先週の資金調達(2026年8月29日〜9月4日)— 介護施設・工場・防衛装備、出資と事業連携が結び付く
2026年8月29日〜9月4日に確認できた未上場企業の資金調達は23件、金額判明13件で公表額計約162.1億円。介護施設での実証、工場への技術導入、防衛装備の実用化と、出資と事業連携が結び付いた発表が並んだ。

先週(2026年8月29日〜9月4日)に新たに確認できた、未上場企業の資金調達に関する発表は23件・23社。金額を確認できたのは13件で、各社が公表した額を単純に足すと約162.1億円になる(Tellus Globalの「9億円超」は下限を用いたので、実際の合計はこれより大きい)。そのうち約87.9億円(54.2%)を、AI面接などを手がけるPeopleX(54.5億円)と、CO₂排出量可視化のe-dash(33.4億円)の2件が占めた。ただしPeopleXの54.5億円はエクイティとデットの合計で、内訳は公表されていない(後述)。
金額判明13件の中央値は4.7億円。ただしPeopleX・AUDER・パワーレーザーの公表額はエクイティとデットの合計で、内訳は公表されていない。5件はラウンドの総額としての表記である(計算方法は末尾)。
| 調達した会社 | 公表額 | 発表上の引受先・出資者 | 発表に書かれた形 |
|---|---|---|---|
| PeopleX | 54.5億円 | エン・Angel Bridge・オープンアップグループ・WiL・One Capital | シリーズA(エクイティとデットの合計) |
| e-dash | 33億4,200万円 | 三井物産・JA三井ストラテジックパートナーズ・ウエストホールディングス・信金キャピタル・中電環境テクノス | 第三者割当増資 |
| メトロウェザー | 総額15億円 | インキュベイトファンド・三菱重工業 | シリーズB 1stクローズ |
| SiccaNova Therapeutics | 総額12.5億円 | 東北大学ベンチャーパートナーズ・JICベンチャー・グロース・インベストメンツ・MPower Partners(WPower Fund I)・Red Capital・七十七キャピタル・常陽キャピタルパートナーズ | シリーズA |
| パワーレーザー | 総額約12億円 | Incubate Fund・Frontier Innovations・DBJキャピタル・SMBCベンチャーキャピタルほか計13者 | 第三者割当増資等(一部融資) |
| Tellus Global | 総額9億円超 | アント・イノベーションズ1号・三菱UFJキャピタル10号・DEEPCORE3号・DG Daiwa Ventures・Fusic | 第三者割当増資など(MBOに伴う) |
| KGモーターズ | 総額4.7億円 | ちゅうぎんキャピタルパートナーズ・NTTドコモ・ベンチャーズ・ミツバ・ほくほくキャピタル・AKIBAホールディングス・HOXIN・INNOVATION V Capital・シン・インフラ ファンド by TOHO GAS・個人投資家 | 第三者割当増資 |
| Beff | 総額4.5億円 | ジェネシア・ベンチャーズ(リード)・三菱UFJキャピタル | シリーズA 1stクローズ |
| AUDER | 4.5億円 | ALL STAR SAAS FUND(リード)・農林中金キャピタル | シリーズA ファーストクローズ(エクイティとデットの合計) |
| 10pct. | 総額約4億円 | グローバル・ブレイン(リード)・GMO VenturePartners・デライト・ベンチャーズ | シリーズA |
| ドーナッツロボティクス | 3億円 | チャーム・ケア・コーポレーション | 普通株式の引受(資本業務提携) |
| Prodrone | 3億円(機構の支援決定額) | 脱炭素化支援機構・パーソルベンチャーパートナーズ | 第三者割当増資(機構は支援決定。パーソル分は非公表) |
| メタジェンセラピューティクス | 199,962,954円 | 北海道大学Green Frontier Fund1号・東海研究開発1号 | シリーズB エクステンション 1stクローズ |
| 君のとなりの | 数億円(非公開) | アニマルスピリッツ(リード)・ルート・みずほ銀行(融資) | シリーズA(第三者割当増資と融資) |
