先週の資金調達(2026年8月22日〜8月28日)— 最大の257.2億円、うち90億円は「融資枠・与信枠」だった
2026年8月22日〜28日に確認できた未上場企業の資金調達は15件。最大案件の「総額257.2億円」のうち90億円は融資枠・与信枠——公表額の中身を、商業登記・社会保険とあわせて分解した。

先週(2026年8月22日〜8月28日)に新たに確認できた、未上場企業の資金調達に関する発表は15件・15社。金額を確認できたのは7件で、各社が公表した額を単純に足すと約353.2億円になる。そのうち約327.2億円(92.6%)を、フュージョンエネルギー(核融合)の京都フュージョニアリング(総額257.2億円)と、光量子コンピュータのOptQC(総額70億円)の2件が占めた。ただし京都フュージョニアリングの257.2億円は、発表自身が「与信枠・融資枠を含む」と明示する総額であり、エクイティとして発表されたのは167.2億円である(後述)。
金額判明7件の中央値は約4.0億円(TechMagicの引受額)。合計の大きさは上位2件がつくっており、残る5件は19億円から3,000万円までの間に並ぶ。京都フュージョニアリングをエクイティの167.2億円に置き換えて足し直すと、7件の合計は約263.2億円、上位2件の比率は約90.1%で、集中の構図は変わらない(デット90億円の実行済み額は公表されていない)。なお15件のうちTechMagicの1件は、払込期日を8月31日とする引受決議の段階である。
| 調達した会社 | 公表額 | 発表上の引受先・出資者 | 発表に書かれた形 |
|---|---|---|---|
| 京都フュージョニアリング | 総額257.2億円 | IMM Japan 日韓融合ファンド・GX推進機構・日本政策投資銀行・JR東日本ほか名称公表12者+非公表二者、融資・与信枠4行+一行 | シリーズD 1stクローズ(エクイティ167.2億円+融資枠・与信枠含むデット90億円) |
| OptQC | 総額70億円 | NTT(リード)ほか事業会社・独立系VC・公的機関 計21社 | シリーズA2・第三者割当増資 |
| HERP | 約19億円 | JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、DNX Ventures、日本政策金融公庫(借入) | シリーズC・第三者割当増資と借入 |
| TechMagic | 約4.0億円 | CSSホールディングス | E種優先株式の引受け(1社の引受分・払込期日2026年8月31日予定) |
| ネッキョウ | 総額約2億円 | みずほ銀行(融資)、代々木アニメーショングループ(増資) | 会社設立に伴う融資と第三者割当増資 |
| 現場Hub | 7,000万円 | 事業会社(新規)、ファーストライト・キャピタル、D4V | 資金調達 |
| ゲームガム | 総額3,000万円 | Hyperion(リード)、CafeGroup、インキュベイトファンド | プレシードラウンド(2026年7月実施) |
| JEPLAN | 非公表 | GX推進機構 | 第三者割当増資 |
| Mesotron | 非公表 | インキュベイトファンド | プレシードラウンド |
| プロッセルホールディングス | 非公表 | 千葉道場ファンド(リード)、個人投資家1名 | シードラウンド・第三者割当増資 |
| JCCL | 非公表 | 大日本印刷 | 出資(2026年7月31日付) |
| INTEP | 非公表 | アドバンスト・メディア | 出資 |
| シコメルフードテック | 非公表 | 日清オイリオグループ | 出資 |
| ミルンダ | 非公表 | グローバル・ブレイン運営の高輪地球益ファンド・明治安田未来共創ファンド | シードラウンド・第三者割当増資 |
| ロボットスタート | 非公表 | Brand New Retail Initiative Fund、K&Pパートナーズ、旺文社ベンチャーズ | 第三者割当増資 |

以下、大きい順ではなく、資金の入り方のまとまりごとに見ていく。
総額257.2億円の中身は、エクイティ167.2億円とデット枠90億円
フュージョンエネルギーの基盤技術を開発する京都フュージョニアリングは、シリーズDラウンドの1stクローズで総額257.2億円(与信枠・融資枠を含む)の資金を確保したと発表した。今週の最大案件である。
発表は総額の中身を自分で開示している。エクイティの調達額が167.2億円、デットファイナンスの合計が90億円(融資枠・与信枠を含む)で、足すと257.2億円になる。90億円の側には融資枠・与信枠という「枠」が含まれ、実行済みの金額は公表されていない。エクイティとして示されたのは167.2億円である。「総額」の定義は発表ごとに違うから、構成を自分で開示している発表は読みやすい。

