建設も宅建も持つ会社は何者か ─ 許認可2万社で読む「土地を仕入れ、建てて、売る」企業と、地方ほど進む垂直統合
建設業許可48万・宅建業者13万を法人番号で突合。建設も宅建も持つ会社は20,652社=宅建業者の約5社に1社で、会社年齢の中央値36年・決算公告率も約3倍の地域の中核だった。地方ほど『一社で建てて売る』(山形41%↔東京10%)。許認可は会社の『できること』を示すタグとして読む。

建設会社や不動産会社が事業を行うには、行政の許認可がいる。建設業には許可、宅建業には免許だ。その許認可を持つ業者を都道府県ごとに数えると、業界ごとに違う「地図」が見えてくる。Compalyze が国土交通省の許認可データを構造化したところ、建設業許可は全国で約48万、宅地建物取引業者は約13万。建設業では大阪が東京に肉薄し、宅建業者は東京に偏る。だが本当に面白いのは、件数ランキングの一段下――「建設と宅建の両方を持つ会社」をたどったときに現れる。土地を仕入れ、建てて、売る。その「川上から川下まで」の会社は2万社あり、しかも地方ほど多い。許認可を会社の「できること」のタグとして読むと、業界の構造が見えてくる。
この記事のポイント
- 建設業許可は全国約48万、宅地建物取引業者は約13万。建設は大阪が東京に肉薄、宅建は東京に集中という対照
- 建設業許可と宅建業免許を両方持つ会社は20,652社。宅建業者(法人)の約5社に1社(19.4%)が建設業許可も持つ
- 「両方持ち」は単機能の業者と別物だった。会社年齢の中央値は36年(建設のみ12年・宅建のみ7年)、決算公告を出す割合も約3倍。歴史が長く、規模が大きく、ほぼ株式会社の「地域の中核」である
- 地方ほど「一社で建てて売る」。両方持ち比率は山形41%・秋田38%など東北が高く、東京10%・沖縄11%など都市は低い。地方は垂直統合(仕入れ・施工・販売を一社で)、都市は分業という反転
- 許認可は売上ではなく、会社が法的に「何をできるか」を示すタグである
1. 建設は大阪が肉薄、宅建は東京に集中

建設業許可を持つ事業者を都道府県別に数えると、トップは東京(44,778)だが、2位の大阪(41,809)が約3千件差で迫る。神奈川、愛知、埼玉が続く。人口・経済規模では東京が大阪を大きく上回るのに、建設業許可では差が小さい。建設業は本社の集まる東京だけでなく、各地の工事を担う事業者によって広く分布している。

一方、宅地建物取引業者は違う地図を描く。全国約13万のうち、東京が28,024で頭一つ抜け、2位の大阪(15,357)の約1.8倍。不動産業は地価が高く取引額の大きい都市部に事業機会が集まりやすく、東京の比重が大きい。建設が「現場のある場所」に広がり、不動産は「取引の起きる場所」に集まる――同じ土地と建物を扱いながら、立地の傾向は対照的だ。
ここまでは件数の話だ。だが許認可データの本当の面白さは、「どの会社が、どの許可を、どう組み合わせて持っているか」にある。
2. 「建設も宅建も持つ会社」は、地域の中核だった
建設業許可と宅建業免許を、法人番号で突き合わせる。すると、両方を持つ会社が20,652社あった。法人番号に紐づけられた宅建業者のうち、約5社に1社(19.4%)が建設業許可も持っている計算だ。
この「両方持ち」は何者か。土地を仕入れ(宅建)、建物を建て(建設)、販売する(宅建)――いわゆる垂直統合、つまり仕入れ・施工・販売を一社で扱う会社だ。建売・分譲の担い手。中古住宅を買い取り、リフォームして再販する会社。地主に建築を提案し、入居付けまで行う会社。あるいは、不動産会社が施工機能を内製化した会社。横濱地所、田辺工務店、大和建設、富樫建設……名前を見ると、地域に根ざした工務店や不動産会社が並ぶ。もちろん、両方持ちのすべてが建売をしているわけではない。賃貸住宅の建築提案、リフォーム再販、地場工務店の不動産部門、デベロッパーの施工内製化など、形はさまざまだ。

