matsuri technologies の推定評価額は約120億円 ─ コロナ禍を生き延びた民泊SaaSが、7期目で初の黒字に届くまで
民泊・短期賃貸の運営ソフトを手がける同社は、決算公告7期のうち6期が純損失だったが、直近で初の黒字に転じた。登記の優先株払込単価から復元した全株式数ベースの推定評価額(上場企業の時価総額に相当)は約120億円。

ホテルを建てるのではなく、すでにある住宅・マンションや小規模施設を、ソフトウェアと分散したオペレーションで宿泊インフラに変える。matsuri technologies株式会社(matsuri technologies)は、予約・本人確認・チェックイン・清掃手配・収支管理までを束ねる無人運営ソフトウェア「m2m Systems」を出発点に、いまはこれを核にした空間運営ソリューション「StayX」を主力に据える。人口減で空きが増える住宅と、回復したインバウンド需要を、一つの空間の使い分けでつなぐ事業だ。観光と宿泊を直撃したコロナ禍のただ中では、むしろ発信量を増やし、長期滞在や一時帰国の受け皿へと事業を組み替えていった。
代表取締役の吉田圭汰氏は、当時を「倒産までに残された時間は6カ月しかありませんでした」と公開インタビューで振り返っている。決算公告を並べると、7期のうち6期は純損失だ。それでも直近の2026年2月期に、初めて当期純利益が黒字へと転じた。登記簿に残る優先株式の払込単価をたどれば、会社が値づけに用いてきた基準を外から復元できる。赤字続きの会社が黒字へ届いた節目を、公開データと一次情報から整理する。
この記事のポイント
- 官報の決算公告7期のうち6期は純損失(累計 約31億円)。コロナ禍で「倒産まで残り6カ月」とされた状況から事業を組み替え、2026年2月期に初の当期純利益 約2.7億円へ転じた(黒字は決算公告に載る当期純損益ベース。売上高・営業損益は公告に無く、黒字の中身までは断定しない)
- 登記の優先株払込単価は A種539円から E種7,000円へ。直近の全株式数(発行済154万株 + 現存する新株予約権 約17万株)に直近単価を当てはめた推定評価額は約120億円(上場企業の時価総額に相当・登記からの独自試算)
- 会社公表では運営規模は国内約4,000施設(2025年12月時点・2024年の2,400ユニット超から拡大)、稼働率は宿泊・短期賃貸とも約8割、売上高は3年で14億→110億円規模。2025年2月末に運営子会社を吸収合併し、従業員(社会保険被保険者)は2023年末の113人から直近239人へ増えた
「倒産まで残り6カ月」から、7期目の初黒字へ
観光と宿泊は、2020年からの感染拡大で最も深く沈んだ領域だ。インバウンド需要を前提にした民泊は、はしごを外された格好になった。吉田氏はForbes JAPAN のインタビューで、需要が蒸発したこの時期に「宿泊がダメでも住宅需要さえあれば道は切り開けるはず。そう自らを奮い立たせて毎日、新しい事業を立ち上げ、ダメならまた次の策を練る」日々だったと語っている。海外在住者の一時帰国向け滞在から、長期のマンションステイへ。観光に依存しない使い道へと事業を組み替えた先に、この決算がある。

確認できる決算公告は7期分で、そのうち6期が純損失だ。純損失は2020年2月期の約4.2億円から始まり、2024年2月期には約9.7億円まで膨らんだ。6期分を足し合わせると、累計の純損失は約31億円になる。ところが2025年2月期は約1.3億円まで一気に縮み、直近の2026年2月期はついに約2.7億円の黒字に転じた。長く赤字を出しながら投資を続けてきた会社が、初めて黒字で期を締めた瞬間がここにある。
赤字の幅が大きかった時期は、資金を集めて事業を広げる局面と重なっている。損失のピークだった2024年2月期の前後に、後述する大型の資金調達と、貸借対照表の急拡大が並ぶ。
住宅を宿泊インフラに変える ── 「二毛作」という事業モデル
