Ubieは25億円の赤字に、17億円の資本を継ぎ足した──エクイティと融資の両方が続いている
医療AIのUbieは2025年12月期に25.03億円の損失を出したが、同じ期に16.92億円の資本が入り、純資産の目減りは8.11億円にとどまった。流動比率はむしろ157%から185%へ改善している。エクイティと融資の両方を引き続けている会社の貸借対照表を、決算公告と登記から読む。

この記事のポイント
- 2025年12月期の当期純損失は 25.03億円。同じ期に資本剰余金と新株予約権が合わせて 16.92億円増えており、純資産の減少は 8.11億円にとどまった。差は1円まで合う
- 期末の純資産は ▲13.59億円だが、流動資産 34.34億円に対し流動負債は 18.53億円。流動比率はむしろ157%から185%へ改善している。貸借対照表上のマイナスと、支払いが詰まることは別の話だ
- 2023年11月から2025年4月まで、資本金は17回にわたって増えた。その17回すべてで、C種優先株式1株あたりの資本金組入額は20,000円ちょうど。1円の端数もない
症状を入力すると考えられる病気と近くの医療機関を示す「ユビー」は、月間の利用者が1,200万人を超えるとUbie株式会社が公表している。2024年10月にはGoogleが出資し、2025年3月にはNTTドコモ、セブン-イレブン・ジャパン、日本郵政キャピタルが相次いで資本業務提携を発表した。2025年5月には商工組合中央金庫と日本政策金融公庫からの融資も公表され、同月、累計調達額が180億円を突破したと会社が発表している。
その会社の決算公告を開くと、2025年12月期末の純資産は マイナス13億5,919万円と書かれている。資産より負債が多い、いわゆる債務超過だ。
この2つは矛盾しない。決算公告に載るのは過去の積み上げで、出資や融資の判断は将来を見て行われるからだ。以下は、公告と登記簿から読み取れる範囲で、この会社の資本がどう動いているかを追ったものである。決算公告に載るのは貸借対照表の要旨だけなので、継続企業の前提に関する注記があるかどうかも、監査を受けているかどうかも確認できない。
1. 25億円の赤字に、17億円の資本が入った

まず、直近1期で何が起きたかを分解する。
| 2024年12月期末 | 2025年12月期末 | 差 | |
|---|---|---|---|
| 資本金 | 0.90億円 | 0.90億円 | ± 0 |
| 資本剰余金 | 119.60億円 | 136.30億円 | +16.70億円 |
| 利益剰余金 | ▲128.55億円 | ▲153.58億円 | ▲25.03億円 |
| 株主資本 | ▲8.05億円 | ▲16.38億円 | ▲8.33億円 |
| 新株予約権 | 2.57億円 | 2.79億円 | +0.22億円 |
| 純資産 | ▲5.48億円 | ▲13.59億円 | ▲8.11億円 |
この期の当期純損失は 25.03億円。それだけなら純資産は25億円ぶん減るはずだ。ところが実際の減少は 8.11億円にとどまっている。
差を埋めているのが、資本剰余金の増加 16.70億円と新株予約権の増加 0.22億円、合わせて 16.92億円の資本取引である。
- ▲5.48億円(期首) + 16.92億円(資本の補給) − 25.03億円(当期純損失) = ▲13.59億円
1円まで合う。25億円を使いながら、17億円を外から入れて、差の8億円だけ純資産が減った——これがこの期の姿だ。
株主資本等変動計算書は公表されていないので、16.92億円のすべてが新規の払込だと確定はできない。ただ、この期にはGoogle・NTTドコモ・セブン-イレブン・ジャパン・日本郵政キャピタルの出資が個別に発表されている。資本剰余金がこれだけ動いた背景に、それらの払込があると読むのが素直だろう。
2. 純資産のマイナスと、支払いが詰まることは別

「債務超過」という言葉は、資金が尽きた状態を連想させる。だが決算公告の中身を見ると、短期の支払い余力はむしろ厚くなっている。
| 2024年12月期末 | 2025年12月期末 | |
|---|---|---|
| 流動資産 | 25.62億円 | 34.34億円 |
| 流動負債 | 16.31億円 | 18.53億円 |
| 流動比率 | 157.1% | 185.3% |
| 固定負債 | 16.05億円 | 31.04億円 |
1年以内に現金化される見込みの資産が34.34億円あり、1年以内に支払う負債は18.53億円。比率は前期の157%から185%へ上がっている。流動資産の中身(現預金がいくらか)は公告に載らないので手元資金そのものは分からないが、少なくとも短期の支払い余力が細ったようには見えない。
純資産がマイナスというのは、これまでに積み上げた損失が、これまでに払い込まれた資本を上回ったという帳簿上の状態であって、支払いが止まることを意味しない。この2つは分けて読む必要がある。
一方で、固定負債は16.05億円から31.04億円へ、約15.0億円増えている。2025年3月27日に行使が始まった新株予約権付社債の払込金額15億円と近い水準だ。ただしこれは純増額なので、この15億円がすべて当該社債だと確定はできない。借入の返済や、流動と固定の振り替えが相殺されている可能性がある。
いずれにせよ、返す必要のあるお金の比重は上がっている。次に問われるのは追加調達ができるかどうかだけでなく、その返済負担を上回る収益をいつ作れるかである。
3. 赤字はどこまで縮んだのか

