Helical Fusionの推定評価額は約950億円(2026年4月時点)─ シリーズAの1株3,000円からシリーズBの2万500円へ、登記に並ぶ7種類の株式
核融合スタートアップHelical Fusionの登記には7種類の株式が並ぶ。2026年4月時点の全株式数ベースの推定評価額(上場企業の時価総額に相当)は約950億円で、シリーズAのA種からシリーズBのB種まで約9か月で、優先株式の発行単価は約6.8倍になった。

本記事の推定評価額は、2026年4月のB種の1株の値段を、新株予約権を含む全株式に一律に当てはめた登記からの参考計算である。種類株式ごとの権利の違いは反映しておらず、会社が公表した評価額でも売買価格でもない。10月に発表されたシリーズBの2ndクローズは含まない。
この記事のポイント
- 登記簿には普通株式のほかに S種・S2種・A種・A2種・A3種・B種の6種類の優先株式が並ぶ。J-KISSの転換ではなく新たに払い込まれた回の1株の値段は S種2,667円→A種3,000円→A3種3,600円→B種20,500円で、S2種500円とA2種2,700円は、先に払い込まれていたJ-KISS型新株予約権の転換用に設けられた種類だった
- シリーズAのA種(2025年6〜7月、1株3,000円)からシリーズBのB種(2026年3〜4月、1株20,500円)まで、種類の違う優先株式の発行単価は約9か月で約6.8倍になった。間の2025年12月に発行されたA3種(3,600円)は、会社がシリーズAエクステンションと呼ぶ延長ラウンドで、値段はA種の2割増しだった。2026年1月に発行されたJ-KISS型新株予約権には「評価額上限1,000億円」が定められていた
- 登記から確認できる株式での払込は2026年4月27日時点で約66億円。会社が同じ時期に発表した「累計調達額約98億円」は補助金・融資を含むと明記され、東京都の補助事業(最大10億円)と「あわせ」た額とされている。文部科学省SBIR(会社発表で最大20億円の補助金交付が決定)の分も含め、補助金が上限額のまま算入されているとみられる(編集部の推計)
らせん状にねじれたコイルがつくる磁場で高温のプラズマを閉じ込める「ヘリカル型」の方式で、核融合で発電する炉を2030年代に動かす。そう掲げる株式会社Helical Fusion(ヘリカルフュージョン)は、2021年10月に設立された。岐阜県土岐市の核融合科学研究所が積み上げてきた研究成果をもとに創業した会社である。実用発電は今後の目標で、確認した決算公告には売上高が載っていない。分かるのは損失と、増資で厚くなった純資産である。
それでも、登記簿は雄弁である。2026年6月に取得した履歴事項全部証明書には、普通株式のほかに6種類の優先株式(配当や会社清算時の分配などで普通株式に優先する権利を付けた株式)が載っている。そのうち2つは、名前の末尾に「2」が付く。そして最後のB種の1株の値段は、シリーズAのA種のおよそ6.8倍だった。この記事では、7種類の株式が発行された順序と値段を登記から並べる。そのうえで決算公告3期分、会社の発表、社会保険の被保険者数と突き合わせる。
1. シリーズAの3,000円からシリーズBの2万500円へ──約9か月で変わった発行単価

登記の種類株式(権利の内容が異なる複数の種類の株式)の内容欄には、それぞれの優先株式を普通株式に転換するときの基準になる「取得価額」の当初値が書かれている。A種は3,000円、B種は20,500円である。J-KISSの転換ではなく新たに払い込まれた各回の増資で増えた資本金の2倍を発行株数で割ると、どの回もこの値と1円単位まで一致する。S種からA2種までは、払い込まれた額の半分が資本金に、残り半分が資本準備金(株主の払込額のうち資本金にしなかった部分)に入ったことが、決算公告の資本準備金の額でも裏づけられる。A3種とB種はまだ決算公告に載っていないが、同じ半額組入れを前提にした計算が、登記の取得価額とも、残余財産の優先分配額とも一致する。この値は、その回の投資家が1株あたりに払い込んだ額と見ていい。登記からは払込の総額は分かるが、払込が金銭だけで行われたかまでは書かれていない。
会社がシリーズAと呼ぶ増資では、A種が2025年6月6日に47万6,671株、7月10日に20万338株発行された。シリーズBのB種は、2026年3月31日に7万3,172株が新たな払込で、4,878株が第4回J-KISSの転換で発行され、4月27日に5万3,851株が追加された。合計13万1,901株である。A種の最後の発行(2025年7月10日)からB種の最初の発行(2026年3月31日)までおよそ9か月で、1株の発行単価は3,000円から20,500円へ、約6.8倍になった。A種とB種は権利の中身が違う種類株式なので、これは同じ株式の値上がりではなく、異なる種類の発行単価の比である。