| Sotas | 非公表 | Rice Capital | 第三者割当増資 |
| アドバンスコンポジット | 非公表 | TEL Venture Capital(東京エレクトロンのCVC)ほか | シリーズB |
| ハッピースマイル | 非公表 | 埼玉県渋沢MIXイノベーション創出支援ファンド | 第三者割当増資(払込完了日8月31日) |
| Wunderbar(旧Skettt) | 非公表 | 静岡銀行・日本政策金融公庫 | ベンチャーデット等 |
| ロジストラボ | 非公表 | Orbital Lasers | 出資(資本業務提携) |
| アスター | 非公表 | 燈 | 第三者割当増資の引受(資本業務提携) |
| イムノセンス | 非公表 | パイ・アール | 出資(資本提携、8月25日付) |
| アディクシィ | 非公表 | 三菱UFJキャピタル(リード)・ジャフコ グループ・積水ハウス・きらぼしキャピタルほか、金融機関からの借入 | 第三者割当増資と借入 |
| BEAT PARK OSAKA | 非公表 | ロッテホールディングス・野村不動産(共同出資) | 会社設立 |

公表額13件を、発表の書き方で分けると次のようになる。
| 公表額の意味 | 件数 | 公表額の合計 | 会社 |
|---|---|---|---|
| 今回の調達額として示された額 | 8件 | 約77.6億円 | e-dash・メトロウェザー・パワーレーザー・KGモーターズ・Beff・ドーナッツロボティクス・Prodrone・メタジェンセラピューティクス |
| ラウンドの総額として示された額 | 5件 | 約84.5億円 | PeopleX・SiccaNova Therapeutics・Tellus Global・AUDER・10pct. |
ラウンドの総額には先行するクローズが含まれるかどうかが発表から読めないため、この5件は「今回入った額」とは限らない。Tellus Globalの「9億円超」は下限だけの公表で、合計にはその下限を用いた。残る10件は金額を合計に入れていない(君のとなりのは「数億円」とだけ公表している)。
以下、大きい順ではなく、資金の入り方のまとまりごとに見ていく。
54.5億円と33.4億円 — 大型2件に、事業会社が引受先として並んだ
創業2年のPeopleX(東京都新宿区、発表は2024年4月創業。登記上の設立は2023年9月)は、シリーズAラウンドでエクイティとデットファイナンスにより54.5億円を調達したと発表した。この週の最大案件である。累計調達額は78.2億円になるとしている。第三者割当増資の引受先として、発表はエン・Angel Bridge・オープンアップグループ・WiL・One Capitalの5者を挙げる(社名は発表の表記)。エンと、人材サービスのオープンアップグループという事業会社2社と、VC3社の組み合わせだ。デットの貸し手と、エクイティとデットの内訳は公表されていない。
発表は事業の数字も多い。AI面接・AIロープレ・AI面談などのAIプロダクトのARR(年間経常収益。継続的に入る売上を年額に直した指標)が提供開始から15カ月で10億円に達し、直近1年のARR成長率は17倍超と書かれている。調達時点の月次売上高は2億円超としており、こちらは継続分以外も含む数字である。2031年度に売上高1,000億円を目指す中期経営計画と、IPOの実現も掲げた。人事領域に特化したLLMと「MotherAI OS」の開発も同日に発表している。
CO₂排出量の可視化クラウド「e-dash」を運営するe-dash(東京都港区、2022年2月設立)は、総額33億4,200万円の第三者割当増資を実施した。引受先は三井物産(追加増資)・JA三井ストラテジックパートナーズ・ウエストホールディングス・信金キャピタル・中電環境テクノスの5社。本稿で独立系VCに分類した引受先はなく、商社・再生可能エネルギー・リース系・信用金庫系のVC・電力系の5社が並ぶ。発表は5社を「株主パートナー」と呼び、サプライチェーン全体の排出量削減や地域金融機関・自治体とのエコシステム構築を、出資者とともに進めると説明する。
e-dashの確認できた最新の決算公告(2026年3月期・第5期、2026年8月掲載)には、売上高5.2億円・当期純損失(その1年間の最終的な損失)11.1億円・純資産29.2億円と記載されている。今回の増資額は、その純資産をやや上回る。発表の会社概要欄には資本金34億3,000万円とあり、2026年3月期の公告に記載された26.9億円から増えている。増資の全額が資本金に入ったわけではないため、この差だけで払込額は読めないが、規模感の目安にはなる。
