。
ただし、同じ表をもう一度よく見てほしい。当期純損失は ▲17.7億 → ▲8.7億 → ▲2.7億 → ▲1.7億 と、3年で 約1/10 まで縮小している。 債務超過は事実だが、赤字の絶対額はむしろ「止血」が進んでいる ——これが本決算の最大のメッセージだ。

自己資本比率も、2024/2期の ▲188% という底から、2025/2期 ▲13%、2026/2期 ▲27%。直線的な回復ではないが、最悪期からは脱した。
2. 「助太刀」という会社の血統 — 元の社名は「東京ロケット」
設立時の商号は「株式会社東京ロケット」
登記簿によれば、設立は 2017年3月30日 、当初の商号は 株式会社東京ロケット 。2018年3月7日に 株式会社助太刀 へ商号変更している。実際、2017年8月のシード調達プレスでは「 株式会社東京ロケットが運営する建設業の現場と職人をつなぐアプリ『助太刀くん』 」という表現で出ており、プロダクト名(助太刀)に会社名を寄せていった軌跡が登記から読める。
本店は東京都新宿区西新宿。決算期は2月。
2021年末、金融子会社を本体に吸収合併
登記簿には、見過ごせない組織再編が1件残っている。
2021年12月28日:株式会社助太刀ファイナンシャルサービス(法人番号 9011001136757)を吸収合併(合併解散)
この子会社は 2020年11月に渋谷区に設立されており、わずか1年強で本体に吸収された。建設業向けの ファクタリング・ペイメント周辺事業 (職人・協力会社への支払いサイト短縮など)を、別法人として立ち上げて検証 → 本体に統合、という典型的なフィンテック子会社の吸収プロセスと読める。 助太刀は本体に金融機能を取り込みにいった ——これが2021年末の組織再編の意味だ。
資本金の乱高下 — 増資のたびに1億円前後へ減資
登記の資本金履歴は、次のような上下動を繰り返している。

| 日付 | 資本金 | できごと(推定) |
|---|---|---|
| 2017-03 | 2,701万円 | 設立 |
| 2018-04 | 2.91億円 | シリーズA(B種優先株式の発行) |
| 2019-04 | 3.91億円 | A種延長 |
| 2019-06 | 6.41億円 | C種一次 |
| 2019-11 | 1.00億円 | 大型減資(税制最適化) |
| 2020-12 | 3.50億円 | C種二次 |
| 2021-02 | 0.90億円 | 減資 |
| 2021-12 | 2.40億円 | 増資 |
| 2022-02 | 6.15億円 | D種発行 |
| 2022-05 | 1.65億円 | 減資 |
| 2022-08 | 3.90億円 | 追加 |
| 2022-12 | 0.90億円 | 減資(最新) |
これは経営悪化による減資ではなく、 「資本金1億円以下の中小企業特例」(外形標準課税・住民税均等割の段階・印紙税)の射程に収めるため の、スタートアップではよく行われる手続きだ。ただし助太刀は 5回以上の増資→減資サイクル を繰り返しており、頻度はかなり高い部類に入る。
種類株式は A・B・C・D の4シリーズ
登記上の発行済株式は、最新時点で計 約23万株 。普通株式 10万株に加え、 A種・B種・C種・D種 の優先株式が積み上がっている。シリーズBの 2022年調達では、後述する MPower Partners がリードしてD種優先株式を取得した形と読める。
時価総額の推察 — 1株単価は2019年からほぼ横ばい
各ラウンドの 1株あたりの値段 は、登記簿の「資本金の増えた額×2」を新規発行株数で割って算出する(詳細は記事末尾の共通注記を参照)。これに そのラウンド時点で存続している新株予約権を含めた全株式数 を掛けると、会社全体の時価総額になる。
新株予約権は、現行の履歴事項全部証明書から各シリーズの最新個数を1個ずつ集計した 現存ベース で計上している(退職・個別放棄・行使済で減った分は反映)。具体的には、第2回(最新240個)/第3回(753個)/第4回(937個)/第6回(D種優先株対象 1,733個)/第7回(3,386個)の合計 7,049株 を、最新時点(2026年5月)のラウンドに加算した。シリーズB完了時点(2022年7月)は第6回・第7回がまだ発行前で、第2〜4回の 1,930株 のみを集計対象としている。第1回(当初900個)は2018年11月15日に 全部放棄消滅 しているため、全期間にわたって0株扱いとした。