その間の2025年12月4日には、A3種24万1,051株が1株3,600円で発行されている。会社はこの回を「シリーズA エクステンション」、つまりシリーズAの延長として発表した。値段はA種の2割増しにとどまる。延長ラウンドの値段は、12月の払込より前に合意されていた可能性がある。この回に参加した個人投資家向けファンド「イークラウドNEXT」第1号は、運営会社の発表によれば、募集が2025年8月12日から10月23日まで、組成の完了が2025年10月だった。ただし、3,600円という値段がいつ合意されたかは確認できない。B種の値段がいつ決まったかも分からない。そのため本記事の期間の比較は、条件が合意された日ではなく、登記上の発行日を基準にしている。「A3種の3,600円からB種の20,500円へ4か月で約5.7倍」と延長ラウンドを起点に比べると、シリーズAの延長であるという性格が見えにくくなる。
シリーズAからシリーズBまでに何があったか。会社と公的機関の発表を時系列で並べる。
- 2025年10月27日:高温超伝導マグネット(強い磁場をつくる超伝導の電磁石)の開発にめどをつけたとして、最終実証装置「Helix HARUKA」の製作・建設に着手したと発表
- 2025年11月28日:経済産業大臣が記者会見で、補正予算案のフュージョン(核融合)関連について「新規に200億円、複数年度で600億円ということを考えています」と説明
- 2025年12月8日:アオキスーパーと、将来の核融合発電による電力を対象とする売買契約を結んだと発表(電力の供給はまだ始まっていない)
- 2026年1月8日:社外取締役2名を迎えた新体制を発表
- 2026年3月13日:Helix HARUKAの第1段階の建設地を、核融合科学研究所の敷地内と公表
シリーズBに参加した「イークラウドNEXT」第2号は2025年12月25日に募集を始め、2026年3月に組成を終えている。どの出来事がどれだけ値付けに効いたのかは、公開資料からは分からない。言えるのは、シリーズAの払込からシリーズBの払込までの間に、これらの発表が続いていたことまでである。
2. 1株2万500円は確かな数字か
これだけ大きく動いた数字なので、登記の読み違いではないかを確かめておく。
20,500円という値段の根拠は、登記にあるB種の取得価額と、新たな払込で増えた資本金・発行株数の照合である。この値段から計算した調達額は、会社の発表とも合う。B種は新たな払込の12万7,023株×20,500円が26.04億円で、第4回J-KISSの転換分1億円を足すと27.04億円になる。会社がシリーズB 1stクローズの調達額として発表した約27億円と同じ水準だ。A3種も24万1,051株×3,600円で8.68億円となり、会社がシリーズAエクステンションの調達額として発表した約8.7億円と合う。シリーズAは、登記上のA種の払込20.31億円に対し、会社の発表は融資を含めた約23億円である。差の内訳は確認できない。
1株の単位が途中で変わっていないかも確かめた。登記に株式の分割や併合の記録はなく、普通株式は設立時の300万株のままである。B種の内容欄では、普通株式への転換の基準になる基準価額と取得価額がどちらも20,500円で、当初はB種1株が普通株式1株に転換される。B種1株を普通株式何株分と数えるかで、値段の見え方が変わることはない。
この値段を読むうえでは、別の種類の価格や契約条件と混同しないことも大切だ。
1つは、普通株式を対象とするストックオプションの行使価額である。2025年11月26日に発行された第1回税制適格新株予約権の行使価額は1,260円だった。税制適格の扱いを受けるには、行使価額を付与契約時の1株の時価以上にする必要がある。この新株予約権が要件を満たす前提では、その判定に使われた普通株式1株の算定額は1,260円以下ということになる。評価日や算定方法は確認できず、普通株式の取引価格を示す数字ではない。それでも、同じ時期のA3種の3,600円が、清算時の優先分配などの権利が付いた優先株式の値段であり、普通株式の値段とは別物であることは読み取れる。