出資と事業連携が、同じ発表のなかで結び付いている
この週の23件を出し手の側から見ると、事業会社(事業会社が投資のために設けた子会社やファンド、いわゆるCVCを含む)と独立系VCは、ほぼ並んでいる。後述の属性表に載せた22件(新会社設立のBEAT PARK OSAKAを除く)のうち、事業会社・CVCの名前があるのが15件、独立系VCが14件である。事業会社・CVCが1件多いだけで、件数はほぼ並ぶ。
目を引くのは件数ではなく、出資と事業連携が同じ発表のなかで結び付いている組み合わせが並んだことだ。出資者の施設での実証、出資先の工場への技術導入、防衛装備品の実用化に向けた連携と、形はそれぞれ違う。

介護施設。ヒューマノイド開発のドーナッツロボティクス(東京都港区、2016年設立)は、介護付有料老人ホームを運営するチャーム・ケア・コーポレーション(東証プライム・6062)と資本業務提携を結んだ。チャーム・ケアが普通株式を3億円で引き受ける。2026年7月からチャーム・ケアの施設でヒューマノイド「cinnamon」を実験導入しており、将来はナースコール対応を目指すという。出資に先立って、出資者の施設で実証が始まっていた形である。
工場。秋田県横手市で次世代モーターを製造するアスター(2010年創業)には、東京大学発のAIスタートアップである燈が第三者割当増資を引き受け、経営参画すると発表した。燈の発表によれば、アスターの製造拠点に燈のシミュレーション基盤を導入し、工場の稼働データからフィジカルAIを構築するという。同社は2026年1月に三菱電機から50億円を調達しており、今回は出す側に回った。金額は非公表である。
防衛装備。三菱重工業がメトロウェザーの引受先に入った件は後述する。発表は、防衛装備品としての実用化に向けた連携だと説明している。
このほか、大阪大学発の免疫測定技術を持つイムノセンスにはアルコールチェック機器のパイ・アールが、京都大学発で大型精密鏡を加工するロジストラボには宇宙用レーザーのOrbital Lasersが出資した。どちらも出資者の製品や事業と、受け手の技術が地続きになっている。金額はいずれも非公表である。
出し手の数が多い調達も2件あった。 1人乗り小型EV「mibot」のKGモーターズ(広島県東広島市)は、第三者割当増資で総額4.7億円を調達した。引受先はちゅうぎんキャピタルパートナーズ、NTTドコモ・ベンチャーズ、ミツバ、ほくほくキャピタル、AKIBAホールディングス、HOXIN、INNOVATION V Capital、シン・インフラ ファンド by TOHO GAS、個人投資家の9者。中国銀行系と北陸系の地銀キャピタル、自動車部品のミツバ、都市ガス系ファンドが同じラウンドに並ぶ。エクイティによる累計調達額は22.35億円としている。資金は生産能力の拡大に向けた金型投資などに充てるという。
衛星データPaaSのTellus Global(2026年2月設立)は、経営陣によるMBOでさくらインターネットの子会社から独立し、第三者割当増資などで総額9億円超を調達したと発表した。引受先はアント・イノベーションズ1号、三菱UFJキャピタル10号、DEEPCORE3号、DG Daiwa Ventures、Fusicの5者である。
産業用・Dual-UseドローンのProdrone(愛知県名古屋市)には、8月30日に脱炭素化支援機構が3億円の支援決定を公表し、9月2日にパーソルホールディングスがパーソルベンチャーパートナーズを通じた出資を発表した。機構の発表は「Prodroneの資金調達に対して3億円を支援決定」とするもので、払い込みの完了までは書かれていない。パーソル分の金額は非公表である。両者が同じラウンドかどうかも、発表からは分からない。
防衛・宇宙 — 三菱重工が入ったライダーと、13者が並んだレーザー
