株式会社スタジオジブリ、決算公告20期で追う「資本金1,000万円・配当ゼロ・純資産390億円」の20年
決算公告20期と登記情報で、株式会社スタジオジブリの20年を整理する。資本金1,000万円のまま純資産が14.85億円→390.73億円、3度の組織再編、商標66件、そして日本テレビ完全子会社化の痕跡。

この記事のポイント
- 2006年3月期から2025年3月期までの 決算公告20期 で、当期純利益累計 約363億円、純資産は14.85億円から 390.73億円へ約26倍 。資本金は20年間 1,000万円のまま動かず 、増資ゼロ
- 直近3期(FY2023〜FY2025)の純利益は 34.30 → 49.07 → 60.12億円 と3期連続で過去最高を更新。ジブリパーク開園、「君たちはどう生きるか」公開、米国アカデミー賞受賞 と同じ時期に並ぶ
- 2016〜2020年に関連3法人(株式会社二馬力・株式会社マンマユート団・株式会社ジブリ美術館)を本体に吸収合併、2023年9月の 日本テレビ放送網株式会社 による完全子会社化の前後では、 取締役5名と監査役1名の同日就任 、 発行済株式1,280株→1,110株の170株消却 が登記に残っている
1. 20年で純資産を14.85億円から390.73億円へ — 配当をほぼ出さずに積み上げる「ジブリの財布」
株式会社スタジオジブリ(法人番号 2012401010302、本店 東京都小金井市梶野町一丁目4番25号)は、 官報に決算公告を継続的に掲載してきた 非上場のアニメーション制作会社である。当社の公告は、当期純利益・総資産・純資産・負債を並べる貸借対照表ベース。確認できるのは 2006年3月期(FY2006)から2025年3月期(FY2025)までの 20期分 。長期にわたって決算公告を追える非上場のアニメスタジオとして、分析対象として貴重なケースになる。
20期を一望すると、特異な絵が見える。

純資産の線は20年かけて、 14.85億円から390.73億円へと約26倍 まで積み上がっている。途中、減資や大型配当を示す段差は確認できず、毎期の純利益がそのまま内部留保へと振り向けられていく構造が見える。
| 期 | 当期純利益 | 純資産 | 総資産 | 負債 |
|---|---|---|---|---|
| FY2006(2006年3月期) | 14.79億円 | 14.85億円 | 143.4億円 | 128.5億円 |
| FY2009(2009年3月期) | 28.72億円 | 60.20億円 | 167.0億円 | 106.8億円 |
| FY2014(2014年3月期) | 31.36億円 | 126.00億円 | 200.7億円 | 74.7億円 |
| FY2018(2018年3月期) | 25.82億円 | 198.72億円 | 220.8億円 | 22.1億円 |
| FY2023(2023年3月期) | 34.30億円 | 281.65億円 | 311.8億円 | 30.1億円 |
| FY2024(2024年3月期) | 49.07億円 | 330.72億円 | 380.9億円 | 50.2億円 |
| FY2025(2025年3月期) | 60.12億円 | 390.73億円 | 436.3億円 | 45.6億円 |
20期通算の当期純利益は 約363億円 。期初(FY2006の期首)の純資産が約0.06億円だった一方、合併3社の純資産引き継ぎ分(後述§5)が加わって、20年で純資産は約391億円増えた計算になる。
決算公告で長期にわたって追えるのは、 損益計算書ではなく当期純利益と貸借対照表の主要科目 にとどまる。売上高や営業利益は公告に出ない期がほとんどで、以下は当期純利益と純資産の積み上がり方を、20年の連続データで並べる構成にする。
2. 「資本金1,000万円」と「純資産390億円」 — 桁の開きを対数で見る
登記情報を当てると、この成長の特殊性がさらにはっきりする。

縦軸を対数にして資本金と純資産を並べると、 資本金1,000万円のラインに対して、純資産の線は20年かけて4桁スケール上を進んでいる 。差分の 約390億円 は、20期で積み上がった利益剰余金と、合併で引き継いだ純資産が中心と読める。