もう1つは、第4回J-KISS型新株予約権(あらかじめ決めた条件で株式を受け取れる権利)の条件だ。J-KISSは、株式の値段を決めずに先に資金を受け取り、次の本格的な増資のときに、その回の値段(または割り引いた値段)で株式に転換する新株予約権である。転換の値段には「評価額上限」が付き、会社の評価がどれだけ高くなっても、上限の評価額で換算した値段より高くはならない。2026年1月30日に1億円分発行された第4回では、この上限が1,000億円と定められていた。上限は転換の条件であって、その時点の会社の評価額や、次の増資で想定された評価額を示すものではない。言えるのは、B種の発行の約2か月前に、転換条件の上限として1,000億円という桁が置かれていたことまでだ。第4回の転換価額は3月23日に20,500円に変更され、3月31日にB種4,878株に転換された。最終的な転換の値段は、B種の新たな払込の値段と同じである。
ここまでの照合で、20,500円が登記上のB種の払込の値段であることは確かめられた。ただし、1株の値段の倍率がそのまま会社の評価額の倍率になるわけではない。全株式数は、A種の最後の発行時点の約420万株から、B種の時点の約463万株へ約1割増えている。また、優先株式の値段が上がったことが、普通株式を含む会社全体の価値が同じ割合で上がったことを意味するわけでもない。
3. 「S」と「S2」、「A」と「A2」──末尾に2が付く株式の正体
7種類の株式を、発行された順に並べるとこうなる。
| 種類 | 発行日 | 1株の払込額 | 発行株数 | 株式での払込額 | 由来 |
|---|---|---|---|---|---|
| 普通株式 | 設立時 | 1円 | 300万株 | 300万円 | 設立以来増えていない |
| S種優先株式 | 2022年11月〜2023年4月(3回) | 2,667円 | 28万7,966株 | 7.68億円 | 新規の払込による増資 |
| S2種優先株式 | 2023年4月4日 | 500円 | 15万株 | 0.75億円 | 第1回・第2回J-KISSの転換 |
| A種優先株式 | 2025年6月・7月(2回) | 3,000円 | 67万7,009株 | 20.31億円 | 新規の払込による増資 |
| A2種優先株式 | 2025年6月6日 | 2,700円 | 5万5,554株 | 1.50億円 | 第3回J-KISSの転換 |
| A3種優先株式 | 2025年12月4日 | 3,600円 | 24万1,051株 | 8.68億円 | 新規の払込による増資 |
| B種優先株式 | 2026年3月・4月(3回) | 20,500円 | 13万1,901株 | 27.04億円 | 新規の払込による増資+第4回J-KISSの転換(1億円) |
出典:履歴事項全部証明書(2026年6月9日取得)。株式での払込額は1株の払込額×発行株数
S2種とA2種は、J-KISSを転換するために設けられた種類である。J-KISSの保有者は、次の増資の投資家より先にリスクを取った分、安い値段で株式を受け取る。値段が違えば、優先株式の権利の基準(取得価額や残余財産の優先分配額)も変わるため、同じS種・A種には入れられず、別の種類が立てられた。
その値段の決まり方が、条項からそのまま読める。2022年4月と5月に発行された第1回・第2回J-KISS(計15個、7,500万円)は、評価額上限が15億円、割引率は2割だった。15億円を当時の普通株式300万株で割ると500円。S種の2,667円に2割引を当てた2,134円より安いので、上限の側が使われ、S2種は1株500円になった。金額から、会社が2022年5月に発表した「Pre-Seedラウンド6,500万円」と、その直後の追加調達にあたるとみられる。創業期に先に資金を出した投資家は、S種の投資家の5分の1以下の値段で株式を受け取った計算になる。
S種の最初の払込は、登記では2022年11月の1.5億円である。会社の発表ではKDDI Green Partners FundとNikon-SBI Innovation Fundが引受先とされた(発表に金額は書かれていない)。2023年4月には、SBIインベストメントをリード投資家とする「seedラウンド約8億円」が発表された。この約8億円がどの払込を含むかは発表に書かれていないが、登記ではS種は3回に分けて計7.68億円が払い込まれており、その合計に近い。
2024年12月の第3回J-KISS(17個、1.7億円)は、評価額上限が120億円、割引率は1割。A種3,000円の1割引で2,700円がA2種の値段になった。17個のうち15個がA2種に転換され、2個(2,000万円分)は2026年6月の登記時点でも新株予約権のまま残っている。