この会社は宿泊施設を新たに建てるのではなく、すでにある住宅・マンションや小規模施設を借り上げ、ソフトウェアと分散したオペレーションで宿泊インフラに変える。核にあるのが「二毛作」と呼ぶ使い分けだ。会社の説明では、月額12万円ほどで借り上げた部屋を、1泊単位の宿泊と1か月単位の短期賃貸のあいだで需要に合わせて切り替え、1室あたり月20万円規模の売上へ引き上げる。宿泊と短期賃貸のどちらでも稼働率はおよそ8割を保っていると会社は公表する。予約・本人確認・チェックイン・清掃手配・在庫管理を束ねる無人運営ソフトウェア「m2m Systems」がこの切り替えを支え、これらをまとめた空間運営ソリューションを「StayX」というブランドで提供している。民泊管理ツールとしての登録物件数は会社公表で18,300件を超える。
コロナ禍で観光需要が消えた時期は、この使い分けがそのまま生命線になった。1泊単位の宿泊が止まっても、海外在住者の一時帰国や長期のマンションステイといった1か月単位の需要へ振り向けることで稼働を保った。旅行が戻ったポストコロナには、逆に1泊単位の観光需要へ重心を移していく。会社の公表では、観光が回復した2023年のチェックイン数は前年比434%、無人運営で施設数も前年比229%へと伸びた。空いた住宅を宿泊需要の受け皿に変えていく動きが、この数字に表れている。
運営規模も広がっている。会社公表では2024年時点で運営2,400ユニット超(2年でおよそ1,800増)だったものが、直近の会社紹介資料では国内約4,000施設(2025年12月時点)まで拡大し、2025年にはニューヨークにも進出した。会社や一部の報道はこれを「民泊(運営)国内最大手」「登録物件数No.1」と位置づけるが、何を母数にした順位かは公表資料からは判然としないため、規模感を示す表現として受け取っておくのが妥当だ。
借り手の顔ぶれも、個人の大家や小規模物件だけではなくなってきた。2026年には、上場不動産投資信託の日本都市ファンド投資法人が取得した沖縄・国際通りの複合施設「JMFビル沖縄国際通り01」の住宅部分45戸を、マスターリース契約に基づく短期賃貸・住宅宿泊としてStayXで運用し始めた(2026年6月運営開始・会社公表)。民泊・短期滞在の運営が、個人資産の活用にとどまらず、機関投資家の不動産運用の一部に入り始めていることを示す動きだ。

売上高そのものは決算公告には表れないが、会社は2023年2月期の14億円から2026年2月期の110億円規模へと、3年で約8倍に伸びたと公表している。赤字を出し続けた時期は、この急拡大に投資を先行させた局面と重なる。ただしこれらは決算公告の外にある会社公表値であり、後述する当期純損益(官報)とは別のものとして見ておきたい。
借り上げ運営が膨らませた貸借対照表

総資産は2020年2月期の約5.7億円から、直近では約41.4億円へと7倍以上に膨らんだ。宿泊施設を借り上げて運営する事業は、敷金・保証金や預り金、未払いの費用などが両建てで積み上がり、負債も総資産とともに大きくなりやすい。自己資本比率は2024年2月期に約12%まで沈んだあと、増資と黒字化で直近は約28%まで戻している。純資産も直近で約11.8億円を確保した。赤字を出し続けながら資金を入れ、規模を拡げ、その先で黒字に届いた——という流れが、この財務の動きから読み取れる。
ただし、官報の決算公告は貸借対照表が中心で、売上高や営業損益、運営戸数・稼働率・客室単価といった運営の中身までは出てこない。だから2026年2月期の黒字も、確認できるのは「当期純利益が黒字になった」という一点で、それが売上の伸びによるものか、粗利の改善か、費用の抑制かまでは公告からは断定できない。運用資産の面では、東急リバブルやJBCホールディングスと組んで不動産ファンドを複数組成し、運用資産は約158億円に達したと会社が公表している。借り上げ運営で膨らんだ帳簿の背後で施設が実際に動いていることは、前述の運営規模や稼働率の公表値からうかがえる。