京都大学発のメトロウェザー(京都府宇治市、2015年創業)は、シリーズBラウンドの1stクローズで総額15億円を調達した。引受先はインキュベイトファンドと三菱重工業の2者である。1stクローズは、1つのラウンドを複数回に分けて締める場合の1回目を指す。風況を可視化するドップラー・ライダーの技術を応用した「物体検知ライダー」で、不審ドローンを検知する防衛装備品としての実用化を進める段階にあるという。発表は「大手総合重工業メーカーと国内のディフェンステック・スタートアップの先駆的な連携」と位置づけ、シリーズB全体で総額25億円の調達を目指すとしている。インキュベイトファンドの出資主体は、2025年に東京都とともに設立したグロースステージ向けの「IF Growth 1号ファンド」である。累計調達額は35.6億円になるとした。
大阪大学レーザー科学研究所発のパワーレーザー(大阪府吹田市、2024年5月設立)は、第三者割当増資等(一部融資)により総額約12億円の調達を完了し、累計調達額は約16億円になったと発表した。出資側のFrontier Innovationsの発表が参照する同社リリースの題名は「11億円」となっているが、本稿は同社本文の約12億円を採る。資金の出し手として挙がった名前は13者に及び、うち一部は融資である。Incubate Fund・Frontier Innovations・Angel Bridge・DBJキャピタル・森ビルイノベーションファンド・SMBCベンチャーキャピタル・みずほ成長支援・日本政策金融公庫などである。宇宙デブリを対象とした宇宙状況把握と、レーザーフュージョン(レーザー核融合)用の光源開発に充てるという。同じ週にフォースタートアップスキャピタルとFrontier Innovationsが、それぞれ出資側からこの調達を発表している(本稿では1件に統合した)。
シリーズAが6件 — 電池、検品、ホテル、創薬、占い
ラウンド名で見ると、この週はシリーズAとして第三者割当増資を発表した会社が6社あった。PeopleXのほか、以下の5社である。
電池開発・製造のデジタル化基盤を手がけるBeff(東京都千代田区、2023年7月設立)は、シリーズA 1stクローズで総額4.5億円を調達した(累計6.5億円)。リード投資家はジェネシア・ベンチャーズ、フォロー投資家は三菱UFJキャピタルである。ジェネシアの発表によれば、シードに続く追加出資だという。食品流通向けのAI検品プラットフォームのAUDER(東京都港区)は、シリーズAファーストクローズで、エクイティとデットの合計4.5億円を調達した(累計5.7億円)。リードはALL STAR SAAS FUND、もう1社の引受先は農林中金キャピタルである。AIでホテルを運営する10pct.は、グローバル・ブレインをリードに、GMO VenturePartnersと既存のデライト・ベンチャーズを引受先として総額約4億円を調達した。
創薬では、口腔乾燥症の治療薬候補「XF8302」を開発するSiccaNova Therapeutics(茨城県つくば市、2022年設立)が、総額12.5億円のシリーズAを完了した。引受先は6者で、東北大学ベンチャーパートナーズ、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、MPower Partners(WPower Fund I)、Red Capital、七十七キャピタル、常陽キャピタルパートナーズである。大学系・政府系・独立系・地方銀行系が1つのラウンドに並ぶ構成である。AI占いアプリ「うらっち」の君のとなりの(東京都渋谷区、2024年11月設立)は、「数億円」を調達したと発表した(具体額は非公開)。アニマルスピリッツをリード投資家、株式会社ルートを引受先とする第三者割当増資と、みずほ銀行からの融資の組み合わせである。発表に添えられた代表取締役CEOのコメントには、5月末の会食でアニマルスピリッツ側から「うちが全額出す前提で、次のラウンドやってしまいましょう」と言われた経緯が書かれている。出典は2026年9月2日付の同社プレスリリースである。リードが先に決まり、3カ月でクローズした形だ。
直近の決算公告で純資産がマイナスだった3社も、増資や融資を発表した
発表の内容とは別に、Compalyzeが収録している決算公告を23社について確認した。確認できた最新の決算公告で純資産がマイナス(債務超過)だった会社が3社あり、いずれもこの週に増資の引受けや融資を発表している。債務超過は、その決算公告の対象となった決算期末に負債が資産を上回っていたという事実であって、現在の財務状態を示すものではなく、それだけで会社の評価は決まらない。
| 会社 | 確認できた決算公告 | 純資産(各決算期末) | 当期純損益 | この週の発表 |
|---|---|---|---|---|