登記情報での確認事項を要点だけ拾う。
- 資本金 1,000万円(設立時から動かず、増資なし)
- 発行可能株式総数 4,000株
- 発行済株式の総数
- 2016年4月1日時点 1,280株
- 2024年1月22日時点 1,110株 (170株、約13%が消却された痕跡)
- 株式の譲渡制限 あり(取締役会の承認が必要)
- 公告方法 官報に掲載する
- 取締役会設置会社/監査役設置会社
外部からの増資を入れず、配当方針を抑えたうえで、毎期の利益剰余金を社内に厚く残していくモデルである。スタートアップ系の記事で頻出する「種類株式の発行」「ストックオプション付与」「資本金1億円までの減資」といった資本政策の節目は、当社の登記簿には1度も登場しない。
そのうえで、 2024年1月22日に発行済株式が 1,280株から1,110株へ減っている 。170株、率にして約13%。後述する 日本テレビ放送網による完全子会社化(2023年9月21日発表)の翌四半期にあたるタイミングで、株主構成を整理するための自社株消却の痕跡と読める。資本金は1,000万円のまま動いておらず、 「資本金を増減させずに株数だけ削った整理」 として登記簿に残っている(詳細は§8)。
3. 直近3期、当期純利益34.3→49.1→60.1億円の3連騰
20期の純利益を改めて並べると、 直近3期で過去最高を3年連続更新している 。
| 期 | 当期純利益 | 同時期の主な出来事 |
|---|---|---|
| FY2023(2023年3月期) | 34.30億円 | ジブリパーク第1期エリア開園(2022年11月1日) |
| FY2024(2024年3月期) | 49.07億円 | 「君たちはどう生きるか」公開(2023年7月14日)/日本テレビによる完全子会社化(2023年9月21日発表) |
| FY2025(2025年3月期) | 60.12億円 | 「君たちはどう生きるか」が米国アカデミー賞 長編アニメ賞 受賞(2024年3月10日)/ジブリパーク「魔女の谷」エリア開園(2024年3月16日) |
FY2023は34.30億円。 ジブリパーク第1期エリアが愛知県長久手市で2022年11月1日に開園し、運営主体である別法人の株式会社ジブリパークからの利用料・ライセンス料が部分計上された期と重なる。
FY2024は49.07億円で、前年から +14.8億円 。「君たちはどう生きるか」の公開が2023年7月14日で、配給収入の本体への計上は半期分以上に乗ったと考えてよい。さらに同年9月21日、日本テレビ放送網による完全子会社化が発表され、グループ内の収益認識の取り扱いが整理されたタイミングでもある。
FY2025は60.12億円で、前年からさらに +11.0億円 。米国アカデミー賞 長編アニメ賞の受賞(2024年3月10日)が期初寸前、ジブリパーク「魔女の谷」エリアの開園(2024年3月16日)が期初という並びで、 賞・劇場・テーマパーク・配信・グッズ の利益寄与が同じ1期に重なる形となった。
過去にも作品公開の翌期に純利益が跳ねるサイクルは確認できる。
- FY2009(28.72億円)「崖の上のポニョ」公開(2008年7月19日)の翌期
- FY2014(31.36億円)「風立ちぬ」(2013年7月20日)と「かぐや姫の物語」(2013年11月23日)公開の同期
- FY2018(25.82億円)大型新作の公開がない時期に当たるが、それでもこの水準を出している。長期にわたる作品群のロイヤルティ・ライセンス収益が、ひとつの作品の興行に依存しないストックとして効いていることが見える
FY2025の60.12億円は、これら過去のピークも超えた水準。 「ロングセラーになった作品群のライセンス収益 + 直近の大作の興行 + ジブリパークの運営委託料」 が同じ期に並んだ結果として、貸借対照表側にも反映されている。
4. ROEは安定モードへ、自己資本比率は10.4%→89.5%
利益率と財務体質の20年を、別の角度から並べる。

