派遣・有料職業紹介の許可マップ ─ 二刀流「両方持ち」9,710社が映す人材ビジネスの三層構造
派遣3.7万・有料職業紹介3.2万の許可を法人番号で名寄せすると、派遣専業・紹介専業に加え、両方を扱える二刀流の「両方持ち」が9,710社。三層で比べると両方持ちが最も規模が大きく、決算公告の開示率も上場率も最高の中核層だった。

人を採りたい会社と、働きたい人をつなぐ「人材ビジネス」。その中でも許可が要る労働者派遣と有料職業紹介という2つの許可から、人材ビジネスの姿を読む。Compalyze が厚生労働省の許認可データを集計したところ、現在有効な許可は派遣が約3.7万、紹介が約3.2万。所在地を都道府県別に並べると東京への集中が見えるが、許可を法人番号で名寄せすると、派遣と紹介の両方を扱える二刀流の事業者が9,710社あり、派遣専業・紹介専業・両方持ちの三層構造が浮かぶ。そして三層を規模・歴史・開示で比べると、二刀流の「両方持ち」こそが最も規模が大きく、決算公告の開示率も上場率も三層で最高の、人材ビジネスの中核層だった。
この記事のポイント
- 許可を法人番号で名寄せすると、派遣だけ21,222社・紹介だけ15,604社に対し、派遣・紹介の両方を扱える二刀流の事業者が9,710社(派遣を持つ法人の31.4%、紹介を持つ法人の38.4%)
- 二刀流の「両方持ち」は三層で最も規模が大きく(従業員50人以上40.1%・1000人超2.42%)、決算公告の開示率(17.9%)も上場率(1.28%)も三層で最高。派遣専業は最も古く(中央値32年)、紹介専業は最も若く小規模(7年・従業員10人以下が51.8%)
- 紹介が派遣を上回る県は鳥取(紹介/派遣 比1.52)・徳島(1.25)・奈良(1.15)。製造業の集積する愛知(0.74)・神奈川・兵庫(ともに0.61)は派遣が厚い
1. まず所在地 ─ 東京に許可の3分の1が集まる

労働者派遣と有料職業紹介、どちらの所在地を見ても東京が突出している。東京は紹介11,542・派遣11,468でともに約1.1万。合計では東京23,010に対し2位の大阪は6,847で、約3.4倍だ。神奈川、愛知が続くが、いずれも東京とは大きな差がある。

派遣と紹介を足し合わせた68,080件の許可のうち、東京都所在が23,010、率にして33.8%を占める。人材ビジネスの許可の3つに1つが東京に所在している計算だ。
ただし、この所在地集中はそのまま読まない方がいい。労働者派遣事業・有料職業紹介事業の許可は、いずれも厚生労働大臣の許可だ(建設業や宅地建物取引業のような都道府県知事許可の区分はない)。手続きは事業所の所在地を管轄する都道府県労働局を経由するが、許可主体は大臣に一本化されている。そのため全国に拠点を持つ大手でも、許可は本社(主たる事業所)の所在地に寄って計上されやすい。東京の数字には、各地で実際に事業を展開しながら本社が東京にあるだけ、という事業者が相当数含まれているとみられる。所在地の分布は、実際の求人需要や就業地の分布とは必ずしも一致しない。
2. 許可の裏にある三層 ─ 「両方持ち」9,710社
ここからが、件数の表だけでは見えない話だ。派遣と紹介の許可を、それぞれ別物として数えるのをやめ、許可の保有主体を法人番号で名寄せして突き合わせると、人材ビジネスは三つの層に分かれる。

