CAMPFIREの決算と資金調達の現在地 ─ 初の黒字は1年で途切れた。決算公告10期と登記簿で読む、▲20億円の総決算から第二創業まで

CAMPFIREを決算公告10期と登記簿で分析。確認できる公告で初の黒字(2024年12月期)は翌期▲2.08億円で途切れた。▲20億円の第11期と過年度一斉訂正、F種優先株式から算定した推定時価総額約114億円(2023年2月時点)まで、再起動の手順を整理した。

Compalyze 編集部分析対象株式会社CAMPFIRE

この記事のポイント

  • 第14期(2024年12月期)に 確認できる公告10期で初の黒字 +2.05億円 を計上した翌期、第15期(2025年12月期)は ▲2.08億円 で再び赤字に。最新の公告は2026年4月10日掲載
  • 2022年4月8日、第8期から第11期までの決算公告が一斉に掲載し直され、第11期(2021年12月期)の純損失は ▲20.1億円 。10期分の損益の谷がここにある
  • 登記で確認できる直近の株式調達はF種優先株式(2023年2月、1株 192,928円 ・5.65億円)。この単価による全株式数ベースの時価総額は 約114億円 (2023年2月時点)

本記事の前提 株式会社CAMPFIRE(本店:東京都渋谷区、設立:2011年1月14日)について、 (1) 決算公告 10期分(第6期=2016年12月期〜第15期=2025年12月期、官報・日刊工業新聞、訂正後の数値)(2) 履歴事項全部証明書(2026年6月11日取得)(3) 公開プレスリリース 597件(2016年〜2026年)(4) 厚生労働省 社会保険適用事業所の被保険者数 を相互参照し、第三者視点で構成した分析記事です。数字は単体・無連結ベース。第1〜5期の公告と、第12期(2022年12月期)の公告は確認できなかった。


1. 初の黒字は、1年で途切れた

クラウドファンディング国内大手の CAMPFIRE は、第14期(2024年12月期)に、公告で確認できる10期では初めての黒字(当期純利益 +2.05億円)を計上した。そして2026年4月10日に掲載された最新の第15期公告は、 当期純損失 ▲2.08億円 ──黒字はちょうど1年で途切れた。

当期純損益10期の推移

10期分を並べると、この会社の損益が「右肩上がりに改善してきた」わけではないことがよく分かる。▲1.5億円から始まった赤字は調達のたびに深くなり、2019年に▲10.1億円、そして2021年(第11期)に ▲20.1億円 の谷を打つ。公告が確認できない2022年も、前後の純資産から逆算するとおよそ▲8億円規模。そこから▲0.8億円(2023年)→ +2.05億円(2024年)と一気に水面へ浮上し、2025年に▲2.08億円へ沈み直した。

純資産は16.9億円(2025年12月期末)あり、直ちに財務が緊迫する水準ではない。問題は損益の振れ幅ではなく、「黒字を続けられる構造になったのか」がまだ数字で確定していないことだ。

2. 2022年4月8日の「一斉訂正」 ─ 過年度4期分が掲載し直された

CAMPFIRE の公告履歴には珍しい記録がある。2022年4月8日付の官報に、 第8期・第9期・第10期・第11期の決算公告が同じ日に並んで掲載された のだ。第8〜10期は過年度の掲載し直しで、数値も変わっている。

当初の公告2022年4月8日の公告
第8期(2018年12月期)▲6.35億円/純資産7.14億円▲6.67億円/純資産6.81億円損失 +0.33億円
第9期(2019年12月期)▲9.70億円/純資産8.97億円▲10.12億円/純資産8.21億円損失 +0.42億円
第10期(2020年12月期)▲6.44億円/純資産26.61億円▲6.05億円/純資産24.74億円損失 ▲0.39億円
第11期(2021年12月期)―(初出)▲20.11億円/純資産18.96億円

過年度の決算を訂正したうえで、▲20.1億円の第11期を確定させる──2022年春の CAMPFIRE が、過去の数字を洗い直して仕切り直す局面にあったことが、公告の並びだけから読み取れる。本記事では以降、訂正後の数値で統一している。

3. 貸借対照表は「預り金」の器 ─ コロナ特需の総資産74億円

総資産の構造

CAMPFIRE の貸借対照表で目を引くのは2020年12月期だ。総資産73.7億円・負債49.0億円と、前年(18.3億円)から一気に4倍へ膨らんだ。新型コロナ下で支援プログラムが殺到した時期で、クラウドファンディングのプラットフォームは集まった支援金をプロジェクト実行者へ渡すまでの間「預かる」ため、流通額が増えるほど資産と負債が両建てで膨らむ。負債の相当部分は借入ではなく、この預り金に連動して動くものとみられる。

その後の総資産は40億円台で安定しており、2025年12月期は総資産47.6億円・負債30.6億円・純資産16.9億円。流通額に連動する預り金の器として見れば、ピークの2020年より落ち着いた巡航水準にある。

4. 資本政策 ─ 旧商号「ハイパーインターネッツ」から、F種優先株式まで

登記簿の商号欄には、設立時の社名 株式会社ハイパーインターネッツ が残っている。現商号への変更登記は2016年2月9日。サービス名「CAMPFIRE」が先に育ち、5年遅れで社名が追いついた形だ。

資金調達の公表履歴

調達の歴史はプレスリリースで累計87.2億円(2023年3月時点の同社公表値)。登記の発行済株式にはA種からF種まで6種類の優先株式が並ぶが、履歴事項全部証明書で増資の単価まで確認できるのは直近の F種優先株式(2023年2月15日、2,927株・払込5.65億円・1株192,928円) だけだ。公表された「10.6億円の資金調達」(2023年3月1日)のうち株式は5.65億円で、残りは借入等とみられる。