| アスター | 2025年9月期(第17期) | ▲8.45億円 | ▲4.87億円 | 燈が第三者割当増資を引受(金額非公表) |
| Wunderbar(旧Skettt) | 2025年2月期(第6期) | ▲2.48億円 | ▲1.49億円 | 静岡銀行・日本政策金融公庫からベンチャーデット等(金額非公表) |
| アドバンスコンポジット | 2024年3月期(第9期) | ▲1.53億円 | ▲1.79億円 | TEL Venture Capitalなどを引受先にシリーズB(金額非公表) |

アスターの公告は、純資産がマイナス8.45億円、当期純損失4.87億円と記載されている。厚生年金・健康保険の被保険者数は112人(2026年3月時点)で、この週の23社のうち被保険者数を確認できた会社のなかでは、アディクシィ、e-dashに次ぐ規模だ。燈の発表は、アスターの次世代モーターに「国内外から非常に強い需要が寄せられており」量産・供給体制の構築が急務だったと説明する。燈の発表によれば、第三者割当増資の引受けにより量産設備投資と人材採用に必要な資金を供給するという。
IPマーケティングのWunderbar(9月1日付で「Skettt」から商号変更)は、静岡銀行と日本政策金融公庫からベンチャーデット(スタートアップ向けの融資)等で資金を調達したと発表した。今回の調達額は非公表で、見出しの「累計10億円突破」は創業来の累計である。確認できた最新の公告は2025年2月期で純資産マイナス2.48億円。その後の2025年6月にはシリーズAで総額約5億円を調達しているため、直近の姿は公告からは分からない。金属基複合素材のアドバンスコンポジット(静岡県富士市、2015年設立)は、8月10日に環境エネルギー投資を引受先とするシリーズBを発表したばかりだ。今回も同じくシリーズBとして、TEL Venture Capitalなどを引受先に発表した。8月10日分と同じ払い込みかどうかは発表に書かれていない。公告は2024年3月期で純資産マイナス1.53億円だが、こちらも直近1年に資本金の増加の受付記録が2回あり(後述)、公告時点から状況は動いている。
出し手の属性で22件を並べる
発表に名前が出た出し手を属性で分けると、次のようになる(●は該当。発表に名称または属性が示された出し手のみ。役割は発表の記載に従う。新会社設立のBEAT PARK OSAKAは表から外した)。
| 調達した会社(形) | 独立系VC | 事業会社・CVC | 金融機関 | 大学系 | 政府系・公的 | 個人 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| PeopleX(シリーズA(増資+デット)) | ● | ● | ||||
| e-dash(第三者割当増資) | ● | ● | ||||
| メトロウェザー(シリーズB 1st) | ● | ● | ● | |||
| SiccaNova Therapeutics(シリーズA) | ● | ● | ● | ● | ||
| パワーレーザー(第三者割当増資等(一部融資)) | ● | ● | ● | ● | ||
| Beff(シリーズA 1st) | ● | ● | ||||
| AUDER(シリーズA 1st) | ● | ● | ||||
| 10pct.(シリーズA) | ● | ● | ||||
| ドーナッツロボティクス(普通株式の引受(資本業務提携)) | ● | |||||
| メタジェンセラピューティクス(シリーズB エクステンション 1st) | ● | ● | ||||
| 君のとなりの(シリーズA(増資+融資)) | ● | ● | ● | |||
| Sotas(第三者割当増資) | ● | |||||
| アドバンスコンポジット(シリーズB) | ● | |||||
| ハッピースマイル(第三者割当増資) | ● | ● | ● | |||
| Wunderbar(旧Skettt)(ベンチャーデット等) | ● | ● | ||||
| KGモーターズ(第三者割当増資) | ● | ● | ● | ● | ||
| ロジストラボ(出資(資本業務提携)) | ● | |||||
| アスター(第三者割当増資の引受(資本業務提携)) | ● | |||||
| Tellus Global(第三者割当増資(MBOに伴う)) | ● | ● | ● | |||