名寄せが確定した範囲では、派遣の許可を持つ法人が30,932、紹介の許可を持つ法人が25,314。このうち、
- 派遣だけを持つ法人:21,222社
- 派遣・紹介の両方を持つ法人:9,710社
- 紹介だけを持つ法人:15,604社
の三層になる。真ん中の「両方持ち」9,710社は、派遣を持つ法人の31.4%、紹介を持つ法人の38.4%にあたる。紹介の側から見ると、許可を持つ法人の4割近くは派遣も手がける、派遣・紹介の両方を扱える二刀流の事業者だということになる。
人材ビジネスは「派遣会社」と「紹介会社」にきれいに分かれているわけではない。中核には、現場に人を送る派遣と、転職を仲立ちする紹介の両輪を回す事業者の塊がある。許可という「できることのタグ」を法人単位で重ねて初めて、この中核層が見えてくる。
3. 二刀流の代表業態 ─ 紹介予定派遣
両方持ち9,710社は、最初から両方を備えていたわけではない。後から加えた側の許可がいつ有効になったかをみると、9,710社の42.0%(4,078社)が、後発カテゴリの許可を2020年以降に取得している。比較的近年になって二刀流へ広げた事業者が、両方持ちの4割を占める。
加える方向にも偏りがある。現在の許可の起算日でみると、派遣を先に取って後から紹介を足したケースが、紹介を先に取って後から派遣を足したケースの2倍以上だった。ただし許可は数年ごとの更新で有効期間の起算日が直近に動くため、これは確定した「取得順」ではなく、現在有効な許可の起算日でみた前後関係である点には留保が要る。それでも、前後がはっきりつくものでは「派遣→紹介」が多い。
派遣と紹介の両方の許可を要する代表的な業態が紹介予定派遣だ。最長6か月の派遣を経て派遣先が直接雇用する仕組みで、派遣の入口と紹介の出口を一社でつなぎ、有料職業紹介として直接雇用へ橋渡しするには、派遣と有料職業紹介の両方の許可がいる。派遣で現場の人材を回しながら、その先に転職を仲立ちする紹介を重ねていく ─ 二刀流化の動きには、こうした事業の地続きさがうかがえる。
4. 紹介が厚い県、派遣が厚い県
全国でみると、紹介を持つ法人は派遣を持つ法人の約0.82倍(紹介25,314÷派遣30,932)と、派遣がやや上回る。ところが県別に法人数で比をとると、その大小は地域でくっきり入れ替わる。

紹介を持つ法人数を派遣を持つ法人数で割った比でみると、紹介が派遣を上回る(比が1.0を超える)のは鳥取(1.52)・徳島(1.25)・奈良(1.15)・宮崎(1.05)・京都(1.02)・岩手(1.02)。中国・四国・近畿の一部と、宮崎・岩手といった地方圏に紹介優位の県が並ぶ。
逆に派遣が厚いのは、製造業の集積する地域だ。愛知は紹介/派遣 比0.74、神奈川と兵庫はともに0.61。山口(0.37)・福島(0.41)・長崎(0.45)・青森(0.48)・新潟(0.48)も派遣に大きく傾く。境界にあたるのが大都市圏で、東京は0.99とほぼ拮抗している。
工場の現場で必要なときに人を確保する派遣の比重が、ものづくりの集積地で相対的に高い。一方、大規模な製造拠点が相対的に少なく、農業・観光・地域のサービス業や行政が雇用の受け皿になる県では、設備の軽い紹介の比重が上がりやすい。その土地にどんな仕事が多いかと、派遣・紹介の許可の構成には、ゆるやかな対応がありそうだ(ただし許可は所在地ベースで、業種別の派遣先・紹介先のデータはないため、背景の一つにとどまる)。
5. 三層の性格 ─ 二刀流が最大の中核、派遣は老舗、紹介は若い小規模
三層は「見つけて終わり」ではない。それぞれを規模・歴史・開示・上場で比べると、性格がはっきり分かれる。

