「Lステップ」の株式会社Maneql、競合「Liny」と統合 ─ PEファンドが束ねた二大LINEツールと、登記に残る再編の段取り
「Lステップ」を運営する株式会社Maneql。決算公告2期は黒字(純利益5.35億・4.19億)で、資本金2,000万円のまま株式調達歴がない。2026年2月にPEファンドが資本参加し、4月に競合「Liny」と3社経営統合。登記に残る再編の段取りを追う。

「Lステップ」の株式会社Maneql、競合「Liny」と統合 ─ PEファンドが束ねた二大LINEツールと、登記に残る再編の段取り
LINE公式アカウントを使った集客や顧客管理を支えるツールとして、個人事業主や中小企業のあいだで広く使われてきた「Lステップ」。これを大阪・堺で育ててきたのが株式会社Maneqlだ。開示された決算公告はまだ2期と少ないが、いずれも黒字で、当期純利益は約5.3億円と約4.2億円。資本金を2,000万円に据え置いたまま、株式でお金を集めることなく稼いできた、少人数のソフトウェア会社である。
その同社が、2026年に大きく姿を変えた。2月にプライベートエクイティ(PE)ファンドの資本参加を受け、4月には長年のライバルだった「Liny」を含む3社と経営統合する。表向きはプロダクトのプラン改定の案内だが、その手前の数か月を登記でたどると、不動産事業の切り出し、自社株の取得、株券の発行と株式担保に関する条項の追加が、順番に並んでいる。稼ぐ会社が一つの傘の下に入っていく過程を、公開データだけで整理する。
この記事のポイント
- 開示された2期の決算公告はいずれも黒字で、当期純利益は約5.3億円と約4.2億円。自己資本利益率(ROE)は45〜50%台と高く、資本金2,000万円に対し利益剰余金は約12.9億円に積み上がっている
- 登記をたどっても増資・種類株式・新株予約権の発行履歴はなく、株式でお金を集めたラウンドは一度もない。1株単価が存在しないため評価額の推移は算定できず、PE資本参加時の評価額も非公表である
- 2026年2月にPEファンドのサンライズキャピタルがグループへ資本参加し、4月に「Lステップ」と競合「Liny」を含む3社が経営統合した
長年のライバル「Lステップ」と「Liny」が、同じ傘の下に
LINE公式アカウントを高機能化するツールの世界で、「Lステップ」と「Liny」は長く二大ツールと呼ばれてきた。市場を調べた第三者の調査(BOXIL)でも、2025年の利用率で両者は上位に並ぶ近い存在として挙がっている。片方をManeqlが、もう片方を東京・港区のソーシャルデータバンク株式会社が手がけ、それぞれにユーザーと代理店のコミュニティを抱えてきた。
その二社が、2026年に一つのグループになった。きっかけは、PEファンドの資本参加である。

サンライズキャピタルの公表によれば、日本の中堅企業への投資に特化したPEファンド「Sunrise Capital V」は、2026年2月3日付で、ソーシャルデータバンク・Maneql・株式会社アローリンクの3社(ソーシャルデータバンクグループ)への資本参加を完了した。出資の額や比率、評価額は公表されていない。同ファンドは2006年の1号以来、シリーズ全体で累計約3,000億円を集め、約50社を支援してきたと説明している。
そのうえで2026年4月、3社は経営統合に踏み切った。小規模事業者向けの「Lステップ」(Maneql)、大手・中堅向けの「Liny」(ソーシャルデータバンク)、採用に特化した「Liny HR」(アローリンク。もとは「Liny」を採用領域に振った「採マネnext≫」)の3つを中核プロダクトに据え、単一の経営基盤のもとで一体運営する体制に切り替えた。開発と運営の基盤はソーシャルデータバンクが担う。「Lステップ」の利用者から見ると、上位プランとして「Liny」を選べるようになる、という形での接続だ。あわせて「Lステップ」のプランも改定され、スタッフ数の上限が無制限から10名(11名以降はオプション)へと変わった。
競合関係にあった二つのツールが同じグループで運営される体制になり、そこにPEファンドの資本参加と、採用領域のプロダクトが加わった。価格表の改定という地味な見出しの裏で起きていたのは、小規模事業者から中堅・大手、さらに採用や行政の領域まで、LINEマーケティングの作り手と顧客層を一つに束ねる再編だった。
資本金2,000万円のまま、純利益5億円を出す稼ぐ会社
統合の話に入る前に、Maneql単体がどんな決算の会社かを押さえておきたい。
官報の決算公告は、第9期(2025年3月期)と第10期(2026年3月期)の2期分が確認できる。期数こそ少ないが、中身は明快だ。