評価額上限は15億円、120億円、1,000億円と、発行のたびに桁が上がった。上限は会社と投資家が交渉で決める転換の条件で、評価額そのものではない。条項から確かに言えるのは、この契約条件が4年足らずで15億円から1,000億円へ変わったことまでだ。
普通株式は設立時の300万株から1株も増えていない。増資はすべて優先株式で行われ、2026年4月27日時点の発行済株式454万3,481株に占める普通株式は66.0%である。普通株式を誰が持っているかは登記には載っていない。
4. 推定評価額は約950億円──2026年4月時点の参考計算

B種の1株20,500円を、2026年4月27日時点の全株式数に当てはめると、全株式数ベースの推定評価額(上場企業の時価総額に相当)は約950億円になる。ただしこれは、B種の値段を権利の違う他の種類の株式にもそのまま当てはめた参考値である。たとえば、設立時に1株1円で発行された普通株式300万株も、同じ20,500円で換算すると615億円になる。全株式数は、発行済株式454万3,481株に、まだ行使されていない新株予約権の分を足した約463万5,000株だ。内訳の1つは、いわゆるストックオプションにあたる2回の新株予約権の計8万4,000株分だ(第1回2万個・行使価額950円、第1回税制適格6万4,000個・同1,260円、いずれも1個1株)。もう1つは、残っている第3回J-KISS 2個(2,000万円分)をA2種の転換価額2,700円で換算した約7,400株分である。これら未行使の新株予約権の目的株式数にB種の値段を掛けた分が約19億円で、行使価額や行使条件は反映していない。
同じ方法で過去の時点を計算すると、S種の最後の発行(2023年4月)時点で約92億円、A種の最後の発行(2025年7月)時点で約126億円、A3種(2025年12月)時点で約162億円だった。A種の最後の発行(2025年7月10日)からB種の4月27日時点までの約9か月半で、約7.5倍になった計算だ。1株の値段の倍率(約6.8倍)より大きいのは、その間に全株式数が約1割増えたためである。
この数字は、いちばん新しい種類株式の値段で、普通株式や他の優先株式まで一律に換算した参考計算である。種類株式ごとに優先分配額などの権利が違うため、各株式の経済的な価値は同じではない。会社が公表した評価額でも、実際に株式が売買された価格でもない。
そして、この試算は2026年4月時点のものだ。会社は10月8日、シリーズBの2ndクローズとして32.3億円の調達完了を発表した。手元の登記は6月取得のため、2ndクローズでどの種類の株式が何株、いくらで発行されたかは確認できない。会社の発表は、7月に発表した安藤ハザマとの資本提携の分が今回の調達に含まれると明記し、同じ日に資本業務提携を発表した富士電機を出資者の一覧に載せている。
5. 「累計調達額98億円」に対し、優先株式の発行に対応する払込は約66億円

2026年4月28日、会社はシリーズB 1stクローズで約27億円を調達し、累計調達額が約98億円になったと発表した。この累計には「補助金・融資を含む」と明記されている。登記から確認できるB種の払込は27.04億円で、発表の約27億円とほぼ同じだ。
一方、同じ4月27日時点で、登記に記録された優先株式6種類の払込は合計で約66億円になる(第3章の表から普通株式を除いた合計。J-KISSとして先に受け取り、株式に転換した資金を含む)。98億円との差は約32億円で、会社はこの差の内訳を公表していない。4月の発表は、会社が4月6日に採択を発表した東京都のイノベーション促進事業(3年間で最大10億円)と「あわせ」て累計約98億円としている。2023年10月13日には、文部科学省のSBIR(中小企業イノベーション創出推進事業)フェーズ3で「1件あたりの最大額である20億円の補助金交付が決定した」と発表した。ただし、補助金をいくら累計に算入したのか、実際にいくら受け取ったのかは公表されていない。
会社の累計の推移を並べると、差の大半は説明がつく。累計は2025年7月に約52億円、12月に約60億円、2026年4月に約98億円と発表されてきた。12月から4月の増加約38億円は、B種の新規の払込約26億円、第4回J-KISSの1億円、東京都の上限10億円の合計(約37億円)に近い。7月の約52億円も、それまでの株式と新株予約権の払込約30億円に、SBIRの20億円と融資を足すと近い数字になる。これは会社の発表をもとにした編集部の推計で、東京都とSBIRの補助金は上限額のまま算入されているとみられる。融資については、2025年7月のシリーズAの発表に日本政策金融公庫などからの融資を含むと記されている。2025年9月期の貸借対照表(期末の資産と、負債・純資産の内訳を示す表)では、固定負債は5,800万円だった。流動負債に含まれる借入があるかどうかは、公告の項目からは分からない。
