スーパーホテルの決算 — 2026年3月期は売上621億円・純利益113.9億円で過去最高、コロナ赤字からの逆転劇

全国177店を展開するスーパーホテルは上場しておらず、経営数値の手がかりは官報の決算公告だけだ。2026年3月期は売上高621.3億円・純利益113.9億円で過去最高。コロナ禍の▲54.6億円からの逆転劇を、公告8期分の科目から解剖する。

Compalyze 編集部分析対象株式会社スーパーホテル

スーパーホテルの決算 — 2026年3月期は売上621億円・純利益113.9億円で過去最高、コロナ赤字からの逆転劇

全国177店を展開するスーパーホテルは上場しておらず、経営数値の手がかりは官報の決算公告だけだ。2026年3月期は売上高621.3億円・純利益113.9億円で過去最高。コロナ禍の▲54.6億円からの逆転劇を、公告8期分の科目から解剖する。

この記事のポイント

  • 2026年3月期は売上高621.3億円(前期比+13.9%)・当期純利益113.9億円(同+83.5%)・総資産1,001.8億円。純利益・総資産は公告で確認できる8期、売上高は開示のある5期の中で最高
  • コロナ禍の2021年3月期は▲54.6億円の純損失。翌期の売上総利益率はわずか1.8% — 固定費型の原価構造がそのまま数字に出た
  • 販売費及び一般管理費は売上の5.8%、本体の社会保険加入者は約200人。低コスト経営を支える委託支配人モデルには、控訴審で係争中の訴訟という論点もある

1. 8期の全景 — 2期の赤字と、4年連続の増益

スーパーホテル(大阪市西区)は1989年設立。ビジネスホテル「スーパーホテル」を1996年に福岡で開業し、2026年でブランド30周年を迎えた。官報の決算公告は直近8期分(2019年3月期〜2026年3月期)が確認でき、当期純損益を並べると、この会社の浮き沈みがそのまま1本の線になる。

スーパーホテルの当期純損益の推移(Compalyze Journal)

決算期当期純損益前期比
2019年3月期32.2億円
2020年3月期14.9億円▲53.5%
2021年3月期▲54.6億円赤字転落
2022年3月期▲8.4億円赤字縮小
2023年3月期44.3億円黒字回復
2024年3月期57.3億円+29.3%
2025年3月期62.1億円+8.3%
2026年3月期113.9億円+83.5%

2021年3月期の▲54.6億円は、直前2期の利益(32.2億円+14.9億円)を合わせても埋まらない規模の損失だった。創業者(現会長)は2020年5月の日経ビジネスのインタビューで「4月の売上は例年の3分の1くらい」と語り、10店舗ほどの一時休業に踏み込みながらも雇用維持を明言している。そしてこの赤字で締まることがほぼ確実だった期の途中、2020年10月に社長のバトンは創業家出身の山本健策氏に渡った。最悪の期に代替わりした経営体制が、その後5年で過去最高益まで戻したことになる。

2. 損益計算書の解剖 — 売上総利益率1.8%から32.8%へ

スーパーホテルの公告は2022年3月期から損益計算書の要旨も掲載しており、ホテル業の損益構造がコロナ禍でどう壊れ、どう戻ったかを科目レベルで追える。

スーパーホテルの営業損益と営業利益率(Compalyze Journal)

決算期売上高売上原価売上総利益販管費営業損益
2022年3月期264.2億円259.4億円4.8億円21.0億円▲16.2億円
2023年3月期409.6億円316.9億円92.7億円24.4億円68.3億円
2024年3月期481.4億円350.2億円131.2億円29.6億円101.6億円
2025年3月期545.6億円381.7億円163.9億円31.9億円132.0億円
2026年3月期621.3億円417.8億円203.5億円35.9億円167.6億円

目を引くのは2022年3月期だ。売上高264.2億円に対して売上原価が259.4億円。売上総利益率は1.8%しか残らなかった。ホテル業では、客室の賃借料・維持費・運営人件費といった稼働が落ちても減らない費用の多くが売上原価側に入るとみられる。客数が消えたコロナ禍で、この固定費型の構造がそのまま公告に露出した格好だ。

スーパーホテルの売上総利益率・販管費率の推移(Compalyze Journal)

回復局面では同じ構造が逆向きに働いた。売上が264.2億円から621.3億円へ2.4倍になる間、売上原価は1.6倍しか増えていない。増えた売上の多くが粗利に落ち、売上総利益率は1.8%→22.6%→27.3%→30.1%→32.8%と毎期切り上がった。訪日客数が2025年に年間4,000万人を超え、ビジネスホテルの平均客室単価が2019年比で3割超上がったという市況(日本政府観光局・観光庁の統計等)は、この固定費型の損益にとって最良の追い風だった。2026年3月期の営業利益は167.6億円、営業利益率は27.0%に達している。