データを並べると、両方持ちが単機能の業者と「別の生き物」であることがはっきりする。会社年齢の中央値は36年で、建設のみ(12年)・宅建のみ(7年)の3〜5倍。決算公告を出している割合は11.7%で、建設のみ(3.8%)・宅建のみ(5.1%)の約3倍。法人格はほぼ株式会社(合同会社はわずか0.3%)。従業員10人以下の零細の割合も、両方持ちは56.7%と、建設のみ(70.2%)より低い。
つまり「土地を仕入れて建てて売る」会社は、思いつきで始めた新興ではなく、歴史が長く、規模が大きく、決算も開示する、腰を据えた地域の中核企業である。許可を二つ重ねて持つことは、単なる業種の足し算ではなく、土地・建物・取引を一気通貫で扱う「事業の厚み」を示していた。ただしこれはあくまで中央値が描く代表像で、両方持ちでも決算公告を出すのは1割強。許可だけ維持して実体の薄い老舗も一定数いるとみられ、「中核」一色ではなく濃淡はある。
3. 地方ほど「一社で建てて売る」── 反転する地図
両方持ちを都道府県別に見ると、件数ランキングでは絶対に見えない反転が現れる。

宅建業者(法人)に占める「建設業許可も持つ」会社の割合は、山形41%、島根39%、秋田38%、岩手37%、青森35%、福島34%――東北・日本海側の地方県で高い。逆に低いのは、東京10%、沖縄11%、熊本14%、兵庫15%、福岡16%といった大都市・都市圏だ。京都(31%)は都市のなかで例外的に高い。
これは、不動産業の「かたち」が地域で違うことを示している。地方では、一つの会社が土地を仕入れ、自ら建て、売る――垂直統合型が標準だ。地場の工務店が建売も手がけ、不動産会社が施工も担う。対して都市部、とくに東京では、仲介を専業とする宅建業者が大半で、施工は別の会社が担う――分業型である。東京では宅建業者の10社に1社しか建設を兼ねないが、山形では10社に4社が兼ねる。「地方の不動産会社は建てる、都市の不動産会社は仲介する」。許認可の重なりは、その地域差をあぶり出す。
地方で垂直統合が進む背景には、市場規模の小ささもあるかもしれない。取引量が限られる地域では、仲介だけ・施工だけで規模を保つより、仕入れ・建築・販売・管理を一社で担うほうが事業を続けやすい。都市の例外として京都が31%と高いのも、都市でありながら地場工務店や町家の改修、小規模な開発が厚い市場である可能性を示す(いずれも仮説で、登記・許認可からは断定できない)。
ひとつ留保がある。今回のデータは、複数都道府県にまたがる国土交通大臣許可・免許の捕捉に限界があり、主に都道府県知事許可・免許を対象としている。つまりここで見えているのは、全国展開の大手というより、地域に根ざした事業者の姿である。都市部の「分業」も、大臣免許の広域仲介・本部機能が十分には映っていない点は割り引いて読む必要がある。
4. 不動産業の新陳代謝 ── 免許の「更新回数」が映すもの
宅建業免許には、更新のたびに増える番号(例「東京都知事(5)」の5)がついている。免許はおおむね5年ごとの更新制で、この回数は事業の歴史をおおよそ映す。
更新回数で宅建業者を分けると、新規(0〜1回)が24,810社で会社年齢の中央値は4年、老舗(10回以上)が13,851社で同57年。新規参入の若い会社と、半世紀続く老舗が共存している。興味深いのは、老舗ほど建設業許可も持つ割合が高いことだ。新規では15%だが、中堅・老舗では22%まで上がる。長く続く不動産会社ほど、施工を内製化し、垂直統合を深めていく――時間をかけて「建てる会社」になっていく傾向が読み取れる。
5. 業者数の地図と、取引の地図はズレる
許可業者の「数」は、必ずしも取引の「量」と一致しない。
