ソフトバンクホークスは儲かるのか ─ コロナ2年で155億円の赤字、そこから売上509億円・過去最高益への決算
プロ野球の福岡ソフトバンクホークスの決算を分析。2026年2月期は売上高509億円・当期純利益57億円でいずれも過去最高水準。コロナ禍2年で155億円の赤字からのV字回復、ソフトバンクグループ子会社・非上場という球団ビジネスの実像を決算公告から読む。

プロ野球の福岡ソフトバンクホークス。常勝軍団のイメージは強いが、「球団ビジネスとして儲かっているのか」「そもそも上場しているのか」は意外と知られていない。福岡ソフトバンクホークス株式会社が官報に載せた決算公告をたどると、答えははっきりしている。同社は上場しておらず、ソフトバンクグループ傘下の球団運営会社だ。そして業績は、コロナ禍の2年間で累計155億円もの最終赤字を出し、その後も2年は赤字が続いたが、足元では売上高が過去最高の509億円、当期純利益も2期連続で過去最高水準へと回復している。
この記事のポイント
- 2026年2月期の売上高は約509億円(過去最高)、当期純利益は約57億円。前期に続く2期連続の高水準で、純資産も過去最高の318億円
- 最終赤字はコロナ期(2021・2022年)の累計約155億円だけでなく2023・2024年も続き、4期連続。2023〜2024年の赤字は観客減よりも、近藤健介・有原航平・山川穂高ら大型FA補強の人件費と、2020年開業「BOSS E・ZO FUKUOKA」の投資負担が重なったため
- 球団社長はソフトバンクグループのCFO(最高財務責任者)後藤芳光氏が兼任。総資産約1,000億円の大半は、2015年に球団自身が所有者となった本拠地ドームの保有が映っている
上場している? ─ 答えは「非上場・ソフトバンクグループの子会社」
まず素朴な疑問から。福岡ソフトバンクホークスは株式を公開していない。最上位の親会社は孫正義氏が率いるソフトバンクグループで、ホークスはそのグループに属する。だから個人が市場でホークスの株を買うことはできず、上場企業のような株価も存在しない。
球団の歴史は古い。南海鉄道の南海ホークスに始まり、1989年からダイエー、2005年からソフトバンクへと親会社が移ってきた。鉄道→流通→通信・投資と、オーナーの顔ぶれはその時代の主役産業をそのまま映している。
ではグループにぶら下がって赤字を垂れ流しているのかというと、そうではない。決算公告の数字を見るかぎり、コロナ禍という例外期を除けば、球団は自前で利益を出してきた。ここからは、その「儲かり方」を官報の数字で追っていく。
2026年2月期 ─ 売上509億円、過去最高益
決算公告から拾える数字を並べると、直近期がいかに好調かが分かる。
| 決算期 | 売上高 | 当期純利益 | 純資産 |
|---|---|---|---|
| 2021年2月期 | 230億円 | ▲75.2億円 | 181億円 |
| 2022年2月期 | 238億円 | ▲79.8億円 | 261億円 |
| 2023年2月期 | 326億円 | ▲19.6億円 | 240億円 |
| 2024年2月期 | 351億円 | ▲28.0億円 | 212億円 |
| 2025年2月期 | 460億円 | 48.4億円 | 261億円 |
| 2026年2月期 | 509億円 | 57.2億円 | 318億円 |
売上高509億円は、コロナ前のピーク(2020年2月期の325億円)すら大きく上回る、過去最高の水準だ。当期純利益57.2億円も、公告から確認できる範囲で最も高い。前期(48.4億円)から2期連続で高い利益を出し、純資産も過去最高の318億円まで積み上がった。