エクイティの引受先には、新規投資家としてIMM Japan 日韓融合ファンド、SiteGround Capital、GX推進機構(脱炭素成長型経済構造移行推進機構)、日本政策投資銀行、東日本旅客鉄道(JR東日本)、Minerva Growth Partnersの6者が並んだ(発表は「ほか二者」も記載)。既存投資家としては、SMBCベンチャーキャピタル、京都キャピタルパートナーズ、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、大和企業投資、DBJキャピタル、三菱UFJ銀行の6社が名を連ねた。融資・与信枠の設定金融機関は三井住友銀行、京都銀行、三井住友信託銀行、みずほ銀行の4行(発表は「ほか一行」も記載)である。
新規投資家の筆頭に挙がったIMM Japan 日韓融合ファンドは、韓国系のIMM Investment Japanが「日本および韓国の投資家と共同で」組成したプロジェクトファンドで、同社は自らの発表でこのラウンドに「リード投資家として参画しました」と述べている。同発表によれば、ファンドには日本から南都キャピタルパートナーズ、NCBベンチャーキャピタル、イグニション・ポイント ベンチャーパートナーズが、韓国からPOSCO HoldingsやDoosan、GS ENCなどの戦略投資家とOctagon Venture Partnersなどの金融投資家が加入している。日韓の資本を1つのファンドに束ねて、日本のディープテック1社に入れるという組成である。
京都フュージョニアリングは、プラズマ加熱装置「ジャイロトロン」やトリチウム燃料サイクルなど、炉の方式を問わず必要になるフュージョンの基盤技術を手がける。発表によれば累計エクイティ調達額は329.8億円、受注契約は140億円超で、今回の資金は日本・カナダ・米国の統合実証「UNITY™プログラム」と、ジャイロトロンの量産体制の構築に充てる。短期で売上高100億円規模を目指す計画も添えられた。
21社が並んだ光量子コンピュータの70億円
OptQC(東京都豊島区、2024年9月設立)は、NTTをリードインベスターとするシリーズA2ラウンドで総額70億円の第三者割当増資を完了したと発表した。設立から2年足らず、2025年1月のシード(6.5億円)、同年10月のシリーズA1(15億円)に続く3回目の調達で、累計調達額は91.5億円、獲得済みの補助金を含めると200億円を超えたとしている。
目を引くのは出し手の数と幅だ。発表は「NTTをリード投資家に事業会社・独立系VC・公的機関計21社が参加」と、NTTを含めて21社と数えている。NTTに続き、キヤノンマーケティングジャパン、京セラ、島津製作所、三菱地所、三菱電機、ANAホールディングス、KDDIなど事業会社14社が並ぶ(CVCからの出資を含む区分で、ニッセイ・キャピタルやみずほキャピタルなど金融系の投資会社もここに入る)。独立系VCはグローバル・ブレインやデライト・ベンチャーズなど5社、公的機関は科学技術振興機構(JST)で、リードと合わせて21社になる。通信・精密機器・航空・不動産・金融と、業種の異なる大手の名前が1つのラウンドに21並ぶのは、この連載でもあまり見ない形である。
同社は東京大学・古澤研究室の光量子技術を基盤とし、常温・常圧で動作する光方式の量子コンピュータを開発する。2026年7月には第1世代機が稼働しており、今回の資金は計算性能を現行機の100倍規模に引き上げる次世代プロセッサの開発と人材採用に充てるという。NTTとは調達に先立つ8月3日に資本業務提携を締結している。
政府系の名前が、4件に登場した
今週の15件を出し手の側から見ると、政府系の投資主体の名前が4件に登場した。
GX推進機構は、京都フュージョニアリングの新規引受先に並んだのと同じ週に、PETケミカルリサイクルのJEPLAN(神奈川県川崎市、2007年設立)への第三者割当増資の引受けも発表された(金額非公表)。GX推進機構はGX推進法に基づく2024年5月設立の認可法人で、JEPLANの発表は「国内における資源の安定確保への貢献」と「脱炭素・資源循環の社会実装を推進する点」が評価されたと説明する。設立2年あまりの認可法人の名前が、同じ週に2件の増資引受けに出たことになる。
JICベンチャー・グロース・インベストメンツも2件に登場した。京都フュージョニアリングの既存投資家として追加出資に並び、採用SaaSのHERPのシリーズCでは新たな調達先の筆頭に挙がった。このほか京都フュージョニアリングには日本政策投資銀行とDBJキャピタル、OptQCにはJST、HERPには日本政策金融公庫(借入)と、政府系の資金経路はそれぞれ違う形で顔を出している。