推定評価額は約3億円から約120億円へ
未上場の matsuri technologies に市場でついた株価は存在しない。それでも、登記簿に残る優先株式の払込単価を使えば、会社が値づけに用いてきた基準を、ラウンドごとに外から復元できる。

履歴事項全部証明書には、A種からE種までの優先株式について、1株あたりの取得価額にあたる金額が記されている。A種の539円から、B種1,350円、C種3,200円、D種5,500円、そして直近のE種は7,000円。これは将来の調達価格の天井をうかがう「評価の上限額」ではなく、その時点で投資家が実際に払い込んだ単価そのものだ。A種からE種で、1株の値段は約13倍に上がってきた。
この単価に、それぞれのラウンド時点までに発行された株式数を掛けると、評価額の移り変わりが見えてくる。

A種のころの約3億円から、B種で約10億円、C種で約32億円、D種で約74億円、そして直近のE種では発行済みの株式だけで約108億円。役職員などに割り当てられた新株予約権(普通株式に直すと約17万株)まで含めた全株式数で見ると、直近の推定評価額は約120億円になる。上場企業でいう時価総額に相当する規模だが、未上場のため市場価格ではなく、登記からの独自試算だ。単価が約13倍に上がり、発行する株式数も増えたことで、評価額はおよそ35倍に伸びた計算になる。
この単価には裏づけがある。直近のE種は、増えた資本金の2倍を新規発行株数で割り戻すと1株あたり7,000円になり、発行株数を掛けると約13.5億円。会社が公表した「総額13.4億円の調達」とほぼ重なる。その一つ前のD種も、同じ計算で約20億円となり、当時公表された調達額と一致する。登記から積み上げた優先株式の払込額は累計で約43億円だ。
ひとつ注意がある。会社のプレスリリースが使う「シリーズ」の呼び名は、登記の種類株式の記号とは一致しない。約20億円を集めた2022年の調達を会社は「シリーズC」と呼ぶが、登記上はD種優先株式にあたる。総額13.4億円を集めた2024年の調達は「シリーズD」だが、登記上はE種だ。本文の評価額は、呼び名ではなく登記に記された種類株式の単価と株式数から組み立てている。
そのうえで、この推定評価額は優先株式の単価を普通株式を含む全株式に当てはめた単純計算で、優先株式に付く残余財産分配などの優先権は考慮していない。決算上の純資産(直近で約11.8億円)とも別の概念であり、将来の資金調達でつく価格を映す数字として見たほうがいい。
コロナ禍の発信と、「無人運営」という思想
評価額の数字だけを並べると、登記をたどる話に閉じてしまう。なぜ赤字を抱えながら投資家と利用者を集めてきたのか。その手がかりは、コロナ禍での動き方と、創業者の事業観にある。

2016年から2026年までに確認できる発信は約890件にのぼり、その大半が2020年から2021年にかけての時期に集中している。月間の発信は一時82件に達した。旅行需要が消えた局面で、海外在住者の一時帰国向け滞在サービス「一時帰国.com」、初期費用ゼロで始められる「おためし同棲」、長期滞在に振り向けたマンションステイ「stayme」など、短期の観光に依存しない使い道を次々に打ち出していった発信の波が、この山として現れている。吉田氏は後年、自身のnoteで「奇跡的な需要を掘り当て」たと当時を振り返っている。
その軸にあるのが、人を置かずに施設を運営するという発想だ。吉田氏は三菱地所のイベントでの講演で、民泊とマンスリーマンションを掛け合わせて「空間を自由自在に提供できるようになれば、アセットとしての価値が高まる」と二毛作型の運営を考案した経緯を語り、ソフトウェアとオペレーション、法律やファイナンスの理解までを自社で抱える理由をこう説明している。膨大で煩雑な顧客対応が「ソフトウェアの開発につながりました」、そして「理論上、うまくいくことはわかっていました。ただ、実際にやってみると法律も税制もまったく違い、本当に大変でしたね」。需要が蒸発した時期に発信量で攻め、運営の難所を一つずつソフトウェアに落とし込んだことが、後の資金調達と規模拡大の助走になっていた、と読める。