損益の推移を8期分並べる。
| 期 | 決算期 | 当期純損益 | 純資産 |
|---|---|---|---|
| 第1期 | 2018年4月 | ▲0.13億円 | 0.54億円 |
| 第2期 | 2019年4月 | ▲1.38億円 | 4.27億円 |
| 第3期 | 2020年4月 | ▲3.35億円 | 5.51億円 |
| 第4期 | 2021年9月(17か月) | ▲23.74億円(推定) | — |
| 第5期 | 2022年9月 | ▲30.46億円 | 37.15億円 |
| 第6期 | 2023年12月(15か月) | ▲38.43億円 | 3.56億円 |
| 第7期 | 2024年12月 | ▲31.06億円 | ▲5.48億円 |
| 第8期 | 2025年12月 | ▲25.03億円 | ▲13.59億円 |
ここで注意がいる。この表の数字を、そのまま横に並べて比べてはいけない。 会社は決算期を2回変えており、第4期は17か月、第6期は15か月ある。他の期の12か月とは長さが違う。
直近3期を1年あたりに直すと、こうなる。
- 第6期 ▲38.43億円 ÷ 15か月 × 12 = 年率 ▲30.74億円
- 第7期 ▲31.06億円(12か月)
- 第8期 ▲25.03億円(12か月)
第6期から第7期はほぼ横ばい(わずかに悪化)で、はっきり改善したのは直近の1期、19.4%の縮小である。見かけ上は3期連続で減っているように読めるが、期間をそろえるとそうではない。ただし直近1期の改善幅は小さくない。年間25億円というペースまで下りてきている。

累計で見ると、払い込まれた資本(資本金0.90億円+資本剰余金136.30億円=137.20億円)を、積み上がった損失153.58億円が16.38億円ぶん上回っている。そこへ株主資本ではない新株予約権2.79億円が加わって、純資産が ▲13.59億円になる。
この区分は混ぜてはいけない。新株予約権は純資産の部には表示されるが、株主資本ではない。持ち主はまだ株主とは限らないからだ。
念のため確かめておくと、第6期から第8期まで、「前期末の純資産+当期純損益+その期の払込+新株予約権の増減」で計算した理論値と、実際の期末純資産の差は各期1,000円しかない。丸めの範囲である。減資で穴を埋める処理(欠損填補)も、この3期には行われていない。赤字が資本を削り、増資が押し戻した結果として、素直に説明がつく。
ひとつ注意しておくと、利益剰余金の ▲153.58億円は会計上の累積損失であって、「153億円の現金を使った」という意味ではない。減価償却や引当金のように現金を伴わない費用も含まれるし、逆に設備投資のように現金は出ても費用にならないものもある。同じ理由で、会社が公表している累計調達額180億円も「180億円を使い切った」という意味ではない。これはエクイティと融資を合わせた累計の調達額で、そのうち返済済みのものも、いま資産として残っているものもある。キャッシュフロー計算書は公表されていないので、実際にいくら現金が動いたかは分からない。
4. 17回の増資で、1株あたりの資本金組入額は動かなかった
ここからが登記簿の話になる。
2023年11月22日から2025年4月18日まで、資本金は17回にわたって増えている。1回あたり250万円から5億円まで幅があり、2024年1月には5日間で5回という密度で入っている。
各回について「資本金の増加額 ÷ 増えたC種優先株式の株数」を計算すると、こうなる。