なお、この利益率は官報公告の単体数値から計算したものだ。売上高の会計処理(どの範囲を売上に計上しているか)は公告からは分からないため、他社との水準比較にはなじまない点は付記しておく。

規模の感覚をつかむために、公表の店舗数(国内177店・海外2店)で機械的に割り戻しておく。1店が年に約3.5億円を売り上げ、約6,400万円の純利益を残す計算だ。総資産は1店あたり約5.6億円。期中の出店や店舗ごとの規模差をならした粗い試算だが、ビジネスホテル1棟あたりの数字として、この会社の損益の濃さが分かる。

3. 販管費5.8%と約200人の本体 — 委託支配人モデルの構造と係争

もうひとつの解剖ポイントは販売費及び一般管理費の薄さだ。2026年3月期で35.9億円、売上の5.8%しかない。厚生労働省の社会保険データで確認できる同社本体の被保険者数は約200人(2026年時点)で、177店舗という店舗網に対して極端に小さい。1店あたりに直せば、本部側の人員およそ1.1人で1棟を支えている計算になる。

この数字の背景にあるとみられるのが、店舗運営の多くを雇用ではなく業務委託で回す同社の支配人制度だ。住み込みの支配人・副支配人と業務委託契約を結び、本部は開発・予約システム・ブランド管理に特化する。店舗運営のコストが売上原価側に計上され、本部費だけが販管費に残る──公告の科目配置は、そう読むと符合する(公告要旨に内訳はなく、ここは推定を含む)。

ただしこの制度は、そのまま法的な論点にもなっている。時系列で並べる。

  • 2017年2月、公正取引委員会は消費税転嫁対策特別措置法違反(買いたたき)で同社に是正を勧告した。2014年の消費税率引き上げ分を、業務委託先の支配人らへの委託料に上乗せしていなかったというものだ(公正取引委員会公表資料)
  • 2020年5月、元支配人・副支配人が「業務委託契約の実態は労働者だった」として未払残業代等を求めて提訴。一審の東京地裁は2025年7月、労働者性を否定して請求を棄却した。原告側は控訴し、控訴審が東京高裁で係属中だ(2026年7月時点)
  • 同じ原告による求人広告をめぐる別訴訟では、2026年4月の一審判決が請求自体は棄却しつつ、広告内容を「事実と異なる」「著しく不適切」と指摘した。この判決についても原告側が控訴している

二つの訴訟とも一審は請求を退けたが、求人広告訴訟では請求棄却と広告内容への厳しい指摘が併存しており、勝ち負けだけでは片付かない。個別事案の判断がどの範囲まで及ぶかは判決の内容次第だが、販管費5.8%という損益構造が支配人制度と表裏にある以上、決算の数字を追うならあわせて見ておくべき係争だ。

4. 増益の質 — 営業で+35.6億円、営業外収支の改善で+24.4億円

2026年3月期の純利益が前期比+83.5%と、増収率(+13.9%)を大きく上回った理由は、損益計算書を段階別に分解すると見えてくる。

段階2025年3月期2026年3月期増減
営業利益132.0億円167.6億円+35.6億円
営業外収益3.1億円8.8億円+5.7億円
営業外費用33.2億円14.5億円▲18.7億円(改善)
経常利益101.9億円161.9億円+60.0億円
特別損失0.3億円0円▲0.3億円(改善)
法人税等(調整額含む)39.5億円47.9億円+8.4億円
当期純利益62.1億円113.9億円+51.8億円

増益+51.8億円のうち、営業段階の寄与は35.6億円。残りの相当部分は営業外収支の改善(収益+5.7億円と費用減18.7億円の合計+24.4億円)が作っている。同社の営業外費用は2024年3月期25.7億円→2025年3月期33.2億円→2026年3月期14.5億円と大きく振れており、公告要旨からは内訳が分からない。税金費用は実額では8.4億円増えたが、税引前利益に対する負担率は38.9%から29.6%へ下がり、増えた利益が比較的軽い負担で純利益まで落ちた(負担率低下の要因は非開示で、繰越欠損金の利用を含む複数の可能性がある)。過去最高益の裏側は「営業の実力増がおよそ7割、残りは営業外収支の改善」という構成であり、この営業外の部分が来期も同じ方向に働くかは公告からは判断できない。

5. 貸借対照表 — 総資産1,000億円超え、1年で350億円膨らんだ

損益のV字の裏で、貸借対照表はさらに大きく動いた。総資産は2019年3月期の337.6億円から2026年3月期に1,001.8億円へ、8期でほぼ3倍になっている。

スーパーホテルの総資産の内訳と自己資本比率(Compalyze Journal)

とりわけ直近1期の動きが急だ。総資産は651.8億円から1,001.8億円へ1年で350.0億円増えた。増加の主役は固定資産で、479.2億円から724.5億円へ+245.3億円。調達側では固定負債が211.5億円から329.2億円へ、流動負債が172.1億円から290.7億円へ、それぞれ100億円超積み増されている。1年で増えた資産350.0億円の財源は、負債の増加236.2億円と、当期に稼いで内部に残した利益113.9億円で、ほぼきれいに説明がつく。