数字の受け取り方として押さえておきたいのは、「累計調達額」は株主から受け取ったお金の合計ではなく、採択された補助金の枠や借入も含んだ会社の発表値だということだ。優先株式の発行に対応する払込、つまり返す必要がなく、その代わりに会社の持ち分を渡したお金は、登記から約66億円と計算できる。このうち約3.25億円は、先に払い込まれていたJ-KISSが株式に転換された分である。10月の発表では、シリーズBの調達額は2ndクローズとあわせて59.3億円、累計調達額は130.5億円になった。この累計には岐阜県の補助金(最大0.1億円)も含まれる。経済産業省のフュージョンエネルギー発電実証推進事業補助金の条件付採択については、会社は「今回の資金調達額には含まれません」と書いている。
6. 決算公告──損失は4.45億円まで広がった

確認できた決算公告は3期分で、売上高や営業損益は載っていない。損益として分かるのは当期純損失(税金などを反映した最終的な損益)だけだ。
| 決算期 | 当期純損失 | 総資産 | 純資産 | 負債 | 資本金 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022年9月期(第1期) | ▲0.21億円 | 0.58億円 | 0.57億円 | 0.01億円 | 0.03億円 |
| 2023年9月期(第2期) | ▲0.86億円(逆算) | ‐ | ‐ | ‐ | ‐ |
| 2024年9月期(第3期) | ▲1.39億円 | 6.80億円 | 6.00億円 | 0.80億円 | 1.00億円 |
| 2025年9月期(第4期) | ▲4.45億円 | 25.65億円 | 23.57億円 | 2.08億円 | 1.00億円 |
出典:決算公告(第1・3・4期)。単体。第1期は設立日の2021年10月22日から約11か月の決算。第1期の純資産の大半は、払い込まれたJ-KISS(新株予約権)7,500万円で、株主資本は▲0.18億円だった
第2期(2023年9月期)の公告は確認できていない。第3期の貸借対照表にある利益剰余金▲2億4,611万円から、第1期と第3期の損失を差し引くと、第2期の損失は8,593万円と逆算できる。期中に配当など他の利益剰余金の増減がなかった場合の計算である。
純損失は第1期の0.21億円から第4期の4.45億円まで広がった。2025年9月期の総資産25.65億円のうち、流動資産が25.20億円を占める。負債は2.08億円で、純資産の大半は株主の払込だ。2025年9月期末の資本剰余金(資本準備金など、払込のうち資本金以外に積んだ部分)29.27億円と資本金1億円を足すと30.27億円になる。これは、S種・S2種・A種・A2種の払込を各回の資本金増加額の2倍で数えた額に、設立時の普通株式の払込300万円を足した合計(30億2,703万2,356円)と千円単位で一致する。優先株式を1株の単価×株数で数えると、J-KISS転換時の端数の分だけ約4,200円少ない。会計上の損失がそのまま現金の減少を意味するわけではなく、現預金の残高も公告には載っていないため、手元資金が何年分あるかは公告からは分からない。補助金の受け取りが損益にどう計上されているかも、公告の項目からは読めない。
なお、資本金は2023年9月と2025年9月の2回、それぞれ4.25億円と11.91億円から1億円に減らされている。減資(登記上の資本金を減らす手続き)で減らした額はいずれも全額が資本準備金に移されており、純資産の中での振り替えで、会社のお金は増えも減りもしない。確認できた第1期と第3期の公告は、どちらもこの減資の公告に添えられた貸借対照表である。資本金が1億円だからといって、会社の規模が1億円というわけではない。
7. 2025年12月、取締役会の設置と代表取締役の変更
登記簿の役員欄と機関設計の欄は、2025年12月16日に大きく書き換わっている。この日、取締役会と監査役が置かれ、株式の譲渡を承認する機関が株主総会から取締役会に変わった。公告をする方法も同じ日付で変更されている。