17回すべてが、1株あたり20,000円ちょうどだった。1円の端数もない。合計では、資本金が21億6,648万円増え、C種優先株式が108,324株増えている。
ここで登記から確実に言えるのはここまでである。会社法は、払い込まれた額の2分の1を「超えない額」を資本金に計上しないことができる、と定めているだけで、必ず半額にせよとは言っていない。だから「1株あたり20,000円を資本金に入れた」という事実から、払込価額そのものは決まらない。
慣行どおり半額を資本金に組み入れたと仮定すれば、払込単価は 1株40,000円、払込総額は 43億3,296万円になる。本稿ではこの仮定を置いて以降の試算をするが、これは推計であって登記に書かれた金額ではない。実際の払込価額を確かめるには、募集事項の決定書や株主資本等変動計算書が要る。
もうひとつ、はっきりさせておきたいことがある。登記簿の定款条項には、各種類株の残余財産優先分配額が書かれている。A種23,350円、B種40,000円、C種40,000円。B種とC種が同額だ。だがこれは清算したときの分配の順位と上限を定めた権利の内容であって、発行時にいくらで売ったかを示すものではない。ここから「B種の時代から株価が据え置かれていた」と読むことはできない。
同じことは回数についても言える。17回の増資は登記上の事実だが、それが17回の値決めだったとは限らない。同じラウンドを分割してクロージングしただけ、という可能性は十分にある。動かなかったと確実に言えるのは、1株あたりの資本金組入額である。
参考までに、仮定を置いた単価40,000円を全株式に当てはめると、2022年9月(708,481株)で約283.4億円、2025年4月(816,805株)で約326.7億円、潜在株式を含めれば約360.7億円になる。ただしこれは企業価値でも株主価値でもない。優先株には残余財産の優先権があり、参加型か非参加型か、転換条件はどうかによって1株の価値は変わる。同じ単価を普通株にも他の種類株にも一律に当てはめた数字は、規模感の目安以上のものではない。
5. 資本金は3回、9,000万円に戻された

増資のたびに膨らんだ資本金は、3回にわたって9,000万円へ戻されている。
| 効力日 | 減資額 | 戻った額 |
|---|---|---|
| 2023年12月29日 | ▲2億5,000万円 | 9,000万円 |
| 2024年12月27日 | ▲10億8,150万円 | 9,000万円 |
| 2025年6月9日 | ▲8億3,498万円 | 9,000万円 |
資本金の額は、税制上いくつかの区分の判定に使われる。ただし制度は動いており、外形標準課税(地方税法にもとづく事業税)については2025年度以降、資本金の額だけでなく資本金と資本剰余金の合計額を使う判定も加わった。中小企業向けの特例にも例外がある。着地点が3回とも9,000万円ちょうどであることは事実だが、登記簿に理由は書かれていない。同種の資本政策はスタートアップで広く見られるもので、それ自体は珍しくない。
大事なのは、この減資が財務を悪くしたわけでも、赤字を埋めたわけでもないことだ。減資は資本金という勘定から「その他資本剰余金」へ数字を移す組替えで、会社の資金も純資産の総額も動かない。実際、減った資本金はその他資本剰余金に積み上がったままで、利益剰余金は減っていない。だから第8期の利益剰余金は ▲153.58億円のまま残る。
裏を返せば、資本金9,000万円という表示だけを見て会社の規模や体力を測ると、大きく読み違える。同じ貸借対照表に、資本剰余金が136.30億円ある。
6. 事業会社の出資と、金融機関の融資が並んでいる

2024年から2025年にかけて、資金の入り口は2種類が並んでいる。
事業会社からのエクイティ。2024年10月にGoogle、2025年3月に日本郵政キャピタル、NTTドコモ、セブン-イレブン・ジャパン。いずれも資本業務提携として発表されており、単なる財務出資ではなく事業上の結びつきを伴っている。
金融機関からのデット。2024年4月のインパクトファイナンス約35億円(出資と融資を含む)、2025年5月の商工組合中央金庫10億円と日本政策金融公庫10億円。加えて2025年3月に行使が始まった新株予約権付社債15億円。
公告の上では債務超過の会社に、大手の事業会社が資本を入れ、政府系を含む金融機関が融資をしている。エクイティは将来の値上がりを見込む判断、デットは返済されるという見込みに基づく判断で、性質が違う。その両方が同じ時期に付いているという事実は、外部から見た事業の評価がまだ続いていることを示している。
ただし、これは事業が黒字化に近いことを意味しない。会社が公表している月間1,200万人という利用者数や、導入医療機関の数は、事業基盤の広さを示す数字であって、売上でも利益でもない。売上高が公告に一度も載っていない以上、その規模がいくらの収益に変換されているかは外からは分からない。
7. 人員はピークから22%減り、直近は戻している