第9期の当期純利益は約5.35億円、第10期は約4.19億円。2期とも黒字で、純資産は10.75億円から9.31億円の水準にある。資本金は2,000万円に据え置かれたままで、稼いだ利益が利益剰余金として積み上がってきた構図だ。
第9期の貸借対照表を分解すると、その厚みがよく見える。

総資産23.9億円のうち、流動資産が約17.1億円を占める。負債と純資産の側では、株主資本が約10.75億円。その内訳に、自己株式の取得を示す「△2.3億円」が立っているのが目を引く。利益剰余金を厚く積んだ会社が、自社の株式を買い戻していた、ということだ。後で触れる再編の段取りと合わせて見ると、この自社株の取得は、株主構成を整理していく動きの一部だったと読める。
第10期にかけては、総資産が23.9億円から13.76億円へ、負債が13.17億円から4.45億円へと、ともに大きく縮んでいる。利益を出しながら純資産も減っているが、これは赤字によるものではない。後述する不動産・投資事業の会社分割で、その部門の資産と負債がまとめて外へ出たためと読むのが自然だ。負債が外れた結果、自己資本比率は45.0%から67.6%へと跳ね上がり、身軽な財務に変わっている。
株式を一度も発行していない ─ だから「評価額」は出せない
未上場の会社を扱うとき、本来なら登記簿に残る増資の払込単価から、会社が値づけに用いてきた評価額の移り変わりを外から復元できることが多い。だがManeqlの登記をたどっても、その手がかりは出てこない。
履歴事項全部証明書を確認すると、資本金は設立以来2,000万円のまま一度も動いていない。発行できる株式の上限は1万株のままで、種類株式の定めもなく、優先株式やストックオプション(新株予約権)の発行履歴も登記には現れない。つまりこの会社は、外部から株式でお金を集めるラウンドを一度も踏んでいない。1株あたりの払込単価が存在しないため、増資をもとに評価額の推移を出すことはできない。

株式に関わる唯一の動きは、増資ではなく逆の方向だ。発行済株式は設立時の2,000株から、2025年9月時点で1,220株へと減っている。自己株式の取得と、それに続く株式数の圧縮が前後して行われたとみられる。第9期の貸借対照表に立っていた自己株式△2.3億円は、第10期には資本剰余金の△2.3億円として残り、買い戻した株式の整理が進んだことがうかがえる。
評価額の代わりに見えてくるのは、稼ぐ力そのものだ。自己資本に対する利益の比率(ROE)は第9期49.8%、第10期45.0%。総資産に対する利益の比率(ROA)も22.4%から30.5%へと高い。資本金2,000万円に対して、利益剰余金は約12.9億円に達する。株式で集めたお金ではなく、本業の利益だけで純資産を積み上げてきた会社だと、数字の側からはっきり読める。
そしてPEファンドの資本参加にあたっても、外形的な値づけは表に出ていない。サンライズキャピタルの公表には出資の額・比率・評価額のいずれの記載もなく、この会社にいま付いた価格は非公表である。市場価格を持たず、株式での調達歴もないこの会社の規模は、評価額ではなく、積み上がった利益剰余金と高いROEで測るほかない。
統合の前に並んだ、登記の段取り
PEファンドの資本参加と3社統合は、2026年の春に表へ出てきた出来事だ。だが登記をさかのぼると、その半年ほど前から、受け入れの準備とみられる動きが順番に刻まれている。