スーパーホテルの固定資産と固定負債の推移(Compalyze Journal)

公告要旨は固定資産の内訳(土地建物か、建設仮勘定か、差入保証金・建設協力金か)までは開示しないため、この急拡大が何への投資かを一義に特定することはできない。同社は地主に建物を建ててもらい一括で借り上げる「土地の有効活用」型の出店を掲げてきた会社であり、賃借モデルなら固定資産はここまで膨らみにくい。自社開発物件の増加、あるいは出店拡大に伴う保証金・協力金の積み増しなど複数の可能性があるが、いずれにせよ負債を使って資産を積む投資モードに入ったことは調達側の数字が示している。

一方で資本の部は対照的に静かだ。資本金は6,750万円のまま8期一度も動いていない。利益剰余金の増分を各期の純利益と突き合わせると、配当とみられる差額は年700万円弱にとどまり、稼いだ利益はほぼ全額が内部に残る。純資産はコロナ底の104.5億円から382.0億円まで積み上がり、自己資本比率は24.5%を底に一度41.1%まで回復したのち、直近は負債を伴う投資拡大で38.1%へ下がった。無借金経営の会社ではない。運営は軽く、資本は重い — 負債で資産を積み、稼いで貯める。その回転が1,000億円の貸借対照表を作った。

6. 事業の現在地 — ハノイ、新業態、初任給30万円

決算の外側でも、2026年に入って動きが目立つ。3月にベトナム・ハノイへ海外2店舗目(198室)を開業し、ミャンマー1店と合わせて海外展開を再加速。4月には長期滞在に特化した新業態「WELLSTAY」を大阪・なんばで立ち上げた。人への投資では、2026年4月に総合職の初任給を30万円へ引き上げている。天然温泉と健康朝食を軸にした「Lohas」路線は継続で、J.D.パワーの顧客満足度調査(エコノミーホテル部門)では11年連続の1位と発表されている。

拡大の踊り場を示す数字は、少なくとも公告と公表情報からは見当たらない。むしろ貸借対照表が示すのは、コロナで一度沈んだ会社が、回復した利益を担保に次の投資サイクルへ踏み込んだ姿だ。

7. 結び — 次の公告で見るべき3つの数字

スーパーホテルの2026年3月期は、売上・利益・総資産のすべてが公告で確認できる範囲の最高を更新する決算だった。ただ、その中身を解剖した本稿の答え合わせは、次の第38期公告(2027年夏掲載見込み)でできる。見るべき数字は3つある。

第一に固定資産。724.5億円からさらに積み増すのか、1年で245億円という今期の増勢が一巡するのか。投資サイクルの長さが分かる。第二に営業利益率。27.0%は客室単価の市況に押し上げられた面があり、宿泊市況が落ち着いたときにどこまで残るかで実力値が測れる。第三は決算書の外にあり、東京高裁で続く控訴審の行方だ。販管費5.8%のコスト構造を支える支配人制度をどう評価するかの、重要な材料になる。

官報に年1回だけ載る数字で、これほど大きく動く会社は多くない。


計算方法・注記

  • 本稿の財務数値はすべて官報掲載の決算公告(第30期〜第37期)の要旨に基づく単体数値。第30期〜第32期の公告は貸借対照表要旨のみで、当期純損益は注記から取得した。売上高・段階損益が確認できるのは第33期(2022年3月期)以降
  • 公告の金額単位は第36期まで千円、第37期は百万円。本文はすべて億円に換算した(第37期の資本金は百万円単位の公告で「67」だが、千円単位の過年度公告に基づき6,750万円と表記)
  • 第30期・第31期の負債合計は公告に合計行がなく、流動負債+固定負債で算出した
  • 実効税負担率は(法人税、住民税及び事業税+法人税等調整額)÷税引前当期純利益で計算
  • 増減率・差額は公告の原数値(千円/百万円)から計算しており、億円表示からの再計算とは末位が一致しない場合がある
  • 配当の推定は、各期の利益剰余金増分と当期純利益の差額から算出した(株主資本等変動計算書は非開示のため近似値)
  • 本体の人員数は厚生労働省の社会保険被保険者数(月次)による。業務委託の支配人やグループ他社・店舗の雇用は含まれない
  • 「1店あたり」の数値は公表店舗数(国内177店・海外2店、2026年時点)で単純に割った概算

参考にした主な外部情報

ファクトシート

  • 商号:株式会社スーパーホテル
  • 本店:大阪府大阪市西区
  • 設立:1989年12月
  • 代表:代表取締役社長 山本健策
  • 決算期:3月
  • 資本金:6,750万円
  • 店舗数:国内177店・海外2店(2026年時点、公表値)