社会保険の被保険者数は、2024年4月の275人をピークに、2026年2月には214人まで減っている。61人、22.2%の減少だ。直近の2026年7月は227人で、5か月で13人戻している。
この22か月と、損失が年率で改善した期間は重なる。総資産に対する損失の比率も ▲201% → ▲116% → ▲70% と改善している。
ただし、この2つを因果でつなぐことはできない。被保険者数は従業員数そのものではなく、勤務時間などの加入条件、雇用形態の変更、グループ内の異動でも動く。会社から人員削減の発表も出ていない。同じ時期に両方が起きた、という以上のことは言えない。
この間に会社が発信してきた内容は、病院での生成AI導入事例に寄っている。九州がんセンター、琉球大学病院、亀田総合病院、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院など、2026年2月には全国100病院を超えたと公表した。米国では2026年2月にMayo Clinicとの共同開発を発表している。研究開発を広げる段階から、医療機関と製薬企業で収益化する段階へ寄せているように見える。ただし導入の数はまだ売上ではない。それが収益にどう変わるかは、次の公告を待つしかない。
8. 次の見どころ
資本の補給が続くか。 2025年12月期は25.03億円の損失に対し16.92億円の資本が入り、純資産の目減りを8.11億円に抑えた。同じ形が続けば、純資産のマイナスが急に深まることはない。逆に補給が止まれば、損失がそのまま乗る。次の公告の資本剰余金がいくら動いているかが、いちばん分かりやすい指標になる。
固定負債31億円をどう返すか。 借入と社債の比重が上がった。エクイティと違って返済期限がある。年率25億円まで縮んだ損失を、返済負担を上回る利益へ変えられるかどうかが、次の数年の問いになる。
次の増資の条件。 1株あたりの資本金組入額が20,000円のまま続くのか、変わるのか。登記簿には必ず出る。同じ組入額が続けば、少なくとも資本の入れ方の設計は変わっていないことになる。実際の払込価額まで知るには、それ以上の資料がいる。
Ubieは2017年5月、東京大学医学部を出て研修医をしていた人物と、東京大学大学院で症状と疾患の関係を扱うアルゴリズムを研究していた人物が創業した。二人は高校の同級生で、医学部5年生だった前者に、後者が「症状から病気を推定するものを作ろう」と持ちかけたのが始まりだと、複数のインタビューで語られている。設立から9年目。会計上の累積損失は153億円に達したが、損失のペースは下がり、資本と融資は今も入り続けている。
計算方法(Methodology)
- 財務数値は、確認できた決算公告7期分(2018年4月期〜2025年12月期。ただし2021年9月期は未確認)に基づく。他に公告があっても収録できていない可能性がある
- 売上高は全期とも開示されていない(決算公告は貸借対照表の要旨のみ)。したがって本稿では増収・減収や利益率には触れていない
- 純資産の区分は会計基準に従い、株主資本(資本金・資本剰余金・利益剰余金)と、株主資本以外の項目(新株予約権)を分けて表記した
- 2025年12月期の「16.92億円の資本取引」は、資本剰余金の増加 16.70億円と新株予約権の増加 0.22億円の合計である。株主資本等変動計算書が公表されていないため、その全額が新規の払込であるとは確定できない
- 流動比率は「流動資産 ÷ 流動負債」で算出した。流動資産の内訳(現預金がいくらか)は公告に載らないため、手元資金やランウェイを示すものではない
- 利益剰余金は会計上の累積損失であり、支出額やキャッシュの流出額ではない。キャッシュフロー計算書は公表されていない
- 会社公表の累計調達額180億円(2025年5月12日)は、エクイティと融資を合わせたフローの累計であり、現時点で会社に残っている資金を示すものではない。内訳は公表されていない
- 第4期(17か月)と第6期(15か月)は決算期変更にともなう変則決算である。損失の推移を比較する箇所では、12か月あたりに換算した値を併記した
- 2021年9月期の当期純損益 ▲23.74億円は、前後の期の繰越利益剰余金の残高の差から復元した推定値。繰越利益剰余金は累積残高なので、この差の取り方は期間の長さに左右されない。ただし途中に欠損填補があると成立しないため、同期に欠損填補が行われていないことを資本剰余金の動きから確認したうえで用いた
- 資本金の変遷・種類株式・新株予約権・機関設計は履歴事項全部証明書による
- 1株あたり20,000円は、登記に記載された資本金の増加額を増加株式数で割った実測値である。 払込価額40,000円および払込総額43億3,296万円は、払込額の2分の1を資本金に組み入れる慣行を仮定した推計であり、登記に記載された金額ではない
- 登記に記載された残余財産優先分配額(A種23,350円・B種40,000円・C種40,000円)は、清算時の分配に関する種類株式の権利内容であり、発行価額や株式の時価を示すものではない
- 推定額(283.4億円/326.7億円/360.7億円)は、仮定した単価40,000円を全株式数に当てはめた単純計算である。種類株式ごとの優先権・転換条件の差を反映していないため、企業価値・株主価値・ポストマネー評価額のいずれでもなく、規模感の目安として示した
- 従業員数は社会保険の被保険者数であり、勤務時間などの加入条件があるため、会社が公表する従業員数とは範囲が異なる