まず2025年9月、堺市内に「Lホールディングス株式会社」が新しく設立される。この持株会社の代表取締役は、Maneql創業者と同じ人物だ。続いて同年11月、Maneqlは不動産の管理・賃貸・売買・仲介・コンサルティングと投資事業に関する権利義務の一部を、会社分割でこのLホールディングスへ移した。決算公告にあった固定資産や固定負債のうち、不動産まわりの部分がここで切り出されたとみられる。本業であるソフトウェア事業と、不動産・投資の権利義務とを、別の器へ分ける動きだ。
このLホールディングスの登記上の目的は、不動産にとどまらない。有価証券や暗号資産、貴金属、ファンドへの出資、信託、資産を担保にした融資、さらに家族の資産を管理する「ファミリーオフィス」業務までが並ぶ、創業者個人のための資産管理会社の色合いが濃い。しかも同じ2025年11月17日には、Maneqlだけでなく同じ堺市の別会社からも事業がこの持株会社へ分割されており、複数の器から資産を一つに寄せる動きがうかがえる。稼ぐソフトウェア事業は資本を受け入れる本体に残し、不動産や資産運用は創業者側の器へ——資本を迎える前に、事業と個人資産の線を引き直した、と読める。
年が明けた2026年1月には、株式まわりの定めが二つ続けて変わる。一つは、株式の譲渡制限の条文への追加だ。もともと「株式を譲渡するには株主総会の承認が要る」という非公開会社の標準的な定めだったところに、株式に担保が設定され、その担保が実行されて担保権者などへ株式が渡る場合は承認があったものとみなす、という例外が足された。もう一つは、紙の株券を発行する会社へと改める登記である。株式を担保に差し入れる取引では株券があると扱いやすく、二つの変更は担保まわりの手当てとして足並みがそろう。資本参加にともなう準備と読める。
そして2026年2月3日、役員が大きく入れ替わる。それまでの取締役2名が退任し、Maneql創業者は代表取締役にとどまる一方で、統合相手であるソーシャルデータバンクの代表取締役 伊藤俊輝氏が、Maneqlの代表取締役として加わった。同じ日に、サンライズキャピタルのグループへの資本参加が完了している。さらに4月には、決算公告を載せる媒体を官報から日刊工業新聞へ切り替える変更も登記されている。
新会社の設立、不動産事業の切り出し、自社株の取得、株券の発行と担保に関する条項の追加、そして代表者の合流。これらが半年のあいだに連なって並ぶさまは、稼ぐ事業だけをきれいな形に整えてから資本を受け入れる、という再編の手順としてつじつまが合う。
「L」を一文字ずつ商標にしてきた知財
Maneqlのもう一つの特徴は、プロダクト名のつくり方にある。同社は事業の広がりに合わせて、「L」を冠したブランド名を次々に商標として出願してきた。

J-PlatPatで確認できる権利は、商標30件と特許3件の合わせて33件。看板の「Lステップ」を2019年に出願したのを皮切りに、決済連携の「L-ma(エルマ)」、口コミ集客の「LIGET」、ライブ配信の「L-CAST(エルキャスト)」、さらに「Lコネクト」「Lメール」「Lメッセージ」「Lサロン」「Lファネル」「Lデータ」と、機能やサービスを増やすたびにその名前を押さえてきた。2022年と2023年に出願が集中しており、プロダクト群を一気に広げた時期と重なる。
特許3件はいずれも「動画配信型商品販売システム」に関するもので、2022年に出願し2025年に登録されている。会社は動的ライブコマースの特許取得として公表しており、視聴者の反応に応じて自動でセールスを行うライブ配信ツール「L-CAST」を支える技術と位置づけている。商標で名前を、特許で仕組みを押さえながら、LINEを起点にしたツールの幅を広げてきたことが、知財の出願からも跡づけられる。
二十数人で広げる事業 ─ 代理店、無料スクール、テレビCM
これだけの利益とプロダクト数を、Maneqlは少人数で回してきた。