そのHERP(東京都品川区)は、シリーズCラウンドで総額約19億円を調達したと発表した。調達方法は「第三者割当増資と金融機関からの借入」の組み合わせで、調達先はJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、DNX Ventures(既存)、日本政策金融公庫の3者。累計調達額は34億円になるとしている。採用管理システム「HERP Hire」などの導入は累計4,000社超で、2026年時点の約100名から2029年までに300名体制へ組織を3倍にする計画を掲げた。
上場企業の「1社単独の出資」が4件
今週は、上場企業(またはそのグループ)が未上場企業に出資し、発表上の出し手がその1社だけという発表が4件あった。いずれも事業上の連携を視野に入れた出資で、VCの名前が1つも出てこない。
最も開示が細かいのはTechMagic(東京都江東区、2018年2月設立)への出資だ。ホテル・飲食などの現場を支えるBPO事業のCSSホールディングス(東証スタンダード・2304)が適時開示で、TechMagicのE種優先株式を399,978,500円で引き受けることを決議したと発表した(払込期日は2026年8月31日の予定)。開示には「本出資額は、2025年9月期末における当社連結純資産の約12.9%に相当」「将来において評価損が生じる可能性があります」という記載まである(同時に、本出資は資産構成の変動にとどまり2026年9月期の連結業績への影響は軽微、とも書かれている)。TechMagicは調理ロボットの開発会社で、CSSホールディングスは2024年12月に戦略的パートナーシップを結んだ間柄だ。なお今回の増資全体の規模は開示されておらず、この約4.0億円は1社の引受分だけが見えている数字である。
残る3件は、CO₂を選択的に透過する材料を開発するJCCL(福岡県)に大日本印刷が(2026年7月31日付、両社で2028年度までの実証機開発を掲げる)、リハビリ医療DXのINTEP(東京都新宿区・慶應義塾大学病院内)にAI音声認識のアドバンスト・メディアが、飲食店の仕込み外注プラットフォームのシコメルフードテック(2019年12月設立)に日清オイリオグループが、それぞれ出資した。3件とも金額は非公表で、発表の主語は出す側の上場企業である。未上場企業の調達の一部は、本人ではなく出し手の適時開示やリリースを通じてしか見えない。この連載が発表主体を問わず拾っているのはそのためだ。
設立から間もない会社に、銀行融資と事業会社の資本が入った
エンタメ向けのネッキョウ(東京都千代田区)は、設立(2026年6月2日)から3カ月弱での調達を発表した。みずほ銀行からの融資と、代々木アニメーショングループを引受先とする第三者割当増資で、合わせて総額約2億円。ファンクラブ・EC・チケットなどのファン接点を共通IDでつなぐ「AXプラットフォーム」を掲げ、発表時点の資本金および資本準備金は8,737万円である。創業期の資金を、銀行融資と事業会社からの増資の組み合わせで確保した形だ。
高専発のプロッセルホールディングス(新潟市、2025年11月設立の持株会社)は、千葉道場ファンドをリード投資家、個人投資家1名を引受先とするシードラウンドを実施した。今回の調達額は非公表で、発表にある2.5億円はデットを含むグループ累計の資金調達額である。事業承継に課題を抱える町工場をグループ化する「ロールアップ」と、FA設計データを使ったAI開発を両輪に掲げる。
非侵襲のブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)を開発するMesotron(茨城県つくば市、2026年4月設立)には、インキュベイトファンドがプレシードで出資した(金額非公表)。装着するだけで使える脳波計と脳解読AIで「無声発話」の実用化を目指すという。がん早期発見のミルンダ(東京都港区)は、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)等の研究成果を基盤に設立された会社で、グローバル・ブレインが運営する高輪地球益ファンドと明治安田未来共創ファンドを引受先とするシードラウンドを実施した。RNA修飾解析という手法でのがん検査を掲げている。がんの早期発見は、この連載で繰り返し出てくるテーマである。
鳥取県境港市のゲームガムは、Hyperionをリード投資家、CafeGroupとインキュベイトファンドを引受先とするプレシードラウンドで総額3,000万円を2026年7月に実施したと発表した。ゲームプラットフォーム「Roblox」上で日本のIPを展開する開発会社で、唯一の事業会社として参加したCafeGroupは、出資に合わせて大規模ゲームの共同開発に向けた業務提携も結んでいる。