事業の組み立てを資本面で支えてきたのは、ベンチャーキャピタルと事業会社だ。2019年にシリーズBで約5.8億円を集め、その後もシリーズの調達を重ね、2022年に約20億円、2024年に総額13.4億円と段階的に資金を集めてきた。グロービス・キャピタル・パートナーズの投資先として取締役会に同社のパートナーが名を連ね、その後も三菱地所のファンドや三菱商事、日本郵政系、海外ファンドなどが出資に加わるなど、独立系のスタートアップとして資本を積み上げてきた歩みが、登記と公表資料から跡づけられる。

ソフトウェア会社と運営会社を、ひとつに束ねる
直近の決算で黒字に届いた背景には、資本政策だけでなく、グループの形を整理する動きもある。
登記簿には、2025年2月28日に運営を担っていた子会社(matsuri space株式会社)を吸収合併した記録が残る。ソフトウェアを開発・販売する会社と、実際に施設を借り上げて運営する会社を、ひとつの法人に束ね直した動きだ。合併が効力を生じた2025年2月28日は、2025年2月期の最終日にあたる。期末日の合併は、その期の貸借対照表に運営会社の資産・負債を取り込む一方、損益として通年で表れるのは翌期からになる。実際、合併が反映された2025年2月期に総資産と純資産がそろって膨らみ、初の黒字となった2026年2月期は、束ね直したあとの最初の通年決算という関係にある。さらに、合併の前は施設運営を別法人が担っていたため、matsuri technologies 単体の決算公告に運営会社の損益は含まれていなかった。合併でその運営会社が単体に取り込まれた結果、単体決算の中身は合併の前後で連続していない。初黒字の2026年2月期を、合併前の各期と単純に横並びで比べられる数字ではない、という点は押さえておきたい。合併そのものが2025年2月期の損益を黒字方向に押し上げた、とまでは決算公告からは言い切れない。
事業目的(定款)も、設立当初のソフトウェア・WEBサービスを中心とした内容から、住宅宿泊事業・旅館業・特区民泊・不動産の売買仲介・清掃や修繕の代行・家具家電のレンタルまでを含む幅広い構成へと広げられてきた。窓口になるソフトウェアと、その先の施設運営・周辺サービスを、一体で抱える体制を整えてきたことが、登記の側からも見て取れる。
資本金の動きには、もう一つの特徴がある。2024年にE種の払込で資本金を一度6億円台まで積み上げたあと、同じ年のうちに1億円へ引き下げている。資本金を1億円以下に保つことは、中小企業向けの税制(外形標準課税や法人住民税の均等割など)の負担と結びつくことが多い動きで、増資を重ねるスタートアップでは珍しくない。ただし個別の狙いまでは登記からは読み取れない。
民泊という制度の隣で
無人運営という形は、民泊・短期賃貸をめぐる許認可と隣り合わせで成り立っている。同じ「宿泊」でも、根拠となる法律は一つではない。旅館業法は許可制で営業日数に上限がなく、国家戦略特区の特区民泊は認定制で最低2泊3日からの滞在が条件になる。2018年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)は届出制だが、年間に客を泊められる日数は180日までと定められている。同社の定款には、この三つの制度の名前がいずれも並ぶ。一つの空間を、賃貸と宿泊のあいだで切り替えながら使う「二毛作」の発想は、こうした制度の隙間を運営とソフトウェアで埋めるところに立っている。
