ビアードパパの会社「DAY TO LIFE」、純利益6.7億円・純資産53億円 ─ 旧・麦の穂、永谷園グループの中で利益を貯め続けるスイーツ企業の決算
ビアードパパを運営する株式会社DAY TO LIFE(旧・麦の穂)の2026年2月期決算。純利益6.7億円・純資産53億円。永谷園グループの一員として利益を貯め、親会社の非公開化が子会社の登記簿にも映る。

シュークリーム専門店「ビアードパパ」を運営する株式会社DAY TO LIFEが、2026年2月期の決算公告を官報に掲載した。当期純利益は6.7億円、純資産は初めて53億円台に乗った。この会社は2023年9月まで「株式会社麦の穂」という社名で、2013年に永谷園グループ入りした事業会社だ。いまは持株会社の株式会社DAY TO LIFEホールディングス(旧・麦の穂ホールディングス)の傘下にある。決算の数字そのものよりも、ここ数年の登記簿に親会社の動き ── とりわけ2024年に親会社が実施した株式の非公開化(MBO) ── と時期の重なる変更が並んでいる点が、今回の見どころになる。
この記事のポイント
- 2026年2月期の当期純利益は6.7億円、純資産は53.2億円(確認できる主系列3期で最高)。資本金は1,100万円のまま動かず、純資産との開きが大きい
- 1997年設立の「株式会社麦の穂」が前身。2013年に永谷園が麦の穂グループ(持株会社の麦の穂ホールディングス=現・DAY TO LIFEホールディングス)を約94億円で買収し、2023年9月に「DAY TO LIFE」へ商号変更した
- 親会社の永谷園ホールディングスは2024年に株式を非公開化(MBOによる上場廃止)。同じ時期に子会社の登記簿でも変更(2024年10月の株券発行・担保特約の追加、創業家出身の代表取締役の退任)が並んでいる
2026年2月期 ─ 利益6.7億円、純資産は3期で53億円台へ
まず決算公告から拾える数字を並べる。設立年(1997年)から数えた期数で、直近の3期はこう推移している。
| 決算期 | 当期純利益 | 純資産 | 総資産 | 負債 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第27期(2024年2月期) | 5.6億円 | 38.0億円 | 61.3億円 | 23.2億円 | 約62% |
| 第28期(2025年2月期) | 8.4億円 | 46.5億円 | 76.8億円 | 30.3億円 | 約61% |
| 第29期(2026年2月期) | 6.7億円 | 53.2億円 | 88.6億円 | 35.4億円 | 約60% |
3期を通して毎期黒字で、資産・純資産は着実に積み上がっている。当期純利益は5.6億円→8.4億円→6.7億円と、単年では増減があるものの一貫してプラスで、3期で合計およそ20.7億円を稼いだ。純資産は38.0億円から53.2億円へ、15億円ほど厚くなった。

総資産は61.3億円から88.6億円へと3期で約1.4倍に膨らんだ。これは純資産の伸び(プラス15億円)と負債の伸び(23.2億円→35.4億円、プラス12億円)が両方効いた結果で、会社が稼ぎながら同時に資産・負債の両建てを大きくしてきた様子が見える。
資本金1,100万円のまま、純資産は53億円 ─ グループの中で利益を残す形
この決算でいちばん目を引くのは、資本金と純資産の開きだ。
資本金は1,100万円。一方で純資産は53.2億円ある。両者には480倍ほどの差がある。一般に資本金が小さいまま純資産だけが厚い会社は、「自力で増資を重ねてきた独立企業」ではなく、親会社を持つ事業子会社であることが多い。2013年に永谷園グループ入りしたDAY TO LIFEも、この型に当てはまる。親会社のもとにある事業会社は、外部から株式でお金を集めて資本金を増やす必要がそもそもなく、資本金が小さいことは独立性とは関係がない。
注目すべきは、純資産53億円の大部分が、資本金ではなく過年度利益の蓄積を中心とする内部留保とみられる点だ。純資産53.2億円に対し資本金は1,100万円で、その差額の約53億円が大きい(純資産の内訳は決算公告だけでは詳細に分解できない)。100%株主である親会社が配当で大きく吸い上げていれば、ここまで純資産は厚くならない。稼いだ利益を子会社の内部に相応に残してきた ── そういうグループの資本政策の結果として、この53億円は読める。「この厚い帳簿を何に使うか」を最終的に決めるのは、子会社単体ではなく親会社の側だ。