決算公告の損益計算書まで見ると、2026年2月期は売上509億円に対して営業利益が約79.8億円、営業利益率は約15.7%。経常利益は約61.4億円で、営業利益との差(約18億円)は、後述するドーム保有などにともなう支払利息といった営業外の費用とみられる。球団経営というより、ドーム・ファンクラブ・スポンサー・物販・周辺施設を束ねた興行事業として、かなり厚い利益率だ。

コロナの谷 ─ 2年で155億円の赤字
V字の「谷」がはっきり見えるのが、2021・2022年2月期だ。観客数の制限が球場収入を直撃し、この2年で当期純損失は累計約155億円に達した。コロナ前まで毎期コンスタントに黒字を出していた球団が、観客を入れられないだけでこれだけ振れる ── スタジアムに人を集めて稼ぐ事業の構造が、数字にそのまま出ている。
その間、純資産はいったん181億円まで減った。それでも債務超過には程遠い。ただし、観客が戻り始めても黒字復帰はすぐではなかった。最終損益は2023年2月期も約20億円、2024年2月期も約28億円の赤字で、コロナ期と合わせると4期連続の赤字になる。黒字に転じたのは2025年2月期、売上・利益とも過去最高水準へ戻したのは2026年2月期だ。なぜ観客が戻ってもなお2年赤字が続いたのかは、次の章で見る。

なお同社は総資産が約1,000億円規模、負債も700億円台と、興行会社としては桁外れに大きい。その正体は前受やグッズ在庫ではなく、本拠地ドームの保有にある。みずほPayPayドーム福岡は2012年にソフトバンクが約870億円で取得し、2015年7月には福岡ソフトバンクホークス株式会社自身が名実ともに所有者になった。総資産は2016年2月期の時点ですでに約1,034億円あり、コロナで一時的に膨らんだ数字ではなく、巨大不動産を自前で抱える会社の貸借対照表だとわかる。多くの球団が自治体所有の球場を借りて使うのに対し、ホークスは球団・スタジアム・隣接エンタメ施設を一体で保有する。総資産1,000億円・負債700億円台は、この「ハコを自前で持つ」構造の重みだ。借入だけで膨らんだ会社ではなく、純資産も318億円まで積み上げている。
なぜ赤字が4期も続いたのか ─ 大型補強とE・ZO投資
観客が戻りつつあった2023・2024年もなお赤字だったのは、売れなかったからではない。むしろこの時期、ホークスは勝つための投資を一気に積んでいる。2022年オフに近藤健介・有原航平、2023年オフに山川穂高と、FA市場の大物を立て続けに獲得し、選手人件費が大きく膨らんだ。2024年2月期は最終損益だけでなく営業利益ベースでも約14億円の赤字で、観客動員の回復だけでは吸収しきれない人件費・固定費の増加が効いていたことがうかがえる。
もう一つの重しが、2020年7月に開業した複合エンタメ施設「BOSS E・ZO FUKUOKA」だ。大型施設の開業投資と減価償却は、施設が本格的に稼ぎ始めるまでのあいだ費用として先に乗る。コロナ期の観客制限、大型FA補強、E・ZO投資という三つが重なった数年が、4期連続赤字の中身だと読める(公告だけでは費目の内訳までは特定できない)。その投資が観客の熱狂とE・ZOの稼働になって返ってきたのが、2025年以降の売上・利益の急回復という順序になる。
なぜV字回復できたのか ─ 「野球の外」の収益
回復の背景は、観客が戻ったことだけではない。同社のニュースリリースを追うと、本拠地のみずほPayPayドーム福岡を使った大型音楽イベント(ロックフェス等)、隣接エンタメ施設「BOSS E・ZO FUKUOKA」での催事、テレビ番組とのコラボ試合、街コンイベントまで、野球の試合日以外にも球場と周辺施設を稼働させる興行が並ぶ。試合のない日も「みずほPayPayドーム+E・ZO」という装置を回して稼ぐ ── 球団というより、福岡の大型エンタメ拠点を運営する会社に近い広がりを見せている。
社会保険の被保険者数でみると、運営に携わる人員は2023年末の約377人から直近の約420人へと増えている(プロ野球選手は個人事業主としての契約が一般的で、この人数には含まれにくい)。事業の拡大に合わせて、運営側の体制も厚くなっている様子がうかがえる。