2022年1月から代表取締役は2人だった。設立時からの代表取締役で、共同創業者として最高技術責任者(CTO)を務める人物と、2022年1月に就任した田口昂哉氏である。会社の発表によれば、CTOは核融合科学研究所で炉設計研究の最前線に携わってきた研究者だ。12月16日、CTOは代表取締役と取締役を退任し、田口氏が単独の代表取締役になった。副CTOも同じ日に取締役を退任している。同じ日に、リバネスの代表とSBI Holdings USAのCEOが社外取締役に、もう1人が社外監査役に就いた。会社の2026年1月の発表では、CTOは執行役員CTOとされ、4月の発表でも技術開発の中心として紹介されている。リバネスの代表は2022年5月の会社の発表で、創業期の出資者の一人として名前が挙がっていた人物だ。出資の条件や現在の保有状況は、公開資料からは分からない。SBIグループのSBIインベストメントは、seedラウンドのリード投資家である。
会社は2026年1月8日の発表で、この変更を「取締役会設置会社としてガバナンス強化を実施するとともに、執行役員制度の導入により機動的な事業推進を実現する体制に移行しました」と説明している。新体制への移行は、B種の発行が始まる約3か月半前だった。

社会保険の被保険者数は、2025年3月から9月まで13人で横ばいだった。2025年10月に14人、2026年3月に15人となり、B種の最初の発行(3月31日)のあとの4月に19人と増え、9月には26人になった。1年半で2倍である。被保険者数は従業員数そのものではないが、B種の発行後、4月以降に増え方が速くなっている。
8. 2ndクローズの値段と、2026年9月期の公告
「核融合の研究には70年くらいの歴史がある中で、常に『30年後に実現出来る』と言われ続けてきましたが、まだ出来ていません。」田口氏は2025年10月6日公開のAichi Deeptech Launchpadのインタビューでこう語り、あいまいな「発電実証」ではなく「実用発電」という言葉を使う理由を説明している。株式の値段は3年あまりで大きく上がったが、炉が電気を送り出した実績はまだない。発電はこれからの目標である。
B種の発行で、株式で集めたお金は2026年1〜4月に約27億円増えた(1月に払い込まれた第4回J-KISSの転換分1億円を含む)。これは2025年9月期末の純資産23.57億円を上回る額である。B種の発行を含む最初の期が、2026年9月期である。その純損益がどう変わるかは、次の決算公告で数字になる。ただし、補助金がいくら損益に入ったかまでは、公告の項目からは特定できないかもしれない。
もう一つの問いは、10月に発表された2ndクローズの値段である。32.3億円がB種と同じ20,500円で発行されたのか、別の種類株式が設けられたのか。富士電機や安藤ハザマといった事業会社の出資が、どの種類の株式で入ったのか。登記に7種類目の優先株式が加わるのか、B種の株数が増えるだけなのか。1株500円で株式を受け取った創業期の投資家から、2万500円で入ったB種の投資家まで、株主ごとに取得した値段も権利の条件も違う。次の登記では、追加で発行された株式の種類・株数と資本金の変動を確かめられる。発行の条件によっては、そこから1株の値段を計算でき、B種と同じ20,500円だったかを検証できる。
計算方法(本記事固有のメモ)
- 各種類株式の1株の払込額は、登記の種類株式の内容欄にある取得価額(基準価額)の当初値で、新たに払い込まれた各回の資本金増加額の2倍を発行株数で割った値と一致する(実測。J-KISSの転換分は次項)。S種2,667円、A種3,000円、A3種3,600円、B種20,500円。B種の第3回目の発行(2026年4月27日、5万3,851株)も資本金増加額5億5,197万2,750円の2倍が20,500円×株数と一致する
- J-KISSの転換は、払込済みの新株予約権の発行価額を転換価額で割り、1株未満を切り捨てた株数が発行されたもので、新規の払込のように資本金増加額の2倍と株数×単価が1円単位で一致するわけではない(例:A2種55,554株×2,700円=1億4,999万5,800円に対し、資本金増加額の2倍は1億5,000万16円)。第1回・第2回は評価額上限15億円÷普通株式300万株=500円、第3回は登記の変更(2025年5月22日)で転換価額2,700円に固定、第4回は登記の変更(2026年3月23日)で転換価額20,500円に固定
- 第3回J-KISSは、登記で転換価額が2025年5月22日の変更により2,700円とされ、個数は2025年6月6日の変更で17個から2個になっている(15個がA2種5万5,554株に転換)