| イムノセンス(出資(資本提携)) | ● | |||||
| Prodrone(出資(機構は支援決定)) | ● | ● | ||||
| アディクシィ(第三者割当増資+借入) | ● | ● | ● | ● |
事業会社・CVCが15件、独立系VCが14件で、件数はほぼ並ぶ。発表で名前が出た出し手が事業会社・CVCだけの案件は5件、独立系VCだけの案件はSotasの1件だった(いずれも公表された顔ぶれに限った数え方である)。金融機関は11件。金融機関からの融資・借入(君のとなりの・Wunderbar・アディクシィ)と、金融グループ系の投資会社(三菱UFJキャピタル・信金キャピタル・農林中金キャピタル・七十七キャピタル・ちゅうぎんキャピタルパートナーズ・ほくほくキャピタルなど)の両方を含む。政府系・公的は6件で、脱炭素化支援機構がこの週から加わった。大学系はSiccaNovaとメタジェンセラピューティクスの2件だった。属性は本稿の分類である。日本政策金融公庫・DBJキャピタル・JICベンチャー・グロース・インベストメンツは「政府系・公的」に数え、「金融機関」とは重複させていない。ファンドやVC子会社は運営主体・親会社の属性を加味して分類した(JA三井ストラテジックパートナーズはリース系として金融機関と事業会社の両方、DG Daiwa Venturesは事業会社系と証券グループ系の両方に数えた)。発表が自治体や公庫と「ともに設立した」と書くファンド(ハッピースマイルの埼玉県渋沢MIXファンド、メトロウェザーのIF Growth 1号ファンド)は、その設立参加者の属性も数えた。事業会社の株式会社ルートとRice Capitalは、発表の記載に従いそれぞれ事業会社・CVC、独立系VCに置いた。
調達の前に、登記は動いていたか
発表された23社のうち20社に、直近1年の商業登記の受付記録がある(2026年9月4日時点で収録できている受付記録。以下同じ)。資本金の増加が発表より先に受け付けられていたのは10社だった。Sotas・ドーナッツロボティクス・アドバンスコンポジット・e-dash・Beff・KGモーターズ・Prodrone・AUDER・SiccaNova Therapeutics・メタジェンセラピューティクスである。ただし直近1年のあいだに別の増資があっただけでもこの条件には当てはまるので、今回の調達を事前に捉えたものとは限らない。受付記録は日付と種類だけで、金額や引受先は分からない。どの受付が今回の調達に対応するかは断定できないが、e-dashの資本金の増加は2026年5月8日に、Beffは7月7日に、AUDERは7月8日に受け付けられている。いずれも8月末〜9月初めの発表に先行する。

最大案件のPeopleXは逆で、直近1年の受付は2026年7月16日の新株予約権(あらかじめ決めた価格で株式を受け取れる権利)だけで、9月4日時点では資本金の増加に対応する受付記録をまだ確認できない。ここから払込みや登記の状況を断定することはできないが、少なくとも受付記録の上では、発表より先に登記が動いた会社が半数近くある。なお23社のうち、直近1年に設立の受付があったのはTellus Global(2026年2月24日設立)の1社である。合弁会社のBEAT PARK OSAKAは発表では2026年8月3日の設立だが、受付記録はまだ収録されていない。
Compalyzeのデータで見る(金額判明の13社)
金額が分かった13社を、同じ物差しで並べる。
| 会社 | 公表額 | 設立(登記) | 被保険者数(2026年3月) | 直近の決算公告 | 純資産 |
|---|---|---|---|---|---|
| PeopleX | 54.5億円 | 2023年9月 | 87人 | 2024年3月期 | 0.99億円 |
| e-dash | 33.4億円 | 2022年2月 | 181人 | 2026年3月期 | 29.20億円 |
| メトロウェザー | 15.0億円 | 2015年5月 | 36人 | — | — |
| SiccaNova Therapeutics | 12.5億円 | 2022年3月 | 2人 | — | — |
| パワーレーザー | 約12億円 | 2024年5月 | 16人 | 2025年3月期 | 2.52億円 |
| Tellus Global | 9億円超 | 2026年2月 | — | — | — |