自己資本比率は約60%で、3期を通して安定している。総資産が膨らんでも純資産が同じペースで増えているため、財務の健全さを保ったまま会社が大きくなってきた。負債が35億円まで増えている点はやや目立つが、自己資本比率が60%を保っているため、少なくとも過度にレバレッジをかけたB/Sには見えず、事業の拡大と歩調を合わせた膨張として整理できる(負債の内訳は決算公告からは特定できない)。
「麦の穂」から「DAY TO LIFE」へ ─ ビアードパパと永谷園の歴史
この会社の決算を正しく読むには、社名と資本の出自を押さえておく必要がある。登記簿と公表されている沿革を合わせると、次のような流れになる。
- 1997年12月22日 ── 「株式会社麦の穂」設立
- 1999年 ── シュークリーム専門店「ビアードパパの作りたて工房」1号店を開業
- 2001年以降 ── 香港を皮切りに、韓国・台湾・シンガポール・中国・アメリカなど海外へ出店を広げる
- 2013年 ── 永谷園が「ビアードパパ」を運営する麦の穂グループ(持株会社の麦の穂ホールディングス=現・株式会社DAY TO LIFEホールディングス)を約94億円で買収し、永谷園グループ入り
- 2018年10月 ── きな粉スイーツ「吉祥菓寮」を展開する株式会社京都吉祥庵を吸収合併(登記)
- 2023年9月1日 ── 「株式会社麦の穂」から「株式会社DAY TO LIFE」へ商号変更
「味ひとすじ」のお茶漬け・即席みそ汁で知られる永谷園が、和の食品メーカーとはやや毛色の違うシュークリームチェーンを約94億円で買ったのが2013年。当時から永谷園は国内外での商品開発・海外展開の相乗効果を狙っていた。それから10年を経て、子会社は2023年に「人が真ん中のスイーツカンパニー」を掲げる「DAY TO LIFE」へと看板を掛け替えた。登記簿でも、商号欄に旧名の「株式会社麦の穂」が抹消線つきで残り、その下に「令和5年9月1日変更」として現社名が記録されている。事業目的の登記も同じ2023年9月に手直しされており、社名変更と事業の整理が同じタイミングで進められたことがうかがえる。
登記簿に映る、親会社の「非公開化」
今回の記事で押さえておきたいのが、親会社の動きが子会社の登記簿にまで現れている点だ。
かつて東証プライムに上場していたグループ最上位の永谷園ホールディングスは、2024年に経営陣が参加する買収(MBO)を実施し、株式市場での売買をやめて非公開会社になった。買収の受け皿には三菱商事系の投資ファンド「丸の内キャピタル」が運用するSPCが入り、1株3,100円のTOBを経て2024年9月に上場廃止となった。完了後の出資は丸の内キャピタル系が約55.5%、創業家の永谷家が約34.5%、三菱商事が約10%とされ、資本の過半をファンドが握りつつ創業家も経営に残る形だ。公表資料上の主眼は、株式市場の短期的な評価に左右されず、中長期の成長施策・構造改革を進めることに置かれている。
なお、ここで非公開化したのはグループ最上位の永谷園ホールディングスだ。DAY TO LIFE(事業会社)の直接の親会社は、2013年に永谷園が買収した持株会社の株式会社DAY TO LIFEホールディングス(旧・麦の穂ホールディングス)で、永谷園グループ → DAY TO LIFEホールディングス → DAY TO LIFE という二段の構図になっている。
この資本構成の組み替えと同じ時期に、事業会社であるDAY TO LIFEの登記簿でも次の変更が記録されている。
- 2024年10月1日 ── 「当会社の株式については、株券を発行する」旨を新たに設定
- 2024年10月1日 ── 株式譲渡制限の規定に、担保として提供された株式の担保権が実行される場合は会社の承認があったものとみなす、という特約を追加
担保権の実行に関する特約は、株式を担保に差し入れることを前提にした条項だ。親会社の非公開化と同じ2024年10月という時期、そして担保にまつわる条項の追加 ── この2つが重なっていることから、子会社の登記簿の動きも、MBO後の資本再編や資金調達に関連する変更の可能性がある。ただし、両者の直接の関係は登記簿だけからは確認できない。
役員の構成にも、グループの世代交代が表れている。創業家の永谷家出身で代表取締役を務めていた取締役は2025年9月30日付で退任しており、現在の代表取締役は杉内健吉氏が務める。2025年には取締役と監査役にも新たな就任があり、親会社の体制変更を受けて子会社側の経営陣も少しずつ入れ替わっている。
多ブランドのスイーツ企業 ─ 「ビアードパパ」を核に広がる商標
DAY TO LIFEの事業は「ビアードパパ」だけではない。決算公告の数字の裏側には、複数のスイーツブランドを抱える「スイーツカンパニー」としての姿がある。
主力のシュークリーム専門店「ビアードパパ」を中心に、京都・祇園発のきな粉スイーツ「吉祥菓寮」、焼きたてリエージュワッフルの「BEL BUTTER WAFFLE」、手づくりフランス菓子の「ココフラン」、麩菓子のギフト「ふふふの麩」、そして2025年に立ち上げた東京土産向けの新ブランド「Dessert Choux」など、複数の看板を並行して育てている。直近1年のプレスリリースを見ても、「ビアードパパ」の季節限定シューや他社ブランドとのコラボ商品の告知が高い頻度で続き、新ブランドの出店・オープンの案内も混じる。