このほか、建設業特化のバーティカルAI「現場Hub」の現場Hub(東京都渋谷区、2022年4月設立)が、新規の事業会社1社と既存のファーストライト・キャピタル、D4Vから7,000万円を調達(累計約3.4億円)。ポッドキャスト広告のロボットスタート(東京都渋谷区、2014年12月設立)は、新規投資家としてイノー・アソシエイツがGPを務めるCVCファンドのBrand New Retail Initiative Fund、既存投資家としてK&Pパートナーズと旺文社ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資を発表した。今回の調達額は非公表で、見出しの「8億円規模」は累計調達額である。
出し手の属性で15件を並べる
発表に名前が出た出し手を属性で分けると、次のようになる(●は該当。発表に名前が出た主体のみ。役割は発表の記載に従う)。
| 調達した会社 | 独立系VC | 事業会社・CVC | 金融機関 | 政府系・公的 | 個人 |
|---|---|---|---|---|---|
| 京都フュージョニアリング | ● | ● | ● | ● | |
| OptQC | ● | ● | ● | ● | |
| HERP | ● | ● | |||
| TechMagic | ● | ||||
| ネッキョウ | ● | ● | |||
| 現場Hub | ● | ● | |||
| ゲームガム | ● | ● | |||
| JEPLAN | ● | ||||
| Mesotron | ● | ||||
| プロッセルホールディングス | ● | ● | |||
| JCCL | ● | ||||
| INTEP | ● | ||||
| シコメルフードテック | ● | ||||
| ミルンダ | ● | ● | |||
| ロボットスタート | ● | ● |
はっきり分かれている。大型2件(京都フュージョニアリング・OptQC)は4属性が揃う「全部入り」で、京都フュージョニアリングでは銀行までが、OptQCでは金融グループ系の投資会社までが同じラウンドに乗った。一方で発表上の出し手が事業会社1社だけの案件が4件(TechMagic・JCCL・INTEP・シコメルフードテック)あり、こちらはVCが1社も出てこない。事業会社(CVC含む)は15件中10件に登場し、この週の出し手の主役だった。属性は本稿の分類である。日本政策金融公庫・日本政策投資銀行・JICベンチャー・グロース・インベストメンツ・GX推進機構・JSTなど政府系の金融・投資主体は「政府系・公的」に数え、「金融機関」とは重複させていない。ファンドやVC子会社は、運営主体・親会社の属性を加味して分類した(ミルンダの明治安田未来共創ファンドは金融機関系、ネッキョウのみずほ銀行は融資の出し手として金融機関)。
調達の前に、登記は動いていたか
発表された15社のうち13社に、直近1年の商業登記の受付記録がある(2026年8月30日時点で収録できている受付記録。以下同じ)。資本金の増加が発表より先に受け付けられていたのは5社(JEPLAN・プロッセルホールディングス・HERP・INTEP・シコメルフードテック)だった。受付記録は日付と種類だけで金額や引受先は分からないため、どの受付が今回の調達に対応するかは断定できないが、HERPの資本金の増加は2026年3月17日に受け付けられており、8月25日の発表より5カ月あまり先行している。

2大案件はどちらも逆で、8月30日時点では、増資に対応する受付記録をまだ確認できない。京都フュージョニアリングの直近1年の受付は新株予約権と役員変更などで、資本金の増加はない。OptQCも新株予約権(2026年2月)と本店移転だけだ。ここから払込みや登記の状況を断定することはできないが、少なくとも受付記録の上では、発表が先に出ている。なお調達を発表した15社のうち、直近1年に設立の受付があったのはネッキョウ(2026年6月2日設立)、Mesotron(2026年4月3日設立)、プロッセルホールディングス(2025年11月5日設立)の3社である。
Compalyzeのデータで見る(金額判明の7社)
発表の内容とは別に、金額が分かった7社を同じ物差しで並べる。
| 会社 | 設立 | 被保険者数(2026年8月) | 確認できた決算公告 | 純資産 |
|---|---|---|---|---|
| 京都フュージョニアリング | 2019年10月創業 | 104人 | 2025年9月期(第7期) | 105.75億円 |
| OptQC | 2024年9月(登記) | 43人 | 2025年8月期(第1期) | 4.51億円 |
| HERP | — | 126人 | 2021年2月期(第4期) | 1,192万円 |
| TechMagic | 2018年2月 | 70人 | 2025年12月期 | ▲2.73億円 |
| ネッキョウ | 2026年6月(登記) | — | 公告なし | — |
| 現場Hub | 2022年4月 | 8人 | 2023年3月期(旧社名ARTISAN名義) | 6,396万円 |