| KGモーターズ | 4.7億円 | 2022年8月 | 33人 | 2025年6月期 | 7.10億円 |
| Beff | 4.5億円 | 2023年7月 | 8人 | 2024年12月期 | 1.46億円 |
| AUDER | 4.5億円 | 2021年5月 | 13人 | — | — |
| 10pct. | 約4億円 | 2023年8月 | 7人 | — | — |
| ドーナッツロボティクス | 3.0億円 | 2016年1月 | 7人 | 2025年12月期 | 3.01億円 |
| Prodrone | 3.0億円 | 2015年1月 | 86人 | 2022年12月期 | 1.01億円 |
| メタジェンセラピューティクス | 約2.0億円 | 2020年1月 | 46人 | 2025年3月期 | 10.37億円 |
決算公告の「—」は、Compalyzeが公告を収録できていないことを示す(公告が存在しないとは限らない)。被保険者数は厚生年金・健康保険の加入者数で、会社の人員規模を見る一つの目安になる(一定条件の短時間労働者や役員も含まれ得る)。54.5億円のPeopleXは87人、33.4億円のe-dashは181人。公表額の上位2社を合わせても、被保険者数は300人に満たない。一方、金額非公表のアディクシィは419人で、被保険者数を確認できた範囲ではこの週の23社で最も人員規模が大きい。

金額判明13社のうち公告を確認できた8社では、5社の公表額が公告時点の純資産を上回る。PeopleXは純資産0.99億円(2024年3月期・第1期)に対して54.5億円、パワーレーザーは2.52億円に対して約12億円である。Prodroneの3億円は機構の支援決定額との比較になる。いずれも決算期の異なる過去の値との比較である。
ドーナッツロボティクスの2025年12月期の公告は当期純損失2.99億円で、今回のチャーム・ケアの3億円は直近公告の損失と同程度の規模にあたる。発表が目的に掲げるのは、介護現場でのヒューマノイド実装である。
資金が入る前の段階の発表が、同じ週に並んだ
資金が会社に入る「前」の段階の発表が、この週は複数あった。いずれも集計の対象外である。
- 払込期日の延期: 東証スタンダードのイクヨは、完全子会社イクヨオートモーティブが実施する第三者割当増資(引受先はNIHA)について、払込期日を2026年8月31日から12月31日へ変更すると開示した。理由は、増資の開示後にイクヨがEVモーターズ・ジャパンの事業譲受を決議・公表したことで「出資に関する当初の前提条件から状況が変わった」ためと説明している。
- 会社更生のスポンサー: マツオインターナショナルは大阪市の婦人服会社で、会社更生手続中にある(1985年設立、開示によれば人員630名)。東証スタンダードのシステムソフトは、同社と松尾産業について、ジェイモードエンタープライズとともにスポンサー契約を締結した。開示によれば、更生計画の認可後に発行済株式の全部を消却し、新株200株(10百万円)をシステムソフトが引き受ける予定という。同じ開示に記載されたマツオインターナショナルの2025年12月期の純資産はマイナス26.6億円である。
- 募集の開始: 地域共創事業のCOMMON(京都市)は、資金調達と資本業務提携に向けたパートナー募集の開始を発表した。音声合成キャラクターの3Dライブを手がけるアイ・ペアーズは、目標金額1,500万円のクラウドファンディングを9月1日に開始した。
- 融資枠の設定: 不動産の大和財託(2013年設立)は、みずほ銀行と契約金額20億円の特別当座貸越契約を締結した。極度額の範囲で必要なときに借り入れる契約で、実行済みの借入額は発表にない。借りられる上限を決めた段階なので、件数にも金額にも入れていない。
いずれも、発表の時点では会社への払い込みや借入の実行を確認できない。この連載が「実際に外部資金を受け入れたことが確認できる発表」に対象を絞っているのは、こうした発表を同じ列に並べると、件数と金額の意味が変わってしまうからである。
この週をどう読むか
件数で見ると、事業会社・CVCと独立系VCはほぼ並ぶ。だからこの週を「事業会社の週」とは言えない。目を引いたのは、出資と事業連携が結び付いた案件が複数あったことである。介護施設での実証、モーターの量産、ライダーの実用化と、資金の使い道が出資者の事業と重なっている。調達額だけでなく、出資者が実証・製造・販路のどこに関わるのかを見ると、調達後に進めようとしていることが具体的になる。