ブランドが増えるほど、それを守る商標も増える。知財の登録状況を見ると、同社名義の商標は登録済みで93件、出願中が6件にのぼる。「ビアードパパ」という看板そのものに加え、各ブランド名・商品名・ロゴを一つひとつ商標として押さえてきた積み重ねが、この件数に表れている。スイーツの世界はブランド名と世界観が価値の源泉になりやすく、多ブランド戦略を支える土台として商標の厚みは欠かせない。
人の規模はどうか。社会保険の被保険者数でみると、運営の規模はおおむね430〜460人台で推移している。直近1年は450人前後で安定し、足元では微増傾向にある。

被保険者数は全従業員と同じではなく、フランチャイズ加盟店のスタッフなどは含まれない点には注意がいる。それでも、本部としての直営運営とフランチャイズ展開を450人規模で回しながら、3期連続で数億円規模の利益を出している構図が、この人数と決算の組み合わせから見える。同社はフランチャイズ加盟店の募集・指導も事業目的に掲げており、自前の店舗網と加盟店網の両輪でブランドを広げる形だ。
次に見たいのは、グループ再編後の「単体決算の変化」
DAY TO LIFEの直近の決算は、利益・純資産ともに着実に積み上がる堅調な内容だった。ただしその堅調さは、独立した一企業が単独で勝ち取ったものというより、永谷園グループの一員としてシュークリーム事業を担い、稼いだ利益を内部に残してきた結果として読むのが正確だ。資本金1,100万円のまま53億円の純資産を抱える帳簿の使い道を最終的に決めるのは、親会社の側にある。
その親会社が2024年に非公開化を済ませたいま、次に注目したいのは、この資本構成の変化がDAY TO LIFE単体の決算をどう変えていくかだ。配当方針や資金のグループ内での動かし方が変われば、これまで子会社に貯まり続けてきた純資産の伸び方も変わりうる。次の決算公告(2027年2月期)が、非公開化後のグループ資本政策を初めて1年通しで映した一枚になる。
計算方法(この記事固有のメモ)
- 本記事が扱うのは事業会社 株式会社DAY TO LIFE 単体(資本金1,100万円、第27〜29期=2024〜2026年2月期)の決算公告。資本金4.9億円のもう一系列は、持株会社の株式会社DAY TO LIFEホールディングス(法人番号3120001129914)の決算公告で、データ上いったん同じ法人番号に混在していたが分離した。事業会社の数値は、登記簿の設立日(1997年)から数えた期数と資本金(1,100万円)の双方に一致する。
- 自己資本比率は、決算公告の純資産÷総資産で算出した簡便値で、第28期・第29期は別途取得した指標(約60.5%・約60.0%)と一致する。第27期は純資産38.0億円÷総資産61.3億円から約62%とした。
- 純資産の内訳(利益剰余金・各種準備金の別)は決算公告からは詳細に分解できないため、「資本金1,100万円との差額の大部分が利益の蓄積」という水準感で記述した。
- 親会社の非公開化(MBO・上場廃止)の時期は公表情報に基づく。子会社登記簿の2024年10月の変更(株券発行設定・担保特約追加)との時期的な重なりから、グループの資本構成の組み替えの一環として整理したが、両者の直接の因果は登記簿のみからは断定していない。
ファクトシート
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商号 | 株式会社DAY TO LIFE(旧・株式会社麦の穂、2023年9月1日変更) |
| 本店所在地 | 大阪市北区西天満三丁目13番20号 |
| 設立 | 1997年12月22日 |
| 決算期 | 2月 |
| 代表取締役 | 杉内健吉 |
| 資本金 | 1,100万円 |
| 主な事業 | シュークリーム専門店「ビアードパパ」をはじめとするスイーツブランドの展開、飲食店経営、フランチャイズチェーン運営、菓子の製造・販売 |
| 主なブランド | ビアードパパ、吉祥菓寮、BEL BUTTER WAFFLE、ココフラン、ふふふの麩、Dessert Choux ほか |
| 親会社 | 株式会社DAY TO LIFEホールディングス(旧・麦の穂ホールディングス) |
| グループ | 永谷園グループ(最上位:株式会社永谷園ホールディングス) |
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