このF種の単価で会社全体の時価総額を計算する。

会社全体の時価総額(F種ラウンド時点)

  • 発行済株式 55,292株 + 当時存続していた新株予約権 3,711株分 = 全株式数 59,003株
  • 1株192,928円 × 全株式数 = 約114億円 (発行済株式だけなら約107億円)

このスナップショットは2023年2月時点のもので、すでに3年が経過している点には注意がいる。以降に新たな優先株式の発行はなく、登記で確認できる増資は2023年9月の普通株式40株(約121万円・新株予約権の行使とみられる)のみ。つまり CAMPFIRE は 直近3年あまり、エクイティの大型調達なしで運転している 。資本金も2023年12月18日に9,000万円へ減資され、1億円未満の水準を保つ。

もうひとつ、登記簿には再起動の痕跡がある。2023年9月15日、従業員向けとみられる旧来の新株予約権3本(第3回・第4回・第6回、放棄時点の現存分で合計約2,400株分)が 同日に全部放棄され、同じ日付で新しい第8回・第9回(約1,470株分)が発行された 。その後も2024年から2026年まで毎年新しい回号が追加されており(直近は2026年5月1日発行の第14回)、旧来のインセンティブを整理し、新体制の従業員へ配り直す動きと読み取れる。

5. 体制 ─ 2024年11月、創業者から代表交代

2024年11月1日、CAMPFIRE は代表取締役の交代を公表し、「第二創業期へ」と宣言した。現在の代表取締役は中島真氏。創業者は2024年10月31日付で代表を退任しており、登記上も交代が確認できる。時系列を重ねると、創業者が席を譲ったのは、14年目にして初めて黒字で締まることになる期のまっただ中だった──最も渡しやすいタイミングを選んだようにも、最も渡しにくい瞬間を引き受けた交代にも読める。取締役には起業家・投資家ら4名、監査役は3名で 監査役会設置会社 の登記がある。会計監査人の登記はまだない。2021年12月には株式会社エクソダス(2018年設立)を吸収合併した記録も残る。

従業員は社会保険の被保険者ベースで243人(2026年6月時点)。プレスリリースは累計597件と本記事で扱った5社の中でも突出して多く、プラットフォーム事業らしくプロジェクト発の発信が日常的に続いている。知財は商標19件(CAMPFIRE、GoodMorning ほか)が中心だ。

プレスリリース月次

6. 「黒字を続けられる構造か」は、次の公告で分かる

CAMPFIRE の15年を公告と登記で通読すると、節目は3つあった。コロナ特需で器が4倍に膨らんだ2020年。過年度の数字を整理し、▲20.1億円の第11期を確定させた2022年春。そして代表交代と黒字化が重なった2024年。黒字が1年で途切れた事実だけを見て後退と呼ぶのは早く、▲2.08億円は10期の歴史の中では最も浅い谷のひとつである。

だからこそ、すべては第16期(2026年12月期)の公告に集約される。損益が「ゼロ近辺の往復」から黒字側に定着すれば、代表交代後の体制は数字で裏付けられる。一方でエクイティ調達が再開されるなら、新たな優先株式が登記に現れた時点で3年ぶりの値付けが付き、かねて取り沙汰されてきた株式公開への距離感も測り直せる。どちらに転んでも、▲20億円の総決算から3年で水面まで戻した会社の、16年目の進路が決まる公告になる。


7. 計算方法(Methodology)

時価総額の基本ルール(資本金増×2、新株予約権を含む全株式数の現存ベース集計)は記事末尾の共通注記のとおり。ここでは CAMPFIRE 固有のメモを残す。

  • 時価総額のスナップショットは2023年2月15日(F種優先株式発行)時点 。単価192,928円は「資本金増加2.824億円×2 ÷ 2,927株」で端数なく割り切れる。新株予約権は当時存続していた第2回(40個)・第3回(117個)・第4回(1,342個)・第6回(2,212個)の計3,711株分(1個=1株)を加算した。これ以降に優先株式の発行はなく、より新しい単価は登記から得られない
  • 履歴事項全部証明書の制約 :閉鎖事項を含まないため、2023年1月1日より前に効力を失った登記事項(A〜E種優先株式の発行経緯・単価、過去の新株予約権第1回・第5回など)は確認できない。シリーズA〜Eの調達額はプレスリリースの公表値を使用した
  • 決算数値は訂正後を採用 :第8〜10期は2022年4月8日掲載の訂正値を使用。第12期(2022年12月期)は公告が確認できず、前後期の純資産とF種払込から▲7.9億円前後と推定した(新株予約権の発行・消滅による純資産変動分の誤差を含む)
  • データ除外 :2022年4月13日掲載の「第7期決算公告」(純損失1.05億円・純資産0.13億円)は、期数・数値とも同社の系列と接続せず、別法人の公告が誤って紐づいたものと判断して除外した

ファクトシート

  • 法人名株式会社CAMPFIRE(旧商号:株式会社ハイパーインターネッツ、2016年2月9日変更)
  • 設立 :2011年1月14日
  • 本店所在地 :東京都渋谷区猿楽町18番8号
  • 代表取締役 :中島真
  • 決算月 :12月
  • 資本金(直近 2023年12月18日 登記) :9,000万円
  • 発行済株式(2023年9月22日時点) :普通株式 19,723株/A種優先株式 5,890株/B種優先株式 8,050株/C種優先株式 9,611株/D種優先株式 2,155株/E種優先株式 6,976株/F種優先株式 2,927株(合計 55,332株)
  • 機関設計 :取締役会設置会社・監査役会設置会社
  • 公告方法 :官報(決算公告は日刊工業新聞掲載の期あり)

本文で言及した企業