- 推定評価額の全株式数は、評価時点の発行済株式+その時点に存在した新株予約権の目的株式数。第1回新株予約権は2万個(2023年9月発行)、第1回税制適格新株予約権は6万4,000個(2025年11月発行)で、2026年6月の登記まで個数の変更記録はない。第3回J-KISSの残り2個は2,000万円÷2,700円で7,407株と数えた(保有者ごとに端数を切り捨てると7,406株になりうるが、評価額への影響は約2万円)。各時点の全株式数は、S種最終(2023年4月4日)343万7,966株、A種最終(2025年7月10日)419万7,936株、A3種(2025年12月4日)450万2,987株、B種(2026年4月27日)463万4,888株
- 税制適格新株予約権の行使価額が付与契約時の時価以上でなければならないのは、租税特別措置法第29条の2の要件による。会社が普通株式の時価をどう算定したかは公表されていない
- 新株予約権は、行使価額(第1回950円、第1回税制適格1,260円)の払込を差し引かずに目的株式数をそのまま加えている
- 種類株式はいずれも当初の転換比率1対1(基準価額÷取得価額)で、調整は生じていないと仮定した
- 株式での払込額の合計約66億円は、S種7.68億円、S2種0.75億円、A種20.31億円、A2種1.50億円、A3種8.68億円、B種27.04億円の合計(65.96億円)。普通株式300万円と、未転換の第3回J-KISS 2,000万円は含まない
- 第2期の純損失は、第3期末の利益剰余金▲2億4,611万4千円−第1期▲2,142万3千円−第3期▲1億3,876万4千円で求めた
- 2024年9月期末の資本金1億円+資本準備金7億4,600万5千円=8億4,600万5千円は、普通株式300万円+S種7億6,800万5,322円+S2種7,500万円余りの合計と千円単位で一致する。2023年9月の減資額は、減資公告の記載で3億2,450万2,670円(減資前の資本金は、2023年4月4日のS2種の発行2回を経た4億2,450万2,670円)
- 第4期の決算公告は資産合計25億6,479万2千円、負債・純資産合計も同額で、流動資産25億1,982万8千円、固定資産4,463万2千円、繰延資産33万2千円の合計と一致する
- 被保険者数は社会保険の被保険者数(各月時点)
参考にした主な外部情報
- イークラウド株式会社 発表(「イークラウドNEXT」の募集開始 2025年8月12日・2025年12月22日/Helical Fusion対象ファンドの組成完了 2026年4月28日)
- 経済産業大臣 閣議後記者会見(2025年11月28日、経済産業省サイト)
- 田口昂哉氏インタビュー(Aichi Deeptech Launchpad、2025年10月6日)
- 株式会社Helical Fusion プレスリリース(Pre-Seed 2022年5月10日/KDDI・ニコン系ファンドからの調達 2022年11月8日/seedラウンド 2023年4月5日/SBIRフェーズ3採択 2023年10月13日/シリーズA 2025年7月11日/シリーズAエクステンション 2025年12月5日/新体制 2026年1月8日/東京都の採択 2026年4月6日/シリーズB 1stクローズ 2026年4月28日/安藤ハザマとの資本業務提携 2026年7月6日/経済産業省補助金の条件付採択 2026年8月31日/シリーズB 2ndクローズ・富士電機との資本業務提携 2026年10月8日、いずれもPR TIMES)
ファクトシート
- 商号:株式会社Helical Fusion
- 本店:東京都千代田区大手町二丁目2番1号(国税庁の法人番号公表サイトの変更履歴で2026年7月14日に中央区銀座から移転。会社は8月3日に本社移転を発表)
- 設立:2021年10月22日
- 決算期:9月
- 代表取締役:田口昂哉
- 機関設計:取締役会設置会社・監査役設置会社(2025年12月16日設定)
- 事業目的:ヘリカル型商用核融合炉の製造設計とそのために必要な技術開発及び技術提供ほか
- 発行済株式総数:454万3,481株(普通株式300万株、S種28万7,966株、S2種15万株、A種67万7,009株、A2種5万5,554株、A3種24万1,051株、B種13万1,901株。2026年4月27日時点)
- 資本金:18億8,587万7,551円(2026年4月27日時点)
- 新株予約権:第1回2万個、第1回税制適格6万4,000個、第3回J-KISS 2個(2026年6月の登記時点)
- 社会保険の被保険者数:26人(2026年9月時点)