二刀流の「両方持ち」は、三層で最も規模が大きい。 従業員50人以上の率は40.1%で、派遣のみ(31.4%)・紹介のみ(8.6%)を上回る。1000人超の大企業率も2.42%で三層最多。そして決算公告の開示率(17.9%)も上場率(1.28%)も三層で最高だ。派遣と紹介の両輪を回す層は、規模でも、財務情報を公にする度合いでも、人材ビジネスの institutional な中核にあたる。
ただし、最も古いわけではない。設立からの年数(中央値)は両方持ち17年に対し、最も古いのは派遣専業の32年。製造派遣などの老舗が派遣のみの層を厚くしている。紹介専業は最も若く中央値7年で、半数を超える51.8%が従業員10人以下の小規模法人。決算公告の開示率も8.5%と三層で最も低い。近年生まれた小規模の紹介会社が、紹介のみの層の多くを占めている。
この差は制度の裏づけとも整合する。厚生労働省の許可基準では、労働者派遣事業の許可に基準資産額2,000万円以上・自己名義の現金預金1,500万円以上(いずれも事業所ごとに加算)が求められ、有料職業紹介事業にも資産要件がある。両方持ちは、少なくとも派遣・紹介それぞれの資産要件を満たしている事業者だということになる。規模が大きく開示・上場の度合いが高いという外形は、こうした参入のハードルの違いとも符合しうる。
実際、両方持ちの中には上場企業も含まれる。クラウドワークス、キャリアデザインセンター、メンバーズ、ビーウィズ、セラク、共同ピーアール、ジャパニアス、キャリアといった、HR・IT・PR領域の中堅上場企業がこの層に名を連ねる(リクルートやパーソル、パソナといった最大手は持株会社構造などにより、この名寄せ層には直接は現れない)。派遣と紹介の両方を担う二刀流の層が、上場規模の事業者を含む中核層であることがうかがえる。
6. 性格の違う2つの波
派遣と紹介は、許可の「貯まり方」も違う。現在有効な許可について、有効期間の起算年を年次で並べると、2つの異なる波が見えてくる。