最も目を引くのは、 自己資本比率の長期上昇 だ。FY2006時点では10.4%。負債128.5億円に対して純資産14.85億円という、 負債で身軽に動かしていた時期 から、純利益の積み上げによって資本側を厚くし、FY2025には89.5%に到達している。
ROE(純利益÷純資産)は、初期に二桁後半〜100%近くの値が並ぶ。これは「分母の純資産がまだ小さい」局面の数字で、当時の事業体力をそのまま測るには適さない。純資産がある程度積み上がったFY2017以降を見ると、FY2023〜FY2025は 12.18% → 14.84% → 15.39% と、 直近3期で連続して上昇 している。
ROA(純利益÷総資産)も、直近3期は 11.00% → 12.88% → 13.78% と並ぶ。総資産も同期間で311.8 → 380.9 → 436.3億円へ膨らんでいるなかでの上昇である。資産の伸びを超えて、利益のほうが速く伸びている状態。
長期で見ると、ジブリは ROE の高さで稼いでいる会社というよりも、 資本を増やさず、配当を出さず、毎期の利益で純資産を着実に積み上げてきた会社 という姿に近い。直近3期は、その「積み上げ装置」自体の運転スピードが一段速まっている局面として跡づけられる。
5. 3度の組織再編 — 関連3法人を本体に集約
20期の純資産の伸びの一部は、 関連法人の合併による純資産引き継ぎ が支えている。登記簿に残っているのは3件。
| 合併日 | 吸収された会社 | 本店 |
|---|---|---|
| 2016年4月14日 | 株式会社二馬力 | 東京都武蔵野市 |
| 2018年3月1日 | 株式会社マンマユート団 | 東京都三鷹市 |
| 2020年10月1日 | 株式会社ジブリ美術館 | 東京都三鷹市 |
「マンマユート」「二馬力」はいずれも、ジブリ作品や創業者の周辺で知られる固有名詞。マンマユートは『紅の豚』に登場する空賊団の名前から、二馬力は監督の個人事務所として長らく知られた会社名。 株式会社ジブリ美術館 は 三鷹の森ジブリ美術館の運営を担うために2018年10月に設立され、 設立からおよそ2年で本体に吸収 されている。
3件の合併に共通するのは、ジブリの作品・人材・施設運営に紐づいた周辺法人を、本体に取り込む方向の動きである点。20年前は複数の小さな会社に役割が分かれていた事業機能が、 2016年以降の数年で、本体1社へ集約された ことになる。
合併で引き継いだ純資産は、本体の決算公告ベースで20期通算の純利益(約363億円)と合算され、390.73億円の純資産にまとまっている。前章で触れた純資産の20年カーブにも、合併のタイミングで段差が乗っているのが確認できる。
なお、もう1つの「ジブリ」名を冠した法人として、 株式会社ジブリパーク (本店 愛知県名古屋市中区、2019年11月8日設立)が同時に存在している。こちらは本体に合併されていない別法人で、社会保険被保険者数は20名規模。ジブリ本体(後述の233名)とは別の運営体になっている(§8で改めて触れる)。
6. 商標66件で追う「過去作品の防衛」と「ジブリパーク準備期」
特許庁 J-PlatPat で当社名義で確認できる商標は 66件 。長期で並べると、出願のヤマが2回ある。

最初のヤマは2007年。 株式会社化の直後にあたるタイミング で、過去作品の主要タイトルが一気に出願されている。
- 風の谷のナウシカ
- 天空の城ラピュタ
- となりのトトロ/トトロ/TOTORO
- ナウシカ/NAUSICAA
- ラピュタ/LAPUTA
- ジブリ/GHIBLI/スタジオジブリ/STUDIO GHIBLI
- 耳をすませば
- 平成狸合戦ぽんぽこ
- マンマユート/MAMMA AIUTO(『紅の豚』の空賊団名)
- 麦わらぼうし
- 飛行石(『天空の城ラピュタ』の作中アイテム名)
公開からすでに10年以上経った作品のタイトル・キャラクター名・作中固有名詞までを、一括して登録に持っていく動きが目立つ。 過去作品のIPを商標で守りに行く防衛戦略 が、株式会社化の前後で本格化したと読める並びである。
第2のヤマが、2022〜2023年の 24件 。エリア名・施設名が連続している。
- もののけの里 / 魔女の谷 / 青春の丘 / 猫の城(ジブリパークのエリア名)
- どんどこ処 / どんどこ売店 / どんどこ団