親会社ソフトバンクグループとの関係
ホークスはソフトバンクグループ傘下の球団運営会社だ。象徴的なのは経営トップで、現在の代表取締役社長・後藤芳光氏は、ソフトバンクグループの最高財務責任者(CFO)を兼務している。何兆円もの投資を動かすグループの財務責任者が、福岡で球団社長も務めている──ホークスがグループにとって「片手間の道楽」ではなく、本気で収益を見ている事業であることがうかがえる。
決算公告の数字を見るかぎり、コロナ期を除けば球団は自前の興行収入で黒字を出してきた。ただし、スポンサー・広告・施設利用などグループ内取引の内訳は公告からは分からないため、厳密な意味での独立採算かまでは断定できない。親会社の信用と資金基盤を背景に持ちながら、球団・スタジアム・エンタメ施設を一体で運営し、コロナ禍の谷と数年の先行投資を越えて過去最高の売上・利益に到達した、というのが官報から読める現在地だ。
結論 ─ 「強いチーム」を支える、過去最高の帳簿
ソフトバンクホークスは上場していないため、その経営の実像は普段あまり表に出ない。だが決算公告をたどれば、コロナ禍に2年で155億円の赤字を負いながら、売上509億円・純利益57億円・純資産318億円という、いずれも過去最高水準の数字まで回復した姿が見える。グラウンドの強さの裏で、球団ビジネスとしても「最も稼げる時期」に入っているといえる。
次の決算公告で問われるのは、この売上509億円が、観客回帰という一巡の効果なのか、それとも音楽イベントやE・ZOといった「野球の外」の収益を取り込んだ新しい巡航速度なのかだ。試合のない日にドームをどれだけ回せるか ── そこが、この球団の稼ぐ力の次の焦点になる。
この記事の見方(会社固有のメモ)
- 本記事の数値は、福岡ソフトバンクホークス株式会社の決算公告(2月決算)と、社会保険の適用事業所データを基にしている。資本構成(ソフトバンクグループの子会社であること)は公表情報による。
- 決算公告は貸借対照表・損益の主要項目を中心に開示されるため、収益の内訳(入場料・グッズ・スポンサー・イベント等の別)や負債の中身はこの記事では確認していない。
- 営業利益(約79.8億円)・経常利益(約61.4億円)は決算公告の損益計算書による(本記事の表は純利益を中心に掲載)。経常利益が営業利益を下回るのは営業外費用(ドーム保有等にともなう支払利息とみられる)の影響。
- 本拠地みずほPayPayドーム福岡は2012年にソフトバンクが約870億円で取得し、2015年7月に福岡ソフトバンクホークス株式会社が所有者となった(公開情報)。総資産約1,000億円の主因はこの不動産保有とみられるが、貸借対照表の費目内訳は公告からは特定していない。
- 2023〜2024年の赤字と大型FA補強・E・ZO投資の関係は、補強の公表時期と決算期の重なりからの解釈で、費目別の内訳は公告からは確認できない。後藤芳光氏のソフトバンクグループCFO兼任は公開情報による。
- プロ野球選手は個人事業主としての契約が一般的なため、社会保険の被保険者数には選手は含まれにくい点に留意。
- 同社は株式を公開していないため、上場企業のような株価・時価総額の算定は行っていない。
ファクトシート
- 商号:福岡ソフトバンクホークス株式会社
- 本店所在地:福岡県福岡市中央区
- 設立:1969年3月
- 決算期:2月
- 代表取締役社長:後藤芳光(ソフトバンクグループ CFO 兼任)
- グループ:ソフトバンクグループ(傘下の球団運営会社)
- 主な事業:プロ野球球団「福岡ソフトバンクホークス」の保有・運営、球場および周辺エンタメ施設の興行
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