制度の隣には、業界に共通する課題もある。民泊・短期賃貸は、近隣とのゴミや騒音をめぐるトラブル、マンションの管理規約による利用制限、180日上限といった制約と向き合い続ける事業領域だ。会社自身も、ゲストとの連絡不足から生じるゴミ・騒音の問題を業界の課題として認め、案内動画や見回りなどの対策を公表している。吉田氏は2025年に短期・小規模宿泊の運営事業者団体を立ち上げて代表理事に就き、違法・悪質な事業者の排除を業界の側から進める立場にもある。公表されたネガティブな報道・行政処分・訴訟などは、確認した範囲では見当たらなかった。無人運営という形で、本人確認や鍵の受け渡し、近隣との関係づくりをどう仕組みに落とすかが、規模の拡大と同じだけ問われ続ける。
「無人運営」を支える商標と、200人を超えた組織
無人での施設運営という事業の輪郭は、商標の出願にも現れている。

早い時期に「二毛作民泊」という言葉を押さえ、その後は「sumyca」「おためし同棲」「StayX」「S-villa」「stayme」と、サービスを立ち上げるたびに名前を商標として登録してきた。社名そのものの「matsuri technologies」も2022年に出願している。直近の2025年には「stayme THE HOTEL」「VADE HOTEL」「STAND HOTEL」と、ホテル業態を思わせる名称をまとめて取得しており、無人運営の仕組みを宿泊ブランドへ展開しようとする意思が、商標の側からもうかがえる。
それを担う人員は、着実に増えている。

社会保険の被保険者で見た従業員数は、2023年末の113人から、直近では239人まで増えた。2年半でおよそ2倍だ。無人運営をうたう事業だが、ソフトウェア開発から物件の借り上げ、清掃や本人確認の体制づくりまでを自社で抱えるため、人を増やしながら規模を広げてきたことになる。機関設計の面でも、2022年に監査役会設置会社へ移行し、複数の監査役を置く体制を整えている。株式の譲渡に取締役会の承認を求める非公開会社の形を保ちながら、ガバナンスを段階的に厚くしてきた動きと読める。
黒字化の初年度から、その先へ
matsuri technologies の決算は、6期続いた赤字と、累計約31億円の純損失という重い数字を抱えている。だが同じ会社が、観光需要の消えたコロナ禍で発信量を増やして使い道を組み替え、ベンチャーキャピタルと事業会社から段階的に資金を集め、運営子会社をひとつに束ね、7期目で初めて黒字に届いた。資金を入れて規模を広げてきた局面と、その投資が損益の黒字として返り始めた局面が、いまこの一社の中で切り替わりつつある。
黒字が続くかどうかは、いくつもの外部要因に左右される。宿泊需要はインバウンドと為替の動きに揺れ、運営できる部屋は年間180日の上限や自治体の上乗せ条例、マンションの管理規約といった地域ごとの規制に縛られる。無人をうたっても清掃や本人確認、近隣対応を担う人手は要り、運営室数が増えるほど一室ごとの品質を保つ負荷は重くなる。借り上げた施設が増えるほど、貸借対照表は両建てで膨らみ、近隣との関係や許認可への目配りも重くなる。次の決算公告で見たいのは、初めて出した黒字が一度きりで終わらず、利益の出る体質として定着するか——「倒産まで残り6カ月」と振り返った会社が、黒字を当たり前にできるかどうかの一点になる。
計算方法(この記事の数値について)
- 1株あたりの値段:各ラウンドの単価は、履歴事項全部証明書に記載された取得価額・残余財産分配額として読み取れる金額を用いた(A種539円・B種1,350円・C種3,200円・D種5,500円・E種7,000円)。これは将来の調達価格の上限ではなく、実際に払い込まれた単価である。E種は、資本金の増加額の2倍を新規発行株数で割った額(1株7,000円)と一致し、D種・E種はそれぞれ公表された調達額(約20億円・約13.4億円)とも一致する。なお推定評価額は、優先株式の単価を普通株式を含む全株式に当てはめた単純計算であり、優先株式に付く残余財産分配などの優先権は考慮していない。