- 冒険飛行団 / 熱風書店 / 大空模型 / ロタンダ風ヶ丘
- ミルクスタンド シベリあん / 駄菓子 猫かぶり姫
- ジブリパーク/GHIBLI PARK
- Witch Coven 13 / Valley of Witches / 13人の魔女団 / 魔女の本棚 / オキノ邸 / ハッター帽子店 / Flying OVEN(『魔女の宅急便』のオキノ邸・ハッターズなど)
ジブリパークの第1期エリアは2022年11月1日、 「魔女の谷」エリアは2024年3月16日に開園 しており、出願の集中時期は エリア整備のおよそ半年〜1年前 に重なる。展示・物販・飲食施設の名称をテーマパーク開園に間に合わせて押さえる流れが、商標登録のタイミングからも追える。
2024年には施設名としての「ジブリ美術館」も商標として出願されている(2025年3月3日登録)。ジブリ美術館の運営を担っていた 株式会社ジブリ美術館 を2020年に本体に吸収した後、4年後に施設名そのものも商標として本体に紐づけた格好になる。直近では2026年2月17日に「ネコバス/nekobus」が出願されたところ。
7. 法人としての沿革 — 株式会社化と「20年動かない本店」
株式会社スタジオジブリ の登記簿には、 「平成17年1月18日有限会社スタジオジブリを組織変更し設立 平成17年1月20日登記」 と記載されている。 旧 有限会社スタジオジブリを母体として、2005年1月18日に株式会社へ組織変更されたことが、現在の法人としての出発点になる。
本体の沿革を、登記情報・公告・特許庁のデータから時系列に並べる。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 2005年1月18日 | 有限会社スタジオジブリを組織変更し、株式会社スタジオジブリを設立 |
| 2006年8月21日 | 当社最初の決算公告(FY2006、2006年3月期) |
| 2016年4月14日 | 株式会社二馬力 を吸収合併 |
| 2018年3月1日 | 株式会社マンマユート団 を吸収合併 |
| 2019年11月8日 | 別法人として 株式会社ジブリパーク が愛知県に設立 |
| 2020年10月1日 | 株式会社ジブリ美術館 を吸収合併 |
| 2022年11月1日 | ジブリパーク 第1期エリア(愛知県長久手市)開園 |
| 2023年7月14日 | 「君たちはどう生きるか」公開 |
| 2023年9月21日 | 日本テレビ放送網株式会社 による完全子会社化を発表 |
| 2023年10月30日 | 取締役5名・監査役1名 同日就任(後述§8) |
| 2024年1月22日 | 発行済株式 1,280株 → 1,110株(170株消却) |
| 2024年3月10日 | 「君たちはどう生きるか」が米国アカデミー賞 長編アニメ賞 受賞 |
| 2024年3月16日 | ジブリパーク「魔女の谷」エリア開園 |
本店は東京都小金井市梶野町一丁目4番25号。 2006年の最初の決算公告から2025年の最新公告まで、20年間1度も移動していない 。登記の本店欄も、組織変更時から所在地は変わっていない。
業種としての登記上の「事業目的」は20項目あり、映画・テレビ・アニメーション・グラフィックデザインの企画製作にはじまり、書籍・雑誌の出版、コンピュータゲーム、各種興行、 「映画ファンド等の保有・売買・運用」 、 「遊園地、動植物園その他各種スポーツ・レクリエーション施設等の娯楽施設の経営」 までを定款に含む。後者は、ジブリ美術館を吸収する前から定款に置かれている。三鷹の森ジブリ美術館の運営や、ジブリパーク向けのコンテンツ・ライセンス供給の素地が、 株式会社化の時点で目的の中に書き込まれていた ことになる。
8. 役員ガバナンスの変遷と、日本テレビ完全子会社化の痕跡
決算公告には毎期1名の代表者が掲載される。20期分の代表者欄を順に並べると、 代表者の交代劇 が読み取れる。

| 期 | 公告の代表者欄 |
|---|---|
| FY2006〜FY2007(2006・2007年公告) | 鈴木敏夫氏 |