| ゲームガム | 2024年2月(登記) | 1人 | 公告なし | — |
被保険者数は厚生年金・健康保険の加入者数で、会社の人員規模を見る一つの目安になる(一定条件の短時間労働者や役員も含まれ得る)。257.2億円を確保した京都フュージョニアリングは104人、70億円のOptQCは43人。発表上の確保額の9割超を占めた2社は、被保険者数で見て合わせて150人に満たない。
TechMagicの2025年12月期の決算公告では、純資産がマイナス2.73億円だった。CSSホールディングスの開示は、同じ2025年12月31日現在の資本金を43億9,098万円(資本準備金含むと注記)と記載している。2つの資料を並べると、大きな資本金等と純資産のマイナスが同居している姿になる。E種優先株式の引受けが払い込まれれば、その分は純資産の増加要因になる。
古い会社の姿も混ざる。HERPの確認できた最新の公告は2021年2月期(純資産1,192万円)で、それ以降の公告は収録できていない可能性がある。当時4期目・純資産1,000万円台だった会社が、5年後にシリーズCで19億円を調達した形だ。現場Hubの公告は旧社名「ARTISAN」名義の2023年3月期で、社名を変えて建設業AIに集中した後の姿は公告からはまだ見えない。
払込予定が、8月から12月へ延期された発表もあった
集計の対象外だが、対照的な発表が同じ週にあった。東証スタンダードのオルトプラスは、未上場のオカザキホールディングスに対する第三者割当増資のうち第2回分(800株)について、払込期日を2026年8月から12月へ変更すると開示した。第1回分(800株)は2026年4月27日に払込みを完了しており、今回はその続きの延期である。理由について会社は、払込原資に予定していた自社の新株予約権による調達が、株価が下限行使価額を下回って推移し「計画どおりに進捗しておりません」(開示原文)と説明している。払込完了前の案件では、期日や条件がこうして変わることがある。この連載が予定案件にその旨を付記して扱っているのは、それが理由である。
この週をどう読むか
15件のうち金額が公表されたのは7件で、その9割超がフュージョンと光量子コンピュータという、実用化がこれからのディープテック2件に集まった。どちらも単独のVCではなく、VC・事業会社・金融系・政府系がひとつのラウンドに乗る構成で、京都フュージョニアリングは日韓の資本を束ねたファンドが、OptQCは通信から航空までの事業会社14社が引受先に並んだ。
その裏で、事業会社1社だけの静かな戦略出資が4件、設立3カ月弱の会社への銀行融資と事業会社出資が1件。出し手の顔ぶれは、リターンを狙う投資家のリストというより、自社の事業とつなぐ相手を選ぶ名簿に近い。GX推進機構が同じ週に2件へ、JICベンチャー・グロース・インベストメンツも2件へ名前を出しており、この週は政府系・公的主体が大型ラウンドの投資家に入った。合計額の大きさより、そのお金が誰の貸借対照表に、どんな条件で入るのかを見る週だった。
この連載が扱う範囲
この連載は、未上場企業が新たに外部から資金を受け入れたことが確認できる発表を対象にしている。週の区切りは土曜0時00分から翌土曜0時00分まで(日本時間)である。
次のものは資金調達として扱っていない。
- 上場企業自身の調達
- 資産の保有などを目的とする特別目的会社への出資(自ら事業を営む合弁会社の設立は含める)
- 既存株式の移動だけの取引
- 募集の開始や目標額の告知
- 出資・引受・払込の記載がない資本提携の発表(今週はスイッチメディアと伊藤忠商事の資本業務提携がこれにあたる。発表に出資・引受・払込の記載がなかった)
調達した会社が日本の法人番号と結び付かない場合は、判断を保留して集計に含めていない。
金額は、その発表で今回調達したと明記された額のみを合計している。京都フュージョニアリングの257.2億円は、発表が「与信枠・融資枠を含む」と定義する総額をそのまま用いた(エクイティとして公表された額だけなら167.2億円)。TechMagicの約4.0億円は払込期日を2026年8月31日(予定)とする引受決議で、金額まで確定した予定として合計に含めた(これを除くと合計は約349.2億円)。またTechMagicはCSSホールディングス1社の引受分のみが開示されており、増資全体の額ではない。累計調達額は含めない(ロボットスタートの8億円、現場Hubの3.4億円、プロッセルホールディングスの2.5億円、OptQCの累計91.5億円はいずれも合計外。OptQCは今回分の70億円のみ算入)。会社概要欄に記載された資本金の額は、調達額として扱わない。公表額の多くが「約」付きの概算のため、合計も概算である。
なお今週の集計では、2件を編集判断で除いている。ゲームガムの調達を出資側のCafeGroupが報じた発表(同一の払い込み)と、上記オルトプラスの払込延期の開示(今週の資金流入がない)である。