| ラウンド | 時期 | 株式での出資額(資本金増×2) | 公表された調達総額 | 1株あたりの値段 | 全株式数(含SO) | 推定時価総額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| シード | 2017/08 | 約0.5億円 | 約0.5億円 | 約 2,825円 | 約 11.8万 | 約 3.3億円 |
| シリーズA | 2018/04 | 約5.3億円 | 約5.3億円 | 約 12,700円 | 約 16.0万 | 約 20億円 |
| A延長 | 2019 | 約7.0億円 | 約7億円 | 約 31,400円 | 約 18.2万 | 約 57億円 |
| シリーズB | 2022/07 | 約7.5億円 | 約18.5億円 | 約 34,600円 | 248,171株 | 約 86億円 |
| パナソニックHD | 2024/07 | 約3.0億円 | 非開示 | 約 34,800円 | 273,423株 | 約 95億円 |
| 追加 | 2024/10 | 約7.0億円 | 約17億円 | 約 34,800円 | 302,186株 | 約 105億円 |
表から見えてくるのは、次の3つの事実だ。
- パナソニックHDの出資額(非開示)も、登記から逆算できる。 2024年7月に資本金が1.5億円増えている(=株式での出資は約3.0億円)。同時にE種優先株式が8,629株発行されているので、1株あたり約34,800円。 パナソニックの出資は約3億円 とみてよい。
- 1株あたりの値段は2019年から約3万円台でほぼ横ばい である。シリーズB(2022年)も2024年の各ラウンドも、1株 約3.5万円前後で動いていない。 評価額(バリュエーション)は5年間ほとんど上がっていない ことになる。
- 「シリーズB 18.5億円」「2024年10月 17億円」という公表額は、株式で集めたお金(約7〜7.5億円)の2倍以上ある。 差額の多くは 転換社債などの借入性の調達 とみられる(助太刀の登記には「転換社債型新株予約権付社債」第1回 40個・1個あたり500万円・転換価額45,008円が記載されている。行使期間は2025年7月31日まで)。 債務超過で株式の評価額を上げにくいなか、借入を織り交ぜて資金をつないでいる 構図がここから見える。
- 株式数が増えたぶん会社全体の時価総額は約86億→約105億へと見かけ上は増えているが、 1株の値段が上がっていない以上、これは「成長による評価」ではなく「資金をつなぐための希薄化」 と読むのが正確である。
3. 資金調達と投資家陣 — トヨタ系・MPower・パナソニック

金額は登記簿ベース(株式で集めたお金=資本金の増えた額×2)で示す。公表されたリリースの「調達額」は転換社債・借入を含むため、株式での調達はそれより小さい。
| ラウンド | 時期 | 株式での調達(登記) | 主要投資家 |
|---|---|---|---|
| シード | 2017/08 | 約0.5億円 | 旧社名 東京ロケット 名義 |
| シリーズA | 2018/04 | 約5.3億円 | マッチング → ペイメントへ拡張 |
| A延長 | 2019 | 約7.0億円 | 未来創生2号ファンド(トヨタ系) |
| シリーズB | 2022 | 約7.5億円 | MPower Partners (ESG/インパクト)。同社の創業パートナーが社外取締役に就任 |
| パナソニックHD | 2024/07 | 約3.0億円 | パナソニックHD (資本業務提携、パナソニック ハウジングソリューションズと協業) |
| 追加 | 2024/10 | 約7.0億円 | (複数投資家。公表総額は17億円で、差額は転換社債等) |
ここに助太刀の独特な投資家陣が表れている。
- トヨタ系の未来創生2号ファンド (自動車・モビリティ起点の戦略投資家)
- MPower Partners (日本初のESG/インパクト特化VC)
- パナソニックHD (住宅・建設領域での協業を伴う、事業会社からの資本)
スタートアップVC一色ではなく、 建設・住宅というリアルな事業者からの資本を取り込んでいる 点が、助太刀のポジションの特徴だ。建設現場という川下の産業構造に、資本面から深く食い込もうとしている。
4. 経営体制 — 創業者の手元に経営は残っている
現任の機関構成は次のとおり。
- 代表取締役: 我妻陽一氏 (創業者)
- 取締役:社内2名と社外1名( MPower Partners 創業パートナー)
- 監査役:2名
機関設計は 取締役会設置会社+監査役設置会社 。SmartHR のように 監査等委員会・会計監査人 までは整備されておらず、 上場準備の外形要件は、まだ整っていない 段階だ。直近の決算(赤字縮小と債務超過の継続)からしても、 当面の主軸は「上場ではなく、追加調達・事業会社との提携を重ねながら黒字化に届かせる」シナリオ とみるのが自然である。
5. 採用と発信、知財 — ターンアラウンドの方程式
社員数は2年で 133人 → 112人へ減少