| FY2008〜FY2017(2008〜2017年公告、10期連続) | 前代表取締役(同一人物) |
| FY2018〜FY2020(2018〜2020年公告) | 中島清文氏 |
| FY2021〜FY2022(2021・2022年公告) | 代表者欄 記載なし |
| FY2023(2023年公告) | 鈴木敏夫氏(再登場) |
| FY2024〜FY2025(2024・2025年公告) | 中島清文氏 |
10期続いた前代表取締役(FY2008〜FY2017)は、その後2018年から中島清文氏に交代している。さらに 2023年公告で鈴木敏夫氏の名が再び単独で代表者欄に登場し 、翌2024年公告では中島清文氏に戻る、というスイッチが残っている。これは複数の代表取締役が並列しているなかで、各年の公告における代表者の選任の運用が変わったことを示している。
最新の登記簿で、現在の代表取締役は 鈴木敏夫氏、中島清文氏、福田博之氏 の3名。福田博之氏は2023年10月30日に新たに代表取締役として就任している。
そして、 2023年10月30日付の登記 には、それ以上に大きな動きが残っている。同日付で 新任の取締役5名と監査役1名が一括で就任 している。日本テレビ放送網による完全子会社化の発表(2023年9月21日)の 約40日後 にあたる日付である。
加えて、2024年1月22日の登記で、発行済株式の総数が 1,280株 から 1,110株 へ減少した記録が残る。 170株、率にして約13%の自社株消却 。資本金は1,000万円のまま据え置かれており、登記簿には「資本金は変動なし/株式数のみ減少」という形で残っている。完全子会社化に伴って外部株主から取得した自己株式を消却し、株主の構成を整理した動きと整合する。
公告と登記の両方から、 2023年9月〜2024年1月の半年弱で、20年動かなかったジブリのガバナンス体制が大きく書き換わった ことが、年表として可視化できる。
9. 別法人「株式会社ジブリパーク」 — 施設運営は分業
冒頭から触れている 株式会社ジブリパーク は、本体に合併されていない別法人として今も存続している。
- 法人番号 8180001138707
- 本店 愛知県名古屋市中区
- 設立 2019年11月8日
- 社会保険被保険者数 20名
ジブリ本体に登録されている商標66件には、「ジブリパーク/GHIBLI PARK」「もののけの里」「魔女の谷」「青春の丘」「猫の城」など、 施設名・エリア名の主要ブランドがすべて含まれる 。本体側がIPと商標を保有し、 株式会社ジブリパーク が現地施設の運営を担う、という建付けが、登記情報と商標情報の組み合わせから読み取れる。
出資構成や運営委託の細部までは公開情報からは確定できないが、 「本体=IP・商標の保有と分配」「ジブリパーク=施設運営の現場」 という分業が、別法人として登記の上でも維持されているところまでは、登記情報と商標情報の組み合わせから確認できる。
10. 従業員数233名、その内訳と直近の急増
ジブリ本体の社会保険被保険者数は、 2026年5月時点で233名 。 2023年12月の196名から始まる月次推移は、ゆっくり右肩上がりで進み、 直近の単月で +16名のジャンプ が記録されている。

社会保険被保険者数は、ジブリの「正社員+一部の非正規」の概況を映す指標であり、 作品制作の現場のサイズに直接対応するものではない 。それでも、20期で純資産を390億円超に積み上げ、ジブリパークと併走する形でブランドビジネスを広げてきたなかで、 本体の従業員規模は200名台前半に長く収まっていた ことが見える。
直近の単月+16名は、2026年5月の値で、新卒・中途の春採用が同月に同時計上された可能性が高い。同社の純利益が60億円台に達し、ジブリパークの運営、海外配信向けのリマスタリング、過去作品のレストア、新規IPの仕込みなど、社内でこなす業務量が増えているなかでの増員と読める。直近の固定的なコスト増は、今後の決算公告の負債側・純利益側の動きに現れてくる観測軸になる。
11. 公開情報で言えること、言えないこと
最後に、ここまで使った情報源では 届かない領域 をはっきりさせておく。