- 評価額の推移:各ラウンドの推定評価額は、上記の単価に、その時点までに発行された株式数を掛けて算出した。各ラウンド時点の株式数は、直近登記の種類別株式数を発行順に積み上げた推定値で、普通株式とA〜D種は直近まで株数が変わっていない。ラウンドの時期は調達の公表時期から推定した概数。会社のプレスリリースが使う「シリーズC/D」の呼称は登記の種類株式(D種/E種)とは一致しないため、本文は登記の種類別単価を基準にした。
- 直近の全株式数と単価の裏づけ:直近の発行済株式 154万6,301株 + 現存する新株予約権9回分の目的株式合計 16万9,879株 = 約171万6千株に 7,000円を掛けて約120億円とした。新株予約権は登記簿に複数回の記載があり、全部消却で消滅した回を除いた、現存する回の最新個数を合計している(いずれも1個あたり普通株式1株)。直近に確認できる払込単価がE種7,000円のため、現時点の全株式数にこの単価を当てはめた1点として算出している。
- 損益・財務:官報の決算公告は貸借対照表が中心で、売上高・営業損益は開示されない。このため損益は当期純損益で追い、2026年2月期の黒字も「当期純利益が黒字になった」ことまでを事実として扱い、それが売上増・粗利改善・費用抑制のいずれによるものかは断定していない。売上高(会社公表で2023年2月期14億円→2026年2月期110億円規模)・運営規模(2,400ユニット超→国内約4,000施設)・稼働率(宿泊/短期賃貸とも約8割)・2023年のチェックイン数前年比434%/施設数前年比229%・運用資産約158億円・上場REIT物件(日本都市ファンド投資法人 保有の沖縄物件45戸)のStayX運用開始は、いずれも決算公告の外にある会社・提携先の公表値で、当期純損益とは別のものとして扱った。「国内最大手」「登録物件数No.1」は会社・報道の表現で、母数の定義は資料からは判然としない。資本金は2024年にE種の払込で6億円台まで増えたあと、同年のうちに1億円へ減資している。
- 組織再編:運営子会社の吸収合併は2025年2月28日に効力が生じ、これは2025年2月期の期末日にあたる。期末日の合併は当期の貸借対照表に資産・負債を取り込み、損益への通年の影響は翌期から表れるため、当期の黒字方向への寄与は断定していない。合併前は施設運営を別法人が担い、matsuri technologies 単体の決算公告には運営会社の損益が含まれていなかったため、合併の前後で単体決算の中身は連続しておらず、初黒字の2026年2月期を合併前の各期と単純に横並びで比較することはできない。
- 従業員数:厚生労働省の社会保険の被保険者数(月次)を用いた。実際の在籍者数とは範囲が異なる場合がある。
- 公表されたネガティブな報道・行政処分・訴訟などは、確認した範囲では見当たらなかった。
参考にした主な外部情報
- 「ピンチはチャンス、民泊国内最大手の飽くなき挑戦」代表インタビュー(Forbes JAPAN)
- Founders Night Marunouchi 代表講演(xTECH/三菱地所)
- 代表によるコロナ禍の総括(note)
- 代表トップインタビュー(全国賃貸住宅新聞)
※決算公告・履歴事項全部証明書・社会保険の被保険者数・知的財産(J-PlatPat)は一次データを直接参照している。
ファクトシート
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商号 | matsuri technologies株式会社 |
| 本店所在地 | 東京都新宿区高田馬場 |
| 設立 | 2016年8月1日 |
| 代表取締役 | 吉田圭汰 |
| 決算期 | 2月 |
| 主な事業 | 無人運営ソフトウェア「m2m Systems」を核とした空間運営ソリューション「StayX」、短期賃貸プラットフォーム「Sumyca」、宿泊ブランド「stayme」「S-villa」等の開発・運営 |
本文で言及した企業