厚労省の被保険者数で追える社員数は、2024年4月の 133人 から本日時点で 112人 。 およそ16%、2年で減らしている 。これは多くの場合「悪い話」と取られがちだが、助太刀の文脈では別の読み方が要る。
直近3期の当期純損失は ▲17.7億 → ▲8.7億 → ▲2.7億 → ▲1.7億 と急速に縮小している。 人件費を含むコスト構造の見直しで、赤字を止血しにいった結果 とみるのが整合的である。赤字の急速な縮小と、人員減少のタイミングが揃っており、意図的な縮小と読み取れる。
知財は商標で固め、登録特許は無し

J-PlatPat では、商標 登録38件 、審査中3件、特許 係属中2件、特許 拒絶確定1件。 登録特許は無し 。「助太刀」「助太刀社員」など主要ブランド/プロダクト名を商標で網羅的に押さえる戦略で、マッチングプラットフォーム業態としては典型的な構成といえる。
PR は2024年以降に明確に加速
公開PRは 226本(2017年8月〜2026年5月)。月別では、 2024年以降に月4〜8本ペース へ加速している。パナソニックHDとの提携、各種展示会・セミナー出展など、 事業会社・自治体・建設業界団体との接点を増やすマーケティング にシフトしている様子が読み取れる。
6. 結論 — 「縮小しながら持ちこたえる」フェーズの戦略
4期連続の債務超過は重い。一方で、 赤字を1/10まで縮めた事実 と、 パナソニックHDという事業会社が資本を入れた事実 は、投資家コミュニティの信頼の傍証になる。 MPower Partners のような中長期投資家が抜けていない点も、債務超過の継続をマイナスに振り切らせない要素として効いている。次の数期で黒字化が見える場面に到達するかが分岐点になる。
人員を絞って固定費を下げ、パナソニックHDのチャネルで事業を回す—— 「自前主義」から「提携前提」への舵切り が、登記簿と PR の両方から読める。創業者が代表に残り、意思決定の連続性は保たれているのも、債務超過下の会社としては大きい。
建設業の人手不足という構造課題は、ソフトだけでは解けない。 住宅メーカー(パナソニックHD)と組める助太刀 は、純粋なソフトウェア競合に対して独自のレバレッジを持つ。 「建設現場を魅力ある職場に。」というミッション は、人口減・職人不足という業界の最大課題に正面から向き合うもので、財務の数字は厳しいが、ここに本気で取り組むプレイヤーが残ること自体に意味がある。次の決算公告で「黒字に届く局面」が見えるかが、本記事のいちばんの注視点になる。
7. 計算方法・データの限界(Methodology)
時価総額の基本的な算定ルール(資本金増×2、新株予約権を含む全株式数の現存ベース集計)は本記事末尾の共通注記にまとめている。ここでは助太刀固有のメモを残す。
- 本記事の財務数値はすべて 決算公告(単独) ベース。助太刀の公告はB/S+P/L方式で、 売上高は非開示 。
- 2024年の数字は、 現在の登記簿(履歴事項全部証明書)に記載されたE種優先株式の発行 から算出した。
- パナソニックHD(2024/07・公表額は非開示)の出資額は、登記の資本金増加(+1.5億円 ×2=約3.0億円)から逆算した。
- 新株予約権は、第1回(消滅)・第2回(最新240個)・第3回(753個)・第4回(937個)・第6回(D種優先株対象 1,733個)・第7回(3,386個)の合計 7,049株 を最新時点で集計。シリーズB完了時点(2022年7月)は第6・7回が未発行で 1,930株 のみを計上した。第5回は両謄本に登記がなく、対象から除外している。
- 役員・株式・資本金・組織再編の情報は 履歴事項全部証明書 と Compalyze の組織再編データ、社員数は 厚労省 被保険者数 、調達は PR TIMES 、知財は J-PlatPat を出典とする。
8. ファクトシート
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法人番号 | 3013301040322 |
| 商号 | 株式会社助太刀(旧・株式会社東京ロケット) |
| 本店 | 東京都新宿区西新宿6-18-1 |
| 設立 | 2017年3月30日 |
| 代表者 | 我妻陽一 |
| 決算期 | 2月期 |
| 機関設計 | 取締役会設置会社・監査役設置会社 |
| 主要組織再編 | 2021年12月:株式会社助太刀ファイナンシャルサービスを吸収合併 |
本文で言及した企業