社会保険の被保険者数で見た従業員は、2023年末の17人から2026年半ばの24人へと、2年半でゆるやかに増えてきた。二十数人でこれだけのプロダクトを動かせている背景には、自前の開発体制の外に広がる二つの仕掛けがある。
一つは、Lステップの構築や運用を代行する事業者のネットワークだ。同社は、約半年のカリキュラムと試験を経た法人・個人を「正規代理店」として認定し、正規・認定・準の段階に分けて公式の代理店一覧に載せている。ツールの設計・構築を外部の代理店が担い、本体は開発に集中する——少人数でも導入の現場を全国へ広げられる構図だ。会社の公表では、Lステップは累計の導入社数で3年連続、有料アカウント数で4年連続の業界No.1を実績調査で得たとしている。
もう一つが、入り口を広げる教育とマーケティングだ。創業者の田窪氏は、Lステップという道具と並んで、無料で学べるビジネススクール「オープンイノベーション大学(イノベ大)」も自ら掲げてきた。「豊かで幸せな人生を送るための教育を全ての人へ」をミッションに、5万人を超える参加者が学ぶと会社は説明しており、その狙いには将来のビジネスパートナーの育成も含むという。2025年からはお笑いコンビのチョコレートプラネットを起用したテレビCMを関東・関西・名古屋ほかで放映し、同年6月には「Lステップ」に月額無料のフリープランを設けて、使い手の裾野を一気に広げた。少人数の開発体制を、代理店・教育コミュニティ・広告で囲いながら使い手を増やす——その積み重ねが、資本金を動かさずに利益剰余金を厚くしてきた背景にあると読める。会社の公表では、ホワイト企業認定の最上位区分を3期連続で取得したという。
稼ぐ事業を、より大きな枠へ
Maneqlの決算は、2期しか開示がないにもかかわらず、輪郭がはっきりしている。資本金は2,000万円のままで、株式でお金を集めることなく、本業の利益で純資産を積み上げ、自社株まで買い戻してきた。45〜50%台のROEが示すのは、LINEマーケティングという伸びる領域で、少人数でも高い効率で稼ぐ会社をつくり上げた、という像だ。
その会社が、2026年に自らの意思でより大きな枠の中へ入った。長年競ってきた「Liny」と肩を組み、PEファンドの資本を受け入れ、採用領域のプロダクトまで一体で運ぶ。創業者は代表の座にとどまりつつ、統合相手の代表を迎え、不動産事業は手元の持株会社へ移した。次に見たいのは、ばらばらだった三つのプロダクトが一つの基盤の上でどう束ね直され、Maneql単体の決算公告がグループの中でどんな数字を残していくかだ。市場価格も株式調達歴も持たないまま高いROEで回してきた稼ぐ会社の独立した決算は、この2期で一区切りを迎えたのかもしれない。
計算方法(この記事の数値について)
- 損益・財務:官報の決算公告(第9期=2025年3月期、第10期=2026年3月期)の貸借対照表の要旨に基づく。決算公告では売上高は開示されないため、損益は当期純利益で追った。利益剰余金は第9期 約12.85億円(うち利益準備金500万円)、第10期 約11.41億円。第9期に株主資本へ立っていた自己株式△2.3億円は、第10期では資本剰余金△2.3億円として整理されている。ROE・ROAは単体の純利益を期末の純資産・総資産で割った値(ROE 49.8%→45.0%、ROA 22.4%→30.5%)。なお本記事で扱う数字はManeql単体の決算公告に基づくもので、統合後のソーシャルデータバンクグループ全体の連結業績ではない。
- 株式調達・評価額:履歴事項全部証明書を確認したところ、資本金は設立以来2,000万円のまま、発行可能株式の上限は1万株、種類株式・優先株式・新株予約権の発行履歴はいずれも登記上確認できない。株式での資金調達ラウンドが存在せず1株あたりの払込単価が無いため、本記事では推定評価額の算定・推移は行っていない。発行済株式は設立時の2,000株から2025年9月時点で1,220株へ減っており、自己株式の取得と株式数の圧縮が前後して行われたとみられる。サンライズキャピタルによる資本参加時の出資額・比率・評価額は公表されていない(非公表)。
- 資産・負債の減少:第9期から第10期にかけての総資産・負債・純資産の縮小は、赤字によるものではなく、2025年11月に登記された不動産・投資事業の会社分割で、その部門の資産・負債が持株会社へ移ったことが主因と読める。負債が外れた結果、自己資本比率は45.0%から67.6%へ上昇した。
- 資本参加・経営統合:サンライズキャピタル(Sunrise Capital V)による3社(ソーシャルデータバンクグループ)への資本参加は2026年2月3日付で完了したと公表されている。3社の経営統合は2026年4月に公表された。
- 知的財産:J-PlatPatで確認できる商標30件・特許3件(合計33件)に基づく。出願年で集計した。
- 従業員数:厚生労働省の社会保険の被保険者数(月次)を用いた。実際の在籍者数とは範囲が異なる場合がある。
- 公表されたネガティブな報道・行政処分・訴訟などは、確認した範囲では見当たらなかった。
※決算公告(官報)・履歴事項全部証明書・社会保険の被保険者数・知的財産(J-PlatPat)は一次データを直接参照している。
ファクトシート
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商号 | 株式会社Maneql |
| 本店所在地 | 大阪府堺市北区 |
| 設立 | 2016年4月1日 |
| 代表取締役 | 田窪洋士、伊藤俊輝 |
| 決算期 | 3月 |
| 主な事業 | LINE公式アカウント拡張ツール「Lステップ」の開発・販売、WEBプロモーション支援、起業家・フリーランス向け教育 |
本文で言及した企業