直近の決算公告で純資産がマイナスだった3社の発表は、別の読み方を要求する。公告が示すのは、それぞれ異なる過去の決算期末の姿である。古い公告だけでは、調達を発表した時点の財務状態は判断できない。公告の後に出た調達発表や登記の受付も、時系列で合わせて読む必要がある。
この連載が扱う範囲
この連載は、未上場企業が外部から資金を受け入れることを公表した発表を対象にしている。払い込みまで確認できたものに限らず、引受先と額が示された引受の合意や支援決定、自ら事業を営む合弁会社の設立も、その状態を注記したうえで件数に含める。したがって約162.1億円は公表額の合計であって、この週に入金された額ではない。週の区切りは土曜0時00分から翌土曜0時00分まで(日本時間)で、発表日で区切っている。出資や払い込みの実行日がその前であっても、発表がこの週にあれば含める(イムノセンスへの出資は8月25日付である)。
次のものは資金調達として扱っていない。
- 上場企業自身の調達と、海外法人の調達(この週は共和レザーのインド子会社、阪和興業の米国子会社、髙松建設のフィリピン合弁会社がこれにあたる)
- VCファンドへの出資(兼松のNext Bharat Venture Fund-2、DTSのジャフコSV8ファンドへの出資)
- 既存株式の移動だけの取引(PostPrimeによるキューブの株式取得。取得後の貸付は予定の段階)
- 募集の開始や目標額の告知、払込期日の延期、会社更生手続中のスポンサー契約
- 補助金や支援事業への採択(4件)
- 出資側が前週までに公表していた案件(エアロネクストへの昭栄薬品の出資は、出資側が8月28日に開示しており、一次発表は前週にあたる。1件)
- 上場企業の子会社に対する払い込み前の出資(合弁出資の決議や、出資実行日を先に置く増資の引受け。2件)
- 事業承継を目的とする投資会社による資本参加で、新株の発行や会社への資金流入が発表に書かれていないもの(1件)
- 融資枠(当座貸越の極度額)の設定で、実行済みの借入額が発表にないもの(1件)
- 出資・引受・払込の記載がない資本提携の発表(Contents XとKIRINZの資本業務提携)
調達した会社が日本の法人番号と結び付かない場合は、判断を保留して集計に含めていない(津梁ファンドが出資したAtierra、9月3日設立予定のCoral)。自ら事業を営む合弁会社の設立(BEAT PARK OSAKA)は件数に含めたが、出し手の属性表からは外した。
金額は、その発表で今回の調達に係るものとして示された額のみを扱い、会社側に入る額として公表されたものを合計する。引受の合意額と支援決定額を含む。累計調達額・目標額・融資枠の極度額は合計に入れていない(Wunderbarの累計10億円、アディクシィの累計約14億円、メタジェンセラピューティクスの累計68.4億円はいずれも合計外)。金額判明13件のうち、PeopleX・SiccaNova・Tellus Global・AUDER・10pct.の5件は発表がラウンドの総額として示した額を、そのまま公表額として用いた(先行するクローズを含むかどうかは発表からは分からない)。いずれも払い込みの完了を確認したものではない。Tellus Globalは「9億円超」と下限だけの公表で、合計にはその下限を用いた。ドーナッツロボティクスの3億円は、発表に払込日の記載がない引受の合意額、Prodroneの3億円は脱炭素化支援機構の支援決定額である。PeopleX・AUDER・パワーレーザーの公表額はエクイティとデットが混ざっており、内訳は公表されていない。払込期日が延期されたものや、更生計画の認可を待つものは含めていない。会社概要欄に記載された資本金の額は、調達額として扱わない。公表額の多くが「約」付きの概算のため、合計も概算である。
なおこの週の集計では、同一の払い込みを調達側と出資側の双方が発表したもの(Beff・メタジェンセラピューティクス・パワーレーザー・アディクシィ・KGモーターズ・Tellus Global・AUDER)は1件に統合した。金額と引受先は、調達した会社自身の発表を優先して採っている。Prodroneは、同じ週に出た同社に関する2つの発表を会社単位で1件として数えた。同一のラウンドかどうかは発表から分からないため、金額には脱炭素化支援機構の支援決定額3億円のみを採り、パーソル分は加えていない。