不動産流通機構(REINS)によれば、2025年の首都圏の中古マンション成約件数は49,114件、中古戸建は21,632件で、合わせて約7万件。一方、首都圏(1都3県)の宅建業者は4万社を超える。ここで「1業者あたり何件」と割り算するのは正確ではない。宅建業者の業務は中古売買の仲介だけでなく、賃貸仲介・管理・新築分譲・投資用・自社物件売買と多岐にわたり、その大半はREINSの中古成約には現れないからだ。全社が中古住宅の仲介をしているわけではなく、分子(中古成約)と分母(宅建業者全体)はそもそも対応していない。それでも、極めて粗い規模感として、宅建業者数の多さと中古住宅の取引件数のあいだにはかなりの開きがある。宅建業者が東京に集中していることは、必ずしも「東京で取引が桁違いに多い」ことを直ちに意味しない。近畿圏でも中古マンションの成約は増加基調にある(2025年は四半期ベースで前年比二桁増の期もある)。「業者がどこに多いか」の地図と、「取引がどこで起きているか」の地図は、対応しないものとして、重ねて見る必要がある。
6. 許認可は、会社の「できること」を示すタグである
許認可は売上ではない。許可を持っていても、その業務でどれだけ稼いでいるかは分からない。だが、許可はその会社が法的に「何をできるか」を示す。建設業許可を持つ会社は、原則として軽微な工事を超える工事を請け負える(建築一式以外は1件500万円以上、建築一式は1件1,500万円以上などが目安)。宅建業免許を持つ会社は、宅地建物の売買・交換や、売買・交換・賃貸の代理・媒介を業として行える。そして両方を持つ会社は、少なくとも施工と不動産取引の両方に踏み込める会社である。
許認可は、M&Aでも意味を持つ。建設業許可や宅建業免許は、営業所、専任技術者、宅地建物取引士、財産的基礎といった人的・組織的な要件と結びついている。許可を持つ会社を買うことは、顧客や売上だけでなく、許可を維持する体制ごと引き継ぐことでもある。とくに「両方持ち」の地域中核企業は、買取再販・地域開発の担い手として、買収・提携の対象になりうる。
売上高の前に、会社が法的に踏み込める業務範囲を示すタグとして許認可を見ると、業界の地図はかなり違って見える。次に見るべきは、両方持ち企業がどの建設業種を持つかだろう。建築一式が多ければ建売・工務店型、内装や塗装・防水が多ければリフォーム再販型、解体が多ければ土地再生・買取再販型――建設業許可の29業種まで分解すれば、「両方持ち」の中身はさらに見えてくる。件数ランキングの一段下に降りること――それが、許認可データの本当の使い方だ。
調査概要・この記事のメモ
- データ:国土交通省が公表する許認可データ(建設業許可・宅地建物取引業者)を Compalyze が構造化したもの(2026年6月時点)。建設業許可 約483,464、宅地建物取引業者 約131,947。都道府県別件数は所在地ベースで集計した。
- 「両方持ち」の集計:許認可の保有主体を法人番号に名寄せ(自動確定分)したうえで、建設業許可と宅建業免許の双方に紐づく法人を数えた。20,652社・19.4%は、名寄せが確定した法人を母数とした値であり、個人事業主(建設の約13.5%、宅建の約8.8%)は法人番号を持たないため含まない。実際の重複保有はこれを上回る可能性がある。
- 会社年齢・決算公告・規模:会社年齢は登記の設立年月日から、決算公告の有無は決算公告データから、従業員規模は Compalyze の収集データ(判明分)から算出した。決算公告は主に一定規模以上の会社が出すため、開示率は会社の規模・実体を間接的に映す。
- 更新回数:宅建業免許番号の更新回数(かっこ書きの数字)。免許はおおむね5年ごとの更新制(1996年以前は3年)で、回数は事業の歴史の目安であり、厳密な業歴ではない。
- 取引件数:不動産流通機構(REINS)公表の成約件数(首都圏は東日本レインズ2025年)。地域ブロック単位で、対象は主に中古マンション・中古戸建。許認可の集計とは集計単位・範囲が異なるため、規模感の対比として読まれたい。
- 留意点:本データには国土交通大臣許可・免許(複数都道府県にまたがる事業者)が十分に含まれない可能性があり、本記事の集計は主に都道府県知事許可・免許を対象とする。許可の有無は事業規模・稼働を直接示すものではない。動機や実態は登記・許認可データからは特定できず、本文の説明は確かめられる範囲の事実と、その読み筋である。