- 売上高・営業利益・経常利益。当社の決算公告は貸借対照表と当期純利益までで、損益計算書の内訳は開示されない。配給収入・グッズ収益・配信権収益・ライセンス料の 構成比は、公開情報からは推定できない
- 配当政策。決算公告には剰余金処分案の細目は出ない。「無配を維持しているか」「親会社向けの配当が始まっているか」も、公開情報だけでは確定できない
- 株式会社ジブリパーク との取引条件。エリア名商標の使用許諾料、運営委託料、IP使用料の単価は、双方の公告にも登記にも出ない情報
- 海外配信契約の個別金額。Netflix・HBO Max への提供時期は業界の公開情報として知られているが、契約期間・金額・更新タイミングは公告には現れない
- 3社JVではない当社の場合、 日本テレビ放送網株式会社 の連結開示の中で 「スタジオジブリ事業」「ジブリパーク事業」がどこまで切り出されるか が、グループとしての全体像を読む補助線になる
それでも、 20期分の決算公告と登記情報 を時系列に並べるだけで、ここまでの輪郭が浮かんでくる。長期にわたって官報に向き合ってきた会社にしか積み上がらない、 20年連続の貸借対照表データ がここにある。
計算方法(Methodology)
- 20期分の決算公告データは、すべて 官報の決算公告 から取得した株式会社スタジオジブリの年次データ。決算月は3月、すべて単体ベース。各期の「FY」は決算期末の年を指す(FY2025 = 2025年3月期)
- 純資産・総資産・負債・当期純利益は、官報の表記をそのまま採用。期によって表示単位が「1,000円単位(FY2006〜FY2008)」と「1,000,000円単位(FY2009〜FY2025)」で異なるため、本稿では 円換算後の億円表示 に統一している
- 自己資本比率(純資産 ÷ 総資産)、ROE(当期純利益 ÷ 純資産)、ROA(当期純利益 ÷ 総資産)は、公告の数字から算出。ROE・ROAは1期の数値同士の単純比であり、期中平均は使っていない
- 商標66件は、特許庁 J-PlatPat 上で 株式会社スタジオジブリを出願人とする登録分 を集計した数値。共同出願や子会社名義は除外している
- 役員・代表取締役・発行済株式数の変遷は、現行の登記事項全部証明書(履歴事項全部証明書)に記載されている範囲で集計。 旧 有限会社スタジオジブリ時代の役員履歴は、現行の登記簿には転記されていないため、集計対象から外している
- 別法人 株式会社ジブリパーク については、公開情報から確認できる設立日・本店・社会保険被保険者数の範囲にとどめて言及している(同社の登記簿・決算公告は今回扱わない)
- 当社は未上場・損益計算書非公開・株主構成の公開情報が限定的なため、 会社全体の時価総額の算定は行っていない (前掲のジャーナル共通の算定ルールが、当社のデータ条件では成立しないため)
ファクトシート
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法人名 | 株式会社スタジオジブリ |
| 法人番号 | 2012401010302 |
| 本店 | 東京都小金井市梶野町一丁目4番25号 |
| 設立 | 2005年1月18日(有限会社スタジオジブリを組織変更) |
| 決算月 | 3月 |
| 資本金 | 1,000万円(20年間動かず) |
| 発行可能株式総数 | 4,000株 |
| 発行済株式の総数 | 1,110株(2024年1月22日時点) |
| 株式の譲渡制限 | あり(取締役会承認) |
| 公告方法 | 官報に掲載する |
| 機関設計 | 取締役会設置会社/監査役設置会社 |
| 現在の代表取締役 | 鈴木敏夫、中島清文、福田博之 |
| 社会保険被保険者数 | 233名(2026年5月時点) |
| 親会社 | 日本テレビ放送網株式会社(2023年9月21日 完全子会社化 発表) |
| 過去20年の合併 | 株式会社二馬力(2016-04-14)/株式会社マンマユート団(2018-03-01)/株式会社ジブリ美術館(2020-10-01) |
| 関連の別法人 | 株式会社ジブリパーク(愛知県名古屋市、2019年11月設立。今回は名前と概況のみの言及) |
本文で言及した企業