派遣は2017〜2018年に大きな山がある。とくに2018年は9,330件で突出する。2015年の労働者派遣法改正で、特定労働者派遣事業(届出制)が廃止されて許可制へ一本化され、経過措置の期限に向けて多くの事業者が許可を取り直した時期にあたる。山を越えたあとは年1,200〜1,650件あたりで定常化している。
対する紹介は、規制起点の急な山がない。2010年代は緩やかに増え、2020年代に入ってからむしろ持続的に積み上がっている。2023年2,658・2024年3,230・2025年3,342と、近年ほど件数が多い。
ただし、ここは慎重に読みたい。現在有効な許可の起算年は更新で直近に動くため、更新効果と純粋な新規参入を断面だけでは切り分けにくい。派遣の2018年の山は経過措置終了という制度要因で明確に説明できるが、紹介の近年の積み上がりは「新規参入の増加」とまでは断定せず、転職市場の拡大という背景と整合的な傾向にとどめて読むのが安全だ。前章でみたとおり紹介専業が若く(中央値7年)小規模(従業員10人以下51.8%)であることとは整合的だが、断面のグラフから因果を断ずることはできない。
派遣は法改正という制度の節目で動く波、紹介は背景に転職市場の拡大が考えられる、緩やかに積み上がる波 ─ 同じ人材ビジネスでも、許可の貯まり方の性格が異なる。なお年次の形を「業歴の長さ」と読み替えないよう注意したい。
7. 許可マップが映すもの
労働者派遣と有料職業紹介の許可を地図と法人単位で並べ直すと、件数の表だけでは見えないものが浮かぶ。所在地でみれば東京への集中だが、許可はいずれも厚生労働大臣の一本化された許可であり、本社所在地に寄って計上される大手の影響を含む。需要そのものの地図ではない。法人で名寄せすれば、派遣専業・紹介専業・両方持ちの三層が現れ、中核には9,710社の二刀流がいる。
そしてその三層は、規模・歴史・開示で性格が違う。二刀流の「両方持ち」は最も規模が大きく、開示率も上場率も三層で最高の中核層。派遣専業は最も古い老舗が厚く、紹介専業は近年生まれた小規模の事業者が多い。地域に目を移せば、製造業の集積地は派遣が厚く、地方圏では紹介の比重が上がる。許可の貯まり方も、派遣は制度の節目で、紹介は背景に転職市場の拡大が考えられる形で、別々の波を描く。
許可は「事業規模」そのものではなく「できることのタグ」だが、そのタグを所在地・法人・規模・時間の方向から並べ直すと、人材ビジネスがいまどこに、どんな形で集積しているかの土台が見えてくる。
調査概要・この記事のメモ
- データ:厚生労働省の許認可データ(労働者派遣事業・有料職業紹介事業)を Compalyze が構造化したもの。2026年6月時点で現に有効な許可を対象に集計した。許可件数は労働者派遣 36,507、有料職業紹介 31,573。
- 集計単位:第1章は許可(事業者)単位で、所在地(許認可データ上の所在地)の都道府県別に集計した。第6章は許可(事業者)単位で、有効期間の起算年別に集計した。「68,080件」「東京23,010」等は派遣と紹介を足した許可件数で、同一法人が両方の許可を持つ場合を二重に含む延べ件数。第2〜5章の三層構造・両方持ち・紹介/派遣 比・三層の性格づけは、許可の保有主体を「法人番号で名寄せ確定できた分」を母数に、法人単位のユニーク数で集計した(派遣を持つ法人30,932・紹介を持つ法人25,314)。名寄せが確定していない主体・個人事業主は母数から外れるため、件数ベースの全数とは一致しない。
- 三層構造の定義:名寄せ確定済みの法人について、派遣の許可のみ=「派遣のみ」、紹介の許可のみ=「紹介のみ」、両方の許可を持つ=「両方持ち」。両方持ち9,710社の「2020年以降」「派遣→紹介」の判定は、各法人の派遣・紹介それぞれの最も古い有効期間起算日を比べ、後発カテゴリの起算日で判定した。許可は更新で起算日が直近に動くため、これは確定した取得順ではなく現在有効な許可の起算日でみた前後関係である。
- 三層の性格づけ:年齢(設立からの年数)は中央値。従業員50人以上率・1000人超率・決算公告開示率・上場率・従業員10人以下率は、各層の名寄せ確定法人を母数とした割合。資産要件は厚生労働省の許可基準(労働者派遣事業:基準資産額2,000万円以上・現金預金1,500万円以上(事業所ごとに加算)、有料職業紹介事業:資産要件あり)による。上場企業の実例は、両方持ち層に含まれる名寄せ確定法人のうち上場しているものから挙げた中立な事実であり、特定企業を推奨・評価するものではない。最大手(リクルート・パーソル・パソナ等)は持株会社構造などにより、この名寄せ層には直接は現れない。
- 県別の比:紹介を持つ法人数 ÷ 派遣を持つ法人数。母数が小さい県の振れを避けるため、両カテゴリ合計50法人以上の県のみを比較対象とした。全国の比(約0.82)も同じく法人ベース(紹介25,314÷派遣30,932)。
- スナップショットである点:人材ビジネスの許可は数年ごとに更新され、有効期間の起算日が更新で動くため、本記事は「現在有効な許可」の断面であり、新規参入の年次推移(増減)や事業者の業歴を示すものではない。
- 留意点:許可の件数は事業規模を直接示すものではない(「できることのタグ」の有無)。所在地は法人登記地や実際の就業地・営業エリアと必ずしも一致せず、全国展開する大手は本社所在地で計上されやすい。労働者派遣・有料職業紹介の許可は厚生労働大臣許可に一本化されており(都道府県知事許可の区分はない)、東京集中は全国展開する大手の本社所在地での計上を含